あのCMが嫌いな理由 小倉千加子「醤油と薔薇の日々」
2014年 01月 21日
若妻の安田成美が帰宅した夫に
このCMについての姫野カオルコの嫌悪感、
男の俺には分かりにくい(少しは分かる)分析だが、このCMのことを読んで連想したのは最近ときどき見る「金麦」というビールのCMのこと。
このCMは俺も大嫌い、日曜日の夕方、何とかいう女性歌手?がTBSラジオで積水ハウスのCMソングと自分の歌を歌ったりしゃべくっているのと”大嫌い双璧のCM”なのだ。
どっちもベタ~と心の一番いやらしいところに触ってくるような感じがある。
1993年から2008年までのエッセイを集めた本書の冒頭が上記の「醤油と薔薇の日々」だ。
小倉はあとがきで、
さすがに俺が「金麦]CMを生理的感情的に嫌うのとはちょっと違っている。
消費社会への猛進が人々がちゃんと生きていく土台を壊してしまったということか。
こういう見方があちこちに出てくる。
(酒屋がいつも飲んでいる酒が品切れだというので、何かおススメを、と言ったら届けてくれた。なんと秋田の友人が連れて行ってくれた「福乃友」のもの。燗杜氏とはお燗蕃のこと、それほど燗の具合が大事だという。当たり、うまし)
とくに妻に対する独りよがりの自己満足については亡き妻に謝らなくてはならない(手遅れだが)。
そんな身勝手な夫なのに文句も言わずついてきてくれたことには感謝の言葉もない(手遅れだが)。
ピリッと捻りの利いた文章、ときに詩的な文章も捨てがたい。
いそっぷ社
薔薇っていう字、書ける?醤油って、書ける?丸大豆醤油のCM、それに続く三菱電機の「たのしくニョーボする」シリーズCMがあったという。
このCMについての姫野カオルコの嫌悪感、
天性の媚に対する嫌悪感、いや媚びないでいようと一分たりとも発想しないあつかましさに対する嫌悪感『ダ・カーポ』に載った記事のことを紹介して、小倉千加子は、
(安田成美が姫野の逆鱗に触れたのは)、女たちが居直っている「媚びるしか武器がないなら、女は媚びてでも何でも男を利用するしかない時代」という認識をおちょくられたと感じたからだろう。それは、媚びることで手に入れた結婚生活の中にあって、安田成美が「結婚してもまだ媚びようとしている妻」を見せたからだ。と分析している。
男の俺には分かりにくい(少しは分かる)分析だが、このCMのことを読んで連想したのは最近ときどき見る「金麦」というビールのCMのこと。
このCMは俺も大嫌い、日曜日の夕方、何とかいう女性歌手?がTBSラジオで積水ハウスのCMソングと自分の歌を歌ったりしゃべくっているのと”大嫌い双璧のCM”なのだ。
どっちもベタ~と心の一番いやらしいところに触ってくるような感じがある。
「薔薇」がロマンティシズムなら、「醤油」はリアリズムだ。「醤油に縛りつけられるのは嫌だ」が70年代のウーマン・リブ、「なぜ女たちは醤油に縛りつけられてきたか」を問い、薔薇にありつく方法を模索すると同時に、「女が薔薇になぞらえられてきたのは一つの罠である」としたのが80年代のフェミニズム、エコロジストは「薔薇を作るより、醤油を作る方が偉大だ、手作り醤油に帰れ」と気を吐いた、と総括し
「薔薇」がハレなら「醤油」はケである。
新婚生活には、この相反する二つのものが同居しているグロテスクさがある。
しかし、90年代になって、安田成美はこう言ったのだ。「醤油って薔薇なんだぞ!」結婚生活の薔薇化が進行しているというのだ。
小倉はあとがきで、
少子化の隠れた原因として90年代の安田成美のCM、そして2000年代の檀れいの「金麦」のCMがあるということが考え過ぎであるとは思わない。この二つのCMには共通点があり過ぎる。と書いている。
さすがに俺が「金麦]CMを生理的感情的に嫌うのとはちょっと違っている。
消費社会への猛進が人々がちゃんと生きていく土台を壊してしまったということか。
こういう見方があちこちに出てくる。
「根性」がある人ほど働かされ、相手を見つける時間がない。若い人たちにお金と時間を与え、成果主義をやめなければ、もう子どもは生まれない。熟年離婚の原因について
人が「競争」でなく「協力」しあえるようにしないと「少子化」は止まらない。
夫は、自分は妻に「自己採点式」に、あれもしてやったこれもしてやったと思っている。なのに、なぜ妻から離婚されなければならないのか。答えは簡単である。このあたりはよく分かるのだ。
夫には、妻にも一人の人間としての「こころ」があるということが分からないのである。女性にも男性と同じ「人間の誇り」があるということが分からないのである。
とくに妻に対する独りよがりの自己満足については亡き妻に謝らなくてはならない(手遅れだが)。
そんな身勝手な夫なのに文句も言わずついてきてくれたことには感謝の言葉もない(手遅れだが)。
いそっぷ社
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ginsuisen at 2014-01-21 13:52
アハハアハハ~。CMそんなにちゃんと見ておりませんでした。安田成美ねー。確かに、好きでないです。樋口可南子も嫌いです。媚びる女、化粧の濃い女みんな嫌いです。となると姫野先生は??ですが。天野先生のご意見聞きたかったです。
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chaiyachaiya at 2014-01-21 16:10
かなり前ですが、「男流文学論」という対談本を読みました。上野千鶴子、冨岡多惠子、そして小倉千加子さんによるものです。
村上春樹の長編の主人公の男のパターンについても、語っていて、「ああ、そういう、わかる気がする」などと感じたりしました。
今思うと、凄いメンバーの顔合わせだったなあ。
・・・「金麦」のCMが嫌いな男性は、なんだかんだ言っても、結局のところ、いないのでは、と思っていた私・・・。なんか恥ずかしいです。(-。-;
村上春樹の長編の主人公の男のパターンについても、語っていて、「ああ、そういう、わかる気がする」などと感じたりしました。
今思うと、凄いメンバーの顔合わせだったなあ。
・・・「金麦」のCMが嫌いな男性は、なんだかんだ言っても、結局のところ、いないのでは、と思っていた私・・・。なんか恥ずかしいです。(-。-;
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chaiyachaiya at 2014-01-21 16:16
ええと、ところで、日本酒の瓶の後ろの絵は、奥様の作品ですか?
(なんか、私、探偵さんみたい)^_^
(なんか、私、探偵さんみたい)^_^
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saheizi-inokori at 2014-01-21 16:24
ginsuisen さん、男が使う商品のCMには媚びる女は必需品かもしれないです。
その媚び方の問題が好悪を別けるのかもしれない。
その媚び方の問題が好悪を別けるのかもしれない。
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saheizi-inokori at 2014-01-21 16:28
chaiyachaiya さん、怖いもの見たさ、読んでみようかな。
金麦は「なんだかんだ言っても、こういうのって好きなんでしょ」という感じで、憎からず思っている秘所を無遠慮に触ってくる、そこが何とも言えず嫌です。
この絵?違います。誰が描いたのか知りません。
金麦は「なんだかんだ言っても、こういうのって好きなんでしょ」という感じで、憎からず思っている秘所を無遠慮に触ってくる、そこが何とも言えず嫌です。
この絵?違います。誰が描いたのか知りません。
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ginsuisen at 2014-01-21 17:11
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chaiyachaiya at 2014-01-21 17:43
「薔薇のイコノロジー」若桑みどり、さんですよね。
読みたいと思って先延ばしにするうち、年月が経っていました。古書で探そう!
金麦CMのような、うりゃうりゃ、ツボだろう的なものの、女性向けバージョンも、世の中に溢れていて、嫌だな、と感じる理由は、佐平次さんと、同じ理由なのでした。
何度も書いちゃったです。(=゚ω゚)ノ
読みたいと思って先延ばしにするうち、年月が経っていました。古書で探そう!
金麦CMのような、うりゃうりゃ、ツボだろう的なものの、女性向けバージョンも、世の中に溢れていて、嫌だな、と感じる理由は、佐平次さんと、同じ理由なのでした。
何度も書いちゃったです。(=゚ω゚)ノ
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saheizi-inokori at 2014-01-21 18:10
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saheizi-inokori at 2014-01-21 18:17
chaiyachaiyaさん、三船敏郎の「男は黙ってサッポロビール」なんてのもジエンダー的には問題なのかな。そういえばビールのCMに男がでなくなったような気がします。役所なんとかがアジフライで一杯やるのは食欲そそったなあ。
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poirier_AAA at 2014-01-21 20:21
なるほど〜、こういうCMがお嫌いなのですね。
わたしも好きではありませんが、もうとうの昔に別世界のことだと気持ちの整理がついているのか、腹もたたなくなりました。そういえば、この彼女たちの醸し出す雰囲気がまさに「おうち」ですね。
CM製作はイメージ作りがすべてですよね。これで人が喜びそうだというエッセンスを吸い上げて映像化しているのですから、まぎれもなく世の中の多数派の好みでしょうし、逆に言えば上手く操作することで好みや新しいイメージを定着させることもできるでしょう。日本のCMってそういうところがすごく巧いので感心します。
わたしも好きではありませんが、もうとうの昔に別世界のことだと気持ちの整理がついているのか、腹もたたなくなりました。そういえば、この彼女たちの醸し出す雰囲気がまさに「おうち」ですね。
CM製作はイメージ作りがすべてですよね。これで人が喜びそうだというエッセンスを吸い上げて映像化しているのですから、まぎれもなく世の中の多数派の好みでしょうし、逆に言えば上手く操作することで好みや新しいイメージを定着させることもできるでしょう。日本のCMってそういうところがすごく巧いので感心します。
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sweetmitsuki at 2014-01-21 20:23
建設現場で働いていると「お昼ご飯を食べる」とはいわず「メシを食う」バックで車を入庫させることを「ケツから入れる」というのが当たり前なので、そういう女性ってカワイイと思ってしまいます。
自分とは最初から違う種類の生き物だと思ってしまうので怒る気になれません。
自分とは最初から違う種類の生き物だと思ってしまうので怒る気になれません。
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たま
at 2014-01-21 21:36
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たしか、その昔聞いた覚えの歌のタイトルは、「酒とバラの日々」・・・?、エディット・ピアフ又はブレンダ・リー・・・?
ちなみに、「枇杷」は、屋敷に中で陽があたらず、忌み嫌われる北西向きのトイレ(雪隠)の近くに決まって植えられ、他の花が咲かない寒い冬(=不幸なとき?)に笑い、咲き誇るのが忌み嫌われるのだ・・・とか何とか・・・と。
いまだ蕾み固き「梅」の白と似て非なるものにて・・・。
ちなみに、「枇杷」は、屋敷に中で陽があたらず、忌み嫌われる北西向きのトイレ(雪隠)の近くに決まって植えられ、他の花が咲かない寒い冬(=不幸なとき?)に笑い、咲き誇るのが忌み嫌われるのだ・・・とか何とか・・・と。
いまだ蕾み固き「梅」の白と似て非なるものにて・・・。
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saheizi-inokori at 2014-01-21 22:28
poirierさん、ガラスとピンクを多用したお家です。
商品に興味がなくなったせいか、どのCMも同じようでつまらないと思う今日この頃です。
隠居は実際は多数派なのにね。
そういえば葬祭業と保険のCMが多いのは私ら向けかな。
商品に興味がなくなったせいか、どのCMも同じようでつまらないと思う今日この頃です。
隠居は実際は多数派なのにね。
そういえば葬祭業と保険のCMが多いのは私ら向けかな。
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saheizi-inokori at 2014-01-21 22:29
sweetmitsukiさん、落語に出てくる女性もたいてい食う、うまい、ですよ。
食べる、おいしいは歴史の短いことばでしょうね。
食べる、おいしいは歴史の短いことばでしょうね。
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saheizi-inokori at 2014-01-21 22:51
たまさん、アメリカ映画の題名でもあり主題歌でもありますね。
本書はもちろんこの題名を踏まえてつけられたのでしょうが、酒の代わりに醤油というのが面白いですね。
最近の女性は酒とバラの人も多いようですが。
本書はもちろんこの題名を踏まえてつけられたのでしょうが、酒の代わりに醤油というのが面白いですね。
最近の女性は酒とバラの人も多いようですが。
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mariarica at 2014-01-21 22:55
安田成美も金麦も興味はないけれど
昔は心奪われるCMがありました
サントリーのローヤルでしたでしょうか?
砂漠の商人「ランボーこんな男… 」
テレビをつけて上質なモノに金縛りに逢う事って
もう無いかもしれません
昔は心奪われるCMがありました
サントリーのローヤルでしたでしょうか?
砂漠の商人「ランボーこんな男… 」
テレビをつけて上質なモノに金縛りに逢う事って
もう無いかもしれません
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keiko
at 2014-01-22 00:08
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男の人は結婚をすることで伴侶をえることで
安定するそうです。
結婚相手が良い人だからというのではなく
どんな妻でも妻を得ることで安定するそうです。
でも女の人は結婚しなくともそもそも一人でいても
安定してる生き物なんだそうです。
生物としてはじめから欠損欠落がなくうまれついているのが
女性だそうです。
異性に依存度が高いのは女性じゃなく男性だそうです。
安定するそうです。
結婚相手が良い人だからというのではなく
どんな妻でも妻を得ることで安定するそうです。
でも女の人は結婚しなくともそもそも一人でいても
安定してる生き物なんだそうです。
生物としてはじめから欠損欠落がなくうまれついているのが
女性だそうです。
異性に依存度が高いのは女性じゃなく男性だそうです。
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福
at 2014-01-22 06:51
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ある種のCMはたしかに社会心理学の分析の対象になるんでしょうね。
往年のサントリーのCMの素晴らしさは、やはり寿屋宣伝部の底力が大きいのではないでしょうか?
雁風呂の伝説なんていうのも懐かしく思い出します。
往年のサントリーのCMの素晴らしさは、やはり寿屋宣伝部の底力が大きいのではないでしょうか?
雁風呂の伝説なんていうのも懐かしく思い出します。
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tocotoco-o3po at 2014-01-22 08:37
成美ちゃんは最近あまりみかけませんよ。とんねるずの木梨憲武さんの奥さまですよね?
木梨さんは世田谷産まれで帝京高校出身です。
今はフジテレビの笑っていいとも!にお昼から生放送に出演してますよ~。先週急遽決まってました。生放送なのでなんでもありのようで(汗
相方は石橋貴明さんです。奥さまは、鈴木保奈美さん鎌倉出身です。
私もCMじっくり見ることあまりなかったので気づきませんでした。
CM制作も色々な意味があるのですね!
勉強になります。
木梨さんは世田谷産まれで帝京高校出身です。
今はフジテレビの笑っていいとも!にお昼から生放送に出演してますよ~。先週急遽決まってました。生放送なのでなんでもありのようで(汗
相方は石橋貴明さんです。奥さまは、鈴木保奈美さん鎌倉出身です。
私もCMじっくり見ることあまりなかったので気づきませんでした。
CM制作も色々な意味があるのですね!
勉強になります。
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saheizi-inokori at 2014-01-22 10:11
mariarica さん、山口瞳や開高健、壽屋の作る空気には憧れました。
「人間らしくやりたいな」、「洋酒天国」、懐かしいです。
「人間らしくやりたいな」、「洋酒天国」、懐かしいです。
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saheizi-inokori at 2014-01-22 10:12
keikoさん、私に関する限り全面的に認めます、はい。
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rinrin
at 2014-01-22 10:13
x
CMはきゃはは・・・と思うのが好きです
あまり好き嫌いを考えたこともなく・・・・
女性の多くはは暮れやお中元ににお醤油をもらって(最近ないね)
お誕生日や記念の日にバラをいただくじゃないですか
そこ、こだわるなんて、スゴイね
ま、匂いが違いすぎますけど
あまり好き嫌いを考えたこともなく・・・・
女性の多くはは暮れやお中元ににお醤油をもらって(最近ないね)
お誕生日や記念の日にバラをいただくじゃないですか
そこ、こだわるなんて、スゴイね
ま、匂いが違いすぎますけど
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saheizi-inokori at 2014-01-22 10:14
福さん、柳原良平も忘れられないですね。
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saheizi-inokori at 2014-01-22 10:17
tocotoco-o3po さん、とんねるずは私も知ってました。そうですか彼の奥さんでしたか。
もっともこのCMは私も覚えていないのですが。
CMとしてよくできているとみる気がないのに飛び込んできます。
それが嫌なものだと腹が立ってすぐにチャンネルを変えますが、それ自体が腹立たしいなあ^^。
もっともこのCMは私も覚えていないのですが。
CMとしてよくできているとみる気がないのに飛び込んできます。
それが嫌なものだと腹が立ってすぐにチャンネルを変えますが、それ自体が腹立たしいなあ^^。
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saheizi-inokori at 2014-01-22 10:20
rinrinさん、きゃはは、がなくなってきたのはCM制作側の問題か私の老齢化なのか、社会の力がなくなってきたこともあるかもしれないです。
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ikuohasegawa at 2014-01-23 05:38
若い娘が「間接キスしてみい」っていう、鏡月のCMは見たこと有りませんか?
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saheizi-inokori at 2014-01-23 09:50
ikuohasegawa さん、見ればわかると思うのですが、、それほどいやらしくないのでしょうか、覚えていないほど。
ユーモアがあるといいのですが。
ユーモアがあるといいのですが。
by saheizi-inokori
| 2014-01-21 13:19
| 今週の1冊、又は2・3冊
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