バカ息子に泣く父&グレンミラー&金坊の鰻&大狸に化かされたイイ女 志ん輔三夜・第二夜

三日にあげず、がちょっと気になって買わなかった志ん輔三夜の第二夜、急用が出来たからよかったらと、持つべきものは忙しい友だちだ。
例によって少し早めに行ってあたりを歩く。
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皇居を見ながら坂道を行くと、愛宕山の一八まではいかないが息があがる。
かつてジョギングで一周5キロを25分、それを2周して風呂に入ってからみんなと呑む酒がウマかったのなんの。
想えば遠い遠い昔のできごとのようだ。
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国立演芸場、階段の踊り場に志ん輔の写真が出迎えてくれる。

前座の半輔「無学者」
よくとおる大きな声で滑らかに語る。
ウケている、いいぞ。

こんど真打になったという、龍馬「釜泥」
石川五右衛門の子分ふたりが、親分の追善と自分たちが捕まって釜茹でにならないようにと世の中の釜を盗み出す、まずは豆腐屋のデカい釜から。
豆腐屋たちは大恐慌。
ある豆腐屋のオヤジが一計を案じ、「俺が釜の中で泥棒を待ち構えて捕まえよう」。
釜に入ったはいいが退屈でしょうがない、「婆さん、酒をくれ」、つまみもなしに「お、釜の中もいける」ちびちび。
泥棒が入ったときは、白河夜舟。

泥ちゃん、釜を担いで歩く。
釜の中から「婆さん!水をくれ」、蓋をあけるとにゅっとオヤジの頭。
ギャッ、逃げる泥棒。
豆腐屋のオヤジ、釜の中から夜空を見上げて
ああ、きれいな星空だなあ。、、あ、いけね!こんどは家ごと盗まれた
こういう噺大好きだ。
覚えておいて孫たちに聴かせてやりたい、絵本でも描いたら喜ぶかも、そういえばあったかな。
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(渋谷駅から)

志ん輔「片棒」
ケチベエさん、「俺が亡き後、この店をますます大きくしてくれるのは誰か」、三人の子供に葬式プランを言わせてコンペ。
長男の金太郎、緊張して震えながら進み出るが「この店の格を傷つけないように思い切って盛大な葬式にします」と言い切ったあたりからのびのびと楽しげにプランをぶちあげる。
聞いてるケチベエさんが逆に震えだす。
「お前が逝くまでは俺は死なないから!」。

ベランメエの次男が木遣り、手古舞、山車、神輿、、「弔いの歴史を変えるような」プラン。
いろいろ習い事をしている成果がこういうときにものをいう、とても楽しい。
ケチベエの人形がカクカクギクギクと動く様子に満場爆笑・拍手。
馬鹿息子高笑い、おとっつあん泣きだす。

結局は末っ子の「菜漬の樽棺」スタイルの超質素コースに決まったか。

そういえば日曜日の朝、ストレッチをやってシャワーを浴びながらラジオを聴いていると終活放送をやる。
お葬式を家族だけでやるのはどうしたらいいか、などと、実に不愉快な番組だ。
「片棒」でもかけてくれ、銀次郎スタイルのあれこれ、とかね。
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ストレート松浦・ジャグリング
ボックス、皿回し、お手玉、中国独楽、、軽妙な語り、スピード、見事な曲芸だ。

BGMにグレン・ミラーを使っているのがぴったり、まるでオーケストラボックスがあるみたいだ。



志ん輔「子別れ」
金があってもロクな子供たちがいないケチベエさんは気の毒だ。
熊さんはイイ子がいるのに酒に飲まれて花魁におぼれた。
でも女の正体をみて目が覚めて酒を断っていい腕の大工によみがえった。

となったら金坊とカミさんとよりを戻すのはみんなの願い。

母と子が糸巻をする場面。
俺もよくやったぜ、親子が向かいあって話をしながら、糸を巻きまき、いいもんだ。

金坊がおませを前面に出して笑わせる。
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仲入り後志ん輔「お若伊之助」
ふつうは中休みは10分だけど、それだと最後に力が抜けてしまうので15分頂きました。これが効果があるかどうかはこれから見ていればわかります
なんて意識し過ぎたんじゃなかろうか。

どうもリズムがイマイチ。
とくにカシラが根岸と浅草橋の間をエッサカオッサカ、顔色変えて往ったり来たり二往復するところが盛り上がらない。
その前の伊之助じつは大狸がお若をたぶらかすところにあらまほしい妖艶な風情も淡々過ぎる。

毎夜三席づつ、三日連続。
大変だろう。
ブログで観ていると常に稽古を怠らずいろいろなことに心をくだいて寧日がない。
第一夜の「柳田格之進」はことのほかの出来栄えだったと聞いた。
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「お帰りなさい」と迎えてくれるいつもの店。
「酒さえ飲まなければ」といわれた熊さんのことを考えながら少しだけ喉しめし。
隠居だし。
Commented by at 2013-10-08 13:58 x
ジャグリングにオーケストラボックス、ええなぁ、
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-08 14:00
蛸さん、あったらめちゃくちゃ高い入場料になっちまう。
Commented by 豆ママ at 2013-10-08 21:53 x
「お若・・・」、苦手な噺です。志ん輔さんも気持ちが入らないのかなァ。
置いといて・・・さっき、池袋でそのジャグリング見ました!
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-08 21:57
豆ママさん、おとぎ話だと思えばいいのかもしれないですが、どうもね。
お若を軽く扱ったら聴きやすくなるかもしれないです。
噺に登場はしないのだけれど。
松浦君、いいでしょ?
Commented by haru_rara at 2013-10-08 22:52
最近、ある雑誌のアンケートを書きました。テーマは「お墓について思うこと」。偶然、実家の老母も書いておりまして、それを読んで初めて、母がいま望んでいることの一端がわかったような気がしました。
渋谷の空も秋の雲。ビルのガラスに映ってきれいですね。
Commented by chaiyachaiya at 2013-10-08 23:31
グレン・ミラー、父が好きで、レコードいっぱいあったの、思い出しました。ベニー・グッドマンとかも・・・。
グレン・ミラーをバックに演芸、なんだか不思議で、いい空気感な気が致します。いいなあ。
“喉しめし”、ああ、いい言葉。明日から、飲む時に言うっと!
Commented by 豆ママ at 2013-10-09 00:36 x
たしか・・・一昨年の末広亭の〆で沸かせてくれた人ですよね・・・・
ご本人、だいぶ太った、と仰ってました。
Commented by kanafr at 2013-10-09 01:47
“釜泥”のオチ、何だか情景が浮かんできました。
白河夜船...こういう落語で昔ながらの日本語が語り継がれるっていいですよね。
今夜、№2に教えようって思いました。
サザエさんのお母さんのフネさんがお出迎えの看板も情緒があっていいですね。
Commented by ikuohasegawa at 2013-10-09 06:31
うらやましいかぎりです。
Commented by at 2013-10-09 06:50 x
こちらを訪問してから、志ん輔師のブログを毎日読むようになりました。
良い噺家はみなそうですが、熟練の職人のようないい顔をされていますね。
Commented by ほめ・く at 2013-10-09 08:16 x
私もやりましたよ皇居一周。
20代は毎日昼休み、雨の時以外は会社の近辺を3㎞ジョギングしていました。お蔭で当時の体型は、スーツならYA体。
それが今じゃ二階級特進です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:17
ハルさん、お墓なんかいらないような気がしますが、お墓参りってのはのこった人のためのものかもしれないですね。
都会の夕暮れにも味がないわけじゃないです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:21
chaiyachaiya さん、「いっぱいやっか」と「ちょいと喉しめししていきますか」、同じ酒を同じ居酒屋で飲むのですがね。
ジェイムススチュアートの「グレンミラー物語」とか主演は忘れたけれど「ベニーグッドマン物語」「五つの銅貨」など面白かったなあ。
あの頃はアメリカが嫌いじゃなかった。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:23
豆ママ さん、まじめが着物着ているような人です。
志ん朝命でしょう。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:26
kanafrさん、平屋ばっかり、空気が澄んでいる江戸の夜空、現実には絶対に見られない。
それを一瞬でも瞼に浮かばせてくれるのが落語の藝です。
人情についても今は失われてしまった情けを感じさせてくれますよ。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:27
ikuohasegawa さん、手の届く贅沢、ありがたいこってす。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:28
福さん、同感です。
エライさんにはない顔です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 11:30
ほめ・く さん、心臓をやってから怖くてやめた、というのは弁解で、根気がなくなりました。それに隠居は忙しくもあります^^。
Commented by fukuyoka at 2013-10-09 18:28 x
釜どろ面白そう!!saheiziさんのブログ読んでると聴きたいのがいっぱいありま〜す。
Commented by saheizi-inokori at 2013-10-09 23:02
fukuyoka さん、とぼけた味わいがあるいい噺です。
小三治あたりで聴いてみたいな。
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by saheizi-inokori | 2013-10-08 11:50 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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