オジサン、オレオレ俺だよと小三治が叫んだ山下町 小三治独演会

じゃじゃ~ん!
久しぶり、正月に池袋で「初天神」を聴いて以来だ。
県民ホール寄席の300回記念の独演会、ダメ元で電話したら切符が取れたのだ。

雨もよい、大きな傘を持って出たのにバスの中に忘れてきた。
さいきんはなにかかにかミスがある日々也。
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夕暮れの中華街も久しぶり。
40年前、横浜で働いた頃はランチはたいていここだったのが別世界の出来事のように感じられる。

時間になって驚いた。
はん治が登場して自分でメクリ。
鯛の噺、似ているかどうか、どうか鯛だと思うように思うように、、
独特の口調で始めた「鯛」
活き作りの店の生簀の中の、20年生きのびている老鯛と捉まったばかりの若鯛の会話。
網で掬われないようにして生きのびるコツを教える老鯛、「タタイにはいうなよ」、タタイすなわち他鯛。
「耳を貸しな」って、どこが耳。
こういうとぼけた話ぶりがいつ聴いても楽しい。

終って、自分で座布団を返して小三治の茶碗を運んでくる。
小三治の三番弟子、高弟真打なのに。
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(中華街の廃屋)

小三治「道灌」
出囃子の太鼓を自分で叩いて途中からはん治に替わったという。
「ツテツクテンテン」の「ツ」が難しいのだ、たいていの人は「テンテンテテテン」になってしまう。
ベートーヴェンの運命の出だしも休止符があって「ンダダダダァ~ン!」、「ン」が大事だと。

八ツアンと隠居ののんびりした会話、八ツアンの頓珍漢な言葉が爆笑というのではなくただただ楽しく愉快。
八ツアンが家に帰ると「村雨」が降ってきて人々が往来を走っていくのを見て「駆け出し道灌」だとか車を引く牛に同情したりするところが、雨に濡れた土の匂いが漂ってくるような感じがした。

「隠居さんは何もすることがなくてテエクツでしょう?」「いや、そうでもないよ」
俺も決して退屈しない隠居だ(体力気力が何時まで続くかではあるが)。
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(始まる前に「トマトラーメン」)

休憩時に主催者らしき人に前座はいないのかと尋ねたら、「小三治師匠は前座がいない。たまに二つ目を連れてくることはあるが、今日のように真打がメクリなどをやることが多い」とのこと。
別にイイじゃないか、とも思うがちょっと違和感(菅官房長官風に)。

小沢昭一の思い出、落語家になりたかった、末広亭で10日間満席にしてもう一度やりたいようなことを言ったが、”「夢が叶うのは一度でいい」と心のうちでつぶやいて”実行しなかった、、など話しているうちに急に「寝棺」と「座棺」、火葬と土葬の噺になって、座棺を「早桶」という所以からサイズ(並一並二大一番頭抜け大一番)の説明、そこで「付き馬(早桶や)」をやるとわかってムネキュン、初めてだ。
小沢さんの寝棺、よかったしお弔いもよかった、、
でも、生きているうちに好いことをしなくちゃ
で、男が好いことというと、、吉原だ。

そういって今度は吉原の説明、大門を入って仲町があって、、お歯黒どぶがあって、城みたいだから郭とよばれ、勘定の仕組み、所持金が足りなくなった客に家まで付いていく馬子、それで「付き馬」といった、、その都度頷くオバサンやフンフンいうオジサン、小三治吉原講座だ。

口から先に生まれたようなといっても決してぺらぺらしゃべるのではないのだが、客が若い衆を手玉にとって田原町までの道中。
ゆっくりと丁寧に花屋敷から観音様、仲見世、鳩の豆を売る老婆、人形焼、オモチャ、帽子屋、、実に楽しい。
早桶屋の親方に「おじさん、おじさん!」
ちょっと変形のオレオレ詐欺だな。
居残り佐平次の従弟かもしれない。

オジサン=親方の渋い造型、哀れを留める若い衆、最後のクライマックスで弾けた。
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30年、300回の演目一覧をみると1980年1月の第一回も小三治が「付き馬」をやっている。
聴き比べてみたいような気がする。

終わったあとは居残り会、Yさんは現役、隠居の忙しさとは違う忙しさで欠勤したが4人で2時間半。
若い頃出張と出向の違いが分からなかったというMさんの話、ナオキ君もびっくりかも。
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(元町中華街駅)
Commented by itohnori at 2013-09-26 11:25
saheizi-inokoriさん 、こんにちは。
 お互い様ですね。(^-^)
でも、忘れたことを思い出すので、認知症ではない様です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-26 13:30
itohnori さん、思い出さないことは気がつかない。
だからあるのかも^^。
Commented by sweetmitsuki at 2013-09-26 20:37
地下鉄の駅がこんな風に閉ざされてるのを初めてみました。
佐平次さまはご覧になったことがありますか?
どうせ他の地下鉄と近いうちに連結するのですから、もっと伸ばしてそれまでは車両基地にするべきでしょう。
この壁は、すぐに取り壊して新しく埋め戻すつもりなのでしょう。
資金の無駄使い以外の何物でもありません。
他所の鉄道会社を心配している場合ではないです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-26 21:12
sweetmitsuki さん、終着駅ですから壁があるのでしょう。
このあたりには地下鉄はないんじゃないかな。ちょっとおっしゃっている意味が分からないのですが。新しく埋め戻すって?
Commented by sweetmitsuki at 2013-09-26 21:28
私が溶接の職業訓練校時代に研修で訪れた都営新宿線の終着駅にはこんな壁はありませんでした。
千葉の地下鉄と連結させるために、すでに開発を進めていました。
横浜の地下鉄には相鉄線があって、他にも小田急、江ノ電、JR,そして何より東急田園都市線の乗り入れが可能なのですから、それを見据えて開発すべきなのです。
新しく埋め戻すは誤りでした。せっかく作った壁を、近い将来取り壊してしまうのでしたら、作らないほうがマシだと思うのです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-26 22:35
sweetmitsuki さん、ここから他の電鉄と乗り入れはちょっと考えられないなあ(私には)。
東急東横線が延伸された形でここまで来たのです。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%89%84%E9%81%93%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%A8%E3%81%BF%E3%82%89%E3%81%8421%E7%B7%9A
JRは横浜乗り換えです。
それから「壁」というのは蒲鉾型の天井から下がっているもののことですか。よく見ないとわからないけれどあれは防火壁みたいなものじゃないかな。「壁」の向こうにまだホームが続いているようですよ。遅くなって乗り遅れては困るのであわてて階段を降りながらシャッターを押したのです。ちょっと外国映画に出てくるような面白い光景だと思って。
Commented by 小言幸兵衛 at 2013-09-26 22:39 x
いやぁ、良かったですね、小三治。
居残りも楽しかった!

しかし、一枚の写真からこれだけ会話が広がるんですねぇ、一席の高座から話題が尽きないように。
Commented by HOOP at 2013-09-26 22:43
JR根岸線かもしれません。
根岸駅までの延伸計画は存在します。
Commented by HOOP at 2013-09-26 22:47
と思ったら、地下鉄グリーンラインの方が有力なようです。
いずれにせよ、ずっと先のことですね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-26 22:51
小言幸兵衛さん、昔の拙ブログは「フンドシ」と称して長い長いコメントが交わされたものです。
当時のメンバーはほとんど入れ替わりました。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-26 22:57
HOOP さん、なるほど根岸線がありますね。
どうなることやら。
それにしても写真の「壁」は根岸線延伸の邪魔にはならないでしょう^^?
Commented by HOOP at 2013-09-26 23:03
そうですね。解体したシールド掘削装置(通常はさらに深く埋めてしまうのだそうです)を置いてあるのかもしれません。
Commented by ikuohasegawa at 2013-09-27 07:41
元町中華街駅の先に伸ばそうにも、あの先の人が住んでいる所には根岸線がある。それ以外は埠頭と工業地帯です。伸ばすのは無理です。不用です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-27 10:29
HOOP さん、地下鉄漫才を思い出します。
こんなでかいの、そりゃ埋め込むしかないのかも。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-27 10:31
ikuohasegawa さん、ここに限らず人口動態などをみても鉄道を新しく作るよりは既存のインフラを拡充・強化すべきなんでしょうね。
リニアなんて年寄りは乗りゃせんちゅうに。
Commented by ほめ・く at 2013-09-27 10:36 x
アーア、行けば良かった。
after festival じゃなかった、後の祭りです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-27 11:01
ほめ・くさん、いらしてるかなあと思ってましたよ。
後の祭りも楽しかったですよ、ちょっと飲み過ぎたけれど。
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by saheizi-inokori | 2013-09-26 11:21 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(17)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori