今こそ知るべし松岡洋右&大島浩のインチキ 渡辺延志「虚妄の三国同盟 発掘・日米開戦前夜外交秘史」

日本を対米戦争に引きづりこんだ大きな要因となった日独伊三国同盟。
国内の多くの反対をものともせずにガムシャラにナチス・リッペントロップ外相・ヒトラーと交渉を進めたのは、当時の松岡洋右外相と大島浩ドイツ大使だ。
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三国同盟を結んでも参戦するか否かは日本の自主的な判断に任される、それは秘密議定書で担保されている。
松岡はこういって御前会議や枢密院会議を説得、米英との戦いを避けたい海軍も賛成にまわった。

それが、まったくの大ウソ!
その保証とはヒトラーとリッペントロップの小間使い程度のシュターマー特使が松岡と本国の間を取り繕うためにあわてて書いた私信に述べられたに過ぎずシュターマーはそのことを本国に伝えてもいないのだ。

ヒトラーは対英戦争の行き詰まりをみて本心では嫌いな日本を引っ張り込んでシンガポールを攻撃させようと必死だった。
日本が対米戦争に踏み込んだときも何の支援もできなかった(ヒトラーの口約束を裏切って)。

独ソ開戦はありえないしアメリカが日本との戦争に踏み切ることはない、なんの根拠もない独断で日本を悲劇に引っ張り込んだ松岡。
大島はドイツがソ連との戦いで苦戦のうちに冬将軍に叩きのめされるのを前線で視察していながら、戦況はドイツに有利だと報告する。
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まるで喜劇を見るような戦争前夜の日本の指導者の言動。
映画や小説の世界なら喜劇だがわが身に現実に起これば大悲劇だ。

朝日新聞の現役記者が東京裁判における国際検察局(IPS)尋問調書を読みこんで明らかにした(敬服する!)真実のあまりの情けなさに愕然とする。
独善、倨傲、無知、、それを許す近衛をはじめとするエリートたち。
良しとし英雄ともてはやすメデイア。

「三国同盟の締結は僕一生の不覚だった」、松岡が日米開戦の日に語ったとされている言葉だが本書における検事とのやり取りを読むと、決して戦争の責任を感じていたとは思えない。
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それにしても筆者も嘆いているが「なぜ今までこういう事実が明らかにされてこなかったのか?」

あいまいに「みんな悪かった」、最近では「当時の日本としては止むを得なかった」という言説まで大手をふるっている。
松岡を再評価する向きすらある。

松岡だけではない。
「人間たまには清水の舞台から目をつぶって飛び下りることも必要だ」という言葉で対米開戦を促した東条。
世界最高の二大国に対してあれだけの大戦争を試みる以上、定めしそこにはある程度明確な見通しに基づく組織と計画があったであろうという一応の予測の下に来た連合国人は実情を知れば知るほど驚き呆れたのも無理はない
と丸山真男が「軍国支配者の精神形態」で論じ、
われわれは満州事変を経て太平洋戦争に至る歴史過程の必然性を論証するに急なるあまり、こうした非合理的現実をあまりに合目的的に解釈することを警戒しなければならない
と注意を喚起し、当時の指導者たちを”見えざる力に駆り立てられ、失敗の恐ろしさにわななきながら目をつぶって突き進んだ、半身は小心翼々たる俗吏”と指弾している(本書「おわりに」から)。
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戦後、病死した松岡を合祀している靖国神社に「国のために戦って尊い命を犠牲にした方々に手を合わせ、尊崇の念を表す気持ちは持ち続けたい」という安倍首相。

シリアの化学兵器使用について「いかなる状況にあっても許されない」と語る政府(核兵器の使用については”いかなる”を拒否したのに)。

俺は本書に明らかな松岡の虚偽報告について、当時の外務省が事務的な詰めを行わなかったことも驚きである。
そして、今現在同様なことが、たとえばTTP、集団的自衛権、憲法改悪、秘密保護法、フクシマ、社会保障、、いろんな動きのなかで国民が知らないままに大事なことが、無責任に(戦争遂行と同じく)決せられているのではないかと疑心暗鬼にならざるを得ない。
だって、あの頃に比べてリーダーや官僚たちが資質において優れているとか使命感をもっているなどとは、どう見ても思えないのだから。
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安倍べったりのメデイアも松岡を救国の英雄ともてはやしたメデイアとどのくらい変わっているか。

岩波書店
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Commented by takoome at 2013-09-01 13:16
サワディーカー
何も変わっていない政府、何も学習出来ない私達。
悲しいね、
Commented by cocomerita at 2013-09-01 14:39
Ciao saheiziさん
結局なにも変わっていない
歴史は繰り返され、悲劇も繰り返され、犠牲になるのはいつも市民
ひょっとして、、私たちってM???
国民の意識が変わらないと何も変わりませんよね
寄らば大樹の影と信じている国家、政府など大樹でもなんでもなく、むしろ国民の無知さに寄生する猿の腰掛けにすぎない
寄っ掛かることさえ敵わない
不快で不安極まりない今日この頃、、、
Commented by hisako-baaba at 2013-09-01 14:52
松岡洋右が進めたのですか、日独伊防共協定。
国の前途を誤る行為が意外に簡単に出来ちゃったのですね。
マスコミに目がなかった。
今のマスコミもアベノミクスに同調し過ぎですね。怖い怖い。
Commented by antsuan at 2013-09-01 17:28
本当に腐っていたのは、軍部ではなく外務省! GHQは、その腐った外務省を解体せずに、占領政策の中心的役割を担わせています。 現在も、シャラップ上田人道人権大使が幅を利かせているような状態ですから、先が思い遣られますね。
Commented by chaiyachaiya at 2013-09-01 19:32
俳優の 故 天本英世さんが 「戦時中の日本と今、何も変わっていない。こんな国で死にたくない。スペインで死にたい。」と言っていらしたのを思い出しました。
この国行き詰まったら金融資産と一緒に国外へ、とでもお考えなのか、と勘ぐりたくなる、上の方の方々。ああ・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:10
蛸さん、変わってない?悪くなってるように思います。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:11
cocomerita さん、ますます悪くなっていると思います。
志のない世界になりました。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:12
hisako-baaba さん、ナチスにならへという大臣もいますし、悲観的になります。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:15
antsuan 、外務省もその他の役所も軍部も政治家もみんな腐っていたのではないでしょうか。
身を挺してノーと言える人がいなかったのですから。
今はもっとひどい。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:18
chaiyachaiya さん、日本だけが行き詰るということもないのでしょう。
世界同時に沈没かもしれない。
Commented by kuukau at 2013-09-01 21:01
振り上げた拳を持て余すアメリカ、右手で握手し左手をふる強かな外交ができる英国、目が泳ぐ日本。
Commented by keiko_52 at 2013-09-01 22:11
ヒットラーがなにを考えていたかわかりませんが、
ヒットラーは日本嫌いそう、バカにしそうっと思っていました。

日本人優秀なところとあきれるほどあほなところと
同居しているのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 22:15
空子さん、70年前も赤子のような日本でしたね。世界情勢に盲目で独善的な願望のみ。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 22:22
keikoさん、ヒトラーは日本を巻き込んでイギリスに打撃を与えアメリカの関心を日本に向けてヨーロッパに力を割けないようにし、その上ソ連を牽制しようと考えていた。
日本はドイツがすぐにもヨーロッパを制覇すると思ったのです。本当にアホです。
Commented by kanekatu at 2013-09-02 11:30
近ごろ東京裁判否定論が流行っていますが、少なくとも東京裁判によって明らかにされた事実、特に戦前の指導者がいかにいい加減で幾多の誤りを犯したのかが明らかになっただけでも、その意義はありました。
もちろん指導部にとって都合の悪い文書や証拠は終戦前に処分したので、全面的な開示とはならなかったんですが。
(ほめ・く)
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-02 11:53
kanekatuさん、アメリカの公文書が公開されてかなり詳しい資料があきらかになってきたそうです。
ただあまりにも膨大な資料なので個人で読み解くのは困難、資金を投じて組織的に読解分析すべきなのに、あの人たちは臭いものにフタなんでしょう。
またメデイアも。
渡辺みたいな人は稀少です。
Commented by tona at 2013-09-02 20:40 x
ヤマシャクヤクのはじけた実がきれいですね。どこにありましたか?
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-02 21:50
tona さん、小淵沢のペンションの庭だったかな。
いつも草花を見て楽しんでいます。
Commented by HOOP at 2013-09-04 08:15
著者は英文の尋問調書を探し当てたとしていますが、膨大な尋問調書は全文が20年も前に翻訳出版されていました。もちろん、解説資料付きで紀伊国屋書店からだそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-04 09:35
HOOP さん、同じものでしょうか。
本書を図書館に返してしまったので詳しい経緯をたしかめられないのです。
アメリカの文書公開がなんどかに分けてなされたようなことがあったような気もするけど。翻訳されたものがあれば彼の苦労は半分以下になったはずですが、訳すのに苦労したとあとがきがあったような、これもあやふやな記憶です。
Commented by HOOP at 2013-09-04 16:47
全巻で220万円だそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-04 21:27
HOOP さん、高いのか安いのか。
どうもそれとは違うコピーのようです。
調べてみるかなあ、、。
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by saheizi-inokori | 2013-09-01 11:41 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(22)

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