高原は知性と友情を育む 加藤周一「高原好日 20世紀の思い出から」
2013年 08月 28日
昨日は留守中取り置きしてもらった朝日・産経・東京の三紙5日分と格闘して夜は日本橋で一杯会、少し酒が残っている(弱くなったなあ)頭を朝風が涼しくしてくれた。
八ヶ岳に行く前に読んだ本。
加藤周一は新聞に連載していた『夕陽妄語』をときどき読んだが好い読者ではない。
これは信濃毎日新聞に連載した文章を集めたらしい。
高原とは浅間高原のこと。
加藤は少年の頃から信濃追分で夏を過ごし、長ずるに及んでも日本にいる間は東京で医学に専心し、夏になると信濃追分で文藝に熱中した。
(富士見高原から突然雲海がみえた。6時、早起きは百万ドルの得)
と同時に加藤にとって生まれ育った地、東京は「遠くにありて思うもの」でもなく、思い出すべき町並みも、味も、匂いも、言葉さえも、”もはやそこにはない”。
メキシコの溶岩地帯で浅間の火山灰地を、内蒙古の草原で追分の秋を、フランス西南部の松林で信州の雑木林の小径を思い出した。
浅間高原こそ加藤の故郷だという。
浅間高原であった多くの人々との交友が懐かしげに綴られる。
油屋主人、堀辰雄と多恵子、立原道造、中野好夫、片山敏彦、兼常清佐、福永武彦、中村真一郎、川島武宜夫妻、朝吹登水子および朝吹家の人々、野上弥生子、磯崎新、石井好子、臼井吉見、辻邦生、丸山真男、、62の文章に登場するのは錚々たる日本の芸術家や知識人、マリー・デュフォー、アルベール・アルゴオなど8人の外国人もいて、一茶や藤村、巴御前、太宰春台、佐久間象山(いずれも信州人)が現れて”いま”の日本をどう見るかを語るのも面白い。
回想録であるとともに人物評論であり歴史・社会評論でもある。
(原村のペンション、このソフアに寝転がって本を読んだ。
急に暗くなったと思ったら霧が立ち込めたのだった)
戦争を挟んで”変わらなかった人”が多い。
いずれも世界に通用する知性の人々だ。
こういう人たちと心を許した付き合い、お互いに啓発しあうことができて、感動に充たされた交友。
テニスコート付きの別荘に恵まれた人たちが権力や富に汚されることなく精神の高潔を保ち、天与の才能を活かし人並み優れた業績を残し、それだけでなく人格も優れている。
俺とはあらゆる意味で別次元の人々の友情。
やっぱり羨ましい。
(ふくよかさ~ん!みてるかな)
まあ、無い物ねだりをしてもしょうがない。
俺は俺として残された人生を生きていこう。
三度三度の食事を大切に。
(蓼科「しもさか」、蕎麦掻ぜんざい)
ちくま文庫
加藤周一は新聞に連載していた『夕陽妄語』をときどき読んだが好い読者ではない。
これは信濃毎日新聞に連載した文章を集めたらしい。
高原とは浅間高原のこと。
加藤は少年の頃から信濃追分で夏を過ごし、長ずるに及んでも日本にいる間は東京で医学に専心し、夏になると信濃追分で文藝に熱中した。
戦時中の日本国で、遠くはロマン・ロランの反戦論を、近くはトーマス・マンのナチス弾劾の文を読み、さらにレーニンの帝国主義論に及ぶのは、少なくとも道楽や休養ではなかった“あらゆる狂信主義者の大声を好まない”筆者は精神衛生上も東京から脱出する必要があったという。
と同時に加藤にとって生まれ育った地、東京は「遠くにありて思うもの」でもなく、思い出すべき町並みも、味も、匂いも、言葉さえも、”もはやそこにはない”。
メキシコの溶岩地帯で浅間の火山灰地を、内蒙古の草原で追分の秋を、フランス西南部の松林で信州の雑木林の小径を思い出した。
浅間高原こそ加藤の故郷だという。
油屋主人、堀辰雄と多恵子、立原道造、中野好夫、片山敏彦、兼常清佐、福永武彦、中村真一郎、川島武宜夫妻、朝吹登水子および朝吹家の人々、野上弥生子、磯崎新、石井好子、臼井吉見、辻邦生、丸山真男、、62の文章に登場するのは錚々たる日本の芸術家や知識人、マリー・デュフォー、アルベール・アルゴオなど8人の外国人もいて、一茶や藤村、巴御前、太宰春台、佐久間象山(いずれも信州人)が現れて”いま”の日本をどう見るかを語るのも面白い。
回想録であるとともに人物評論であり歴史・社会評論でもある。
急に暗くなったと思ったら霧が立ち込めたのだった)
いずれも世界に通用する知性の人々だ。
こういう人たちと心を許した付き合い、お互いに啓発しあうことができて、感動に充たされた交友。
テニスコート付きの別荘に恵まれた人たちが権力や富に汚されることなく精神の高潔を保ち、天与の才能を活かし人並み優れた業績を残し、それだけでなく人格も優れている。
俺とはあらゆる意味で別次元の人々の友情。
やっぱり羨ましい。
まあ、無い物ねだりをしてもしょうがない。
俺は俺として残された人生を生きていこう。
ちくま文庫
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蛸
at 2013-08-28 11:23
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日本やなぁ、私は南半球から明後日、北半球に戻ります。
どっちも、日本やあらへんゎ、
どっちも、日本やあらへんゎ、
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saheizi-inokori at 2013-08-28 11:28
蛸さん、宇宙人やねえ。
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haru_rara at 2013-08-28 12:09
蕎麦の花!高く澄んだ青空に白い蕎麦の花畑。秋ですねえ。
会津も蕎麦どころですが、やっぱり私は信州そばが好き^^
今生での宿題を仕上げたら次回はまったく違う人生を生きてみたい。(でも前回の人生を忘れてるのが。。。)
会津も蕎麦どころですが、やっぱり私は信州そばが好き^^
今生での宿題を仕上げたら次回はまったく違う人生を生きてみたい。(でも前回の人生を忘れてるのが。。。)
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saheizi-inokori at 2013-08-28 14:12
ハルさん、会津の水蕎麦って有名ですね。山都だったかな。
今生での宿題かあ、私はなんだろう。夢中で生きてきてそういうことも考えなかったなあ。
今生での宿題かあ、私はなんだろう。夢中で生きてきてそういうことも考えなかったなあ。
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kuukau at 2013-08-28 16:42
類は類を持って集まる、の悪しき例が今の政財界。
日本の知性と呼ばれた方々がどんどんいなくなるのは心許ないね。
日本の知性と呼ばれた方々がどんどんいなくなるのは心許ないね。
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keiko
at 2013-08-28 17:06
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ご旅行よかったですね~おかえりなさい。
5枚目の写真に写っているピンクのおおぶりの菊みたいな
法風の花を北海道に帰省したおり、富良野に行き(「富田ガーデン」っといったかな)でみました。イングリッシュガーデンでピンクの花珍しかったのですが、軽井沢にも咲くのですね。
きっと気候がにてるのでしょう。
そういえば、映画「風たちぬ」でも軽井沢に行って恋がめばえていましたね。
5枚目の写真に写っているピンクのおおぶりの菊みたいな
法風の花を北海道に帰省したおり、富良野に行き(「富田ガーデン」っといったかな)でみました。イングリッシュガーデンでピンクの花珍しかったのですが、軽井沢にも咲くのですね。
きっと気候がにてるのでしょう。
そういえば、映画「風たちぬ」でも軽井沢に行って恋がめばえていましたね。
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chaiyachaiya at 2013-08-28 19:10
「高原好日」いいですね。著者の厳しそうな御顔を思い出しました。知や芸術の巨星、キラ星の方々。これは読むっと!
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poirier_AAA at 2013-08-28 21:03
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saheizi-inokori at 2013-08-28 21:31
空子さん、まったくです。
そういう自分も心もとないのだけれど。
そういう自分も心もとないのだけれど。
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saheizi-inokori at 2013-08-28 21:33
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saheizi-inokori at 2013-08-28 21:35
chaiyachaiya さん、ユーモアもあって爽やかな高原のような本です。
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saheizi-inokori at 2013-08-28 21:36
poirier_AAA さん、ほとんどの野菜は生で食べられますね。
そして新しければたいてい意外にウマイのです。
そして新しければたいてい意外にウマイのです。
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reikogogogo at 2013-08-28 22:06
富士見高原の横一直線に延々続く雲海、蕎麦畑ーーーいいね!!
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saheizi-inokori at 2013-08-28 22:09
reikogogogoさん、朝6時ころ、雲海に気がつきました。
すぐに消えました、得難い一瞬でしたよ。
すぐに消えました、得難い一瞬でしたよ。
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fukuyoka at 2013-08-29 00:55
夏の最後のいい旅をなさいましたね、いい写真ですね。癒されてます。久しぶりのヤカンの出会いうれしかったです!お尻に台座が付いているベージュ色のヤカンは北欧のものだと思うのですが、いいやかんですね。ありがとう!
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hanamomo06 at 2013-08-29 06:35
おはようございます!
原村での5日間 読書三昧だったのですね。
昨日夫が自家製のそば粉をいただいてきました。
蕎麦がきぜんざい美味しそうです。
添えてあるのはお漬物?
コリンキーは浅漬けやサラダが美味しいですね。
バタナッツ これでパンプキンスープを作りたいけどまだお目にかかっていません。
>テニスコート付きの別荘に恵まれた人たちが権力や富に汚されることなく精神の高潔を保ち、天与の才能を活かし人並み優れた業績を残し、それだけでなく人格も優れている。
こんな世界もちょっと覗いてみたいな~
原村での5日間 読書三昧だったのですね。
昨日夫が自家製のそば粉をいただいてきました。
蕎麦がきぜんざい美味しそうです。
添えてあるのはお漬物?
コリンキーは浅漬けやサラダが美味しいですね。
バタナッツ これでパンプキンスープを作りたいけどまだお目にかかっていません。
>テニスコート付きの別荘に恵まれた人たちが権力や富に汚されることなく精神の高潔を保ち、天与の才能を活かし人並み優れた業績を残し、それだけでなく人格も優れている。
こんな世界もちょっと覗いてみたいな~
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ikuohasegawa at 2013-08-29 07:07
旧油屋をリノベーションして、そこを拠点に追分けらしい活動をするという趣旨で「ホンモノ市」という「ホン=本」と「モノ=アート・クラフト」の展示即売会などが催されていますよ。
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saheizi-inokori at 2013-08-29 09:49
fukuyoka さん、自分でも英国のものを主にアンティークを販売している方が経営しているペンションで他にもヤカンがありました。
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saheizi-inokori at 2013-08-29 09:54
hanamomo06 さん、富士見高原、原村、小淵沢と近接した宿を泊まり歩き(食事に飽きないように、又空室を求めて)、中の半日が雨だったのを幸いと本を読み暮らしました。
いろんなカボチャや野菜が直売されているマーケットがあるのですが、目移りがして買い損ねます。
いろんなカボチャや野菜が直売されているマーケットがあるのですが、目移りがして買い損ねます。
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saheizi-inokori at 2013-08-29 09:56
ikuohasegawa さん、沓掛の佳き時代を再現するのは無理でしょうがあの旧軽井沢の喧騒は困りもの、追分の健闘を祈ります。
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かおる
at 2013-08-29 11:33
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素敵なペンションですね!!
蕎麦がきぜんざい美味しそう☆
蕎麦がきぜんざい美味しそう☆
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saheizi-inokori at 2013-08-29 11:36
かおるさん、これで落語が聴かれたら天罰があたります。
三度三度の食事は大切に…その通りですね。
学校の追分寮が油屋や堀辰雄の家のすぐそばでしたので、加藤周一も思索したという追分を懐かしく思い出しました。もう古くは40数年前のことなります。
学校の追分寮が油屋や堀辰雄の家のすぐそばでしたので、加藤周一も思索したという追分を懐かしく思い出しました。もう古くは40数年前のことなります。
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saheizi-inokori at 2013-08-29 23:17
tona さん、私は一茶が街道を歩いて行く姿などを思って楽しんでいます。
by saheizi-inokori
| 2013-08-28 11:13
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
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