天道さまがエライか金がエライか 「ゆうじょこう」その2&「金金節」

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6.20駒澤通り、曇空を押し分けるように太陽が昇っていく。

熊本の遊所「女紅場」の鐵子先生は新人の娼妓見習いたちに書き方の勉強の第一回を始める。
黒板に「太陽」と書いて、「たいよう」と読みます。
「どうして太陽が一番なのか、わかりますか?」
明治37年の初秋に親から売られて田舎から出て来たばかりの娘たちは、地球が丸いことも、太陽の光がなければあらゆる生き物が生きていけないことも知ることはなかった。
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太陽が一番偉いのです、と鐵子さんがいうと、
「天子さまも、えらかっど」とイチが首を伸ばして言い、「おっ父さん」「師匠」「弘法大師」、、口々にいうのだ。
天然の理、科学の世界の一番と、権力の世界の一番と、人倫の世界の一番と、仏の世界の一番を、一緒にして較べることはできまい。
人間は生きものであるから、理科的世界の一番を知っておかねばならないのだ。それをほっぽり出して、父母や天子さまや弘法大師を一番にすると、あちこちで悲劇が起こると鐵子さんは思う。
鐵子さんが若いときは、天子さまでなく将軍さまが一番だったけど、その将軍さまは家来を見捨てて天子さまに降伏し、見捨てられた大勢の家来たちは自ら戦って死んでいった。
父母のため、親孝行のためという名目で、娘たちは売られてきたが、お天道のために売られることはない。天子さま、父母、神仏のためには、売られたり、命を落とすことがある。
太陽は人間に何も押しつけず、ただ恵みの光を注ぐだけである。
太陽が一番、ということを知っていれば大丈夫。
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そうして、「月」「星」「雲」と教えていく。
こういうものがあるのを世界というのだ。

昨日書いた「ゆうじょこう」のことを考えながら歩いて行くと太陽の光が増すのにつれて雲が消えて青空が広がってくる。
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犬も、鳩も、女も男も、年よりも若者も、日差しを浴びてまぶしく輝いている。
そういえば村田喜代子の「光線」という小説のことも書いた。
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秋の日が釣瓶落としというなら夏の日は鰻登りとでもいうのだろうか。
さあ、帰ろう、サンチ。
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東京新聞に添田唖蝉坊のことが載っていた。
昨日俺が書いた↓ばかり。
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いつかの新聞コラムで天野祐吉も取り上げていた唖蝉坊の金金節。
多くの人がこの歌のことを思いだす今日この頃なのだ。
小沢昭一が唄ったのも覚えている。



売られてきた娘たちは一番大事なものは「親」「天子さま」「師匠」「弘法大師」、、といったが「金」とは言わなかった(すぐにそういうのだろうが)。
福沢諭吉が人間以外のモノとさげすさんだ娼妓たちも最初は「金が一番」とは言わなかったのだ。


Commented by kuukau at 2013-07-08 12:42
祖母の口癖は「お天道様が見ている」でした^_^
Commented by saheizi-inokori at 2013-07-08 14:18
空子さん、やっぱり太陽の方がエライんですね^^。
Commented by at 2013-07-08 14:54 x
金金よりのんきだねの方が好き!カエウタ作って唄ってみようかな?
Commented by saheizi-inokori at 2013-07-08 15:49
蛸さん、金金は好きになる歌じやないですよね。
ははのんきだね、いろんな歌詞でエノケンが歌ったような気がする。間違ってるかな。あとで調べてみます。
Commented by かおる at 2013-07-08 16:02 x
今は土取さんと岡大介さんが受け継がれてますね。先日行われた土取さんの講演会で岡さんが飛び込みで全部(26番まで)を歌われました。土取さんの「解放節」はすごかったです。http://www.youtube.com/watch?v=cG7tsREyheY こんな川柳が。確か江戸時代のものです。「お上はいつもぜんそくで 今日もぜいぜい 明日もぜいぜい」
Commented by poirier_AAA at 2013-07-08 18:28
村田喜代子,好きです。この本も日本にいたらすぐに読めるのになぁ。残念だけれど、いつかのためにメモメモ、です。

わたしもお天道様が一番エラいに一票。
そうだ、今週は在外選挙の週なのです。大使館に行かなくちゃ。
Commented by saheizi-inokori at 2013-07-08 22:45
かおるさん、ありがとう。
心落ち着けて聞かないとダメだから明日聞き直します^^。
Commented by saheizi-inokori at 2013-07-08 22:46
poirier_AAA さん、この小説はいつもの村田作品とちょっと趣が違うような気がします。
根っこは同じなんでしょうがね。
Commented by junko at 2013-07-09 06:36 x
Ciao saheiziさん
金金でなく 権力を持つ人でもなく
お天道様が一番と思って生きる人生って、真摯で清々しいですね
Commented by saheizi-inokori at 2013-07-09 09:57
junko さん、執着してないですものね。
執着してもいなくても日は遍く照らします。
地下生活者のことがちらっと胸をよぎりますが。
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by saheizi-inokori | 2013-07-08 11:25 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori