日中は喧嘩してる場合か! 津上俊哉「中国台頭の終焉」

病院の定例検診、と言っても血圧を測ってあとは雑談。
先生が「佐平次さんは偏差値低いです」というから、ン?と思ったら、ほとんどの患者が80歳以上で俺は若い方だというのだ。
先日書いた文春の記事、「少子高齢化によって東京など大都市圏の老人介護・医療施設が不足する」ということについて、このままでは治療の優先順位をつけてお断りする事態もあるかもしれないという。

帰りに新潮45・7月号を買ってバスの中で目を通していたら、橋下市長のもと大阪市政がシッチャカメッチャカになっていると、いろいろ事例があがっていた。
少子高齢化は大阪も例外ではないだろう。
やみくもに民営化や統廃合・行政サービスのカットを進めるばかりで「市民のための市政改革」という原点を忘れては本末転倒だ。
日中は喧嘩してる場合か! 津上俊哉「中国台頭の終焉」_e0016828_13372996.jpg
通産省北東アジア課長、中国日本大使館参事官などを歴任後、津上工作室代表、現代中国研究家のわかりやすい、しかし重要な問題を提起する衝撃的な本。

石原都知事(当時)が尖閣島を購入しようとした背景には、多くの国民のなかに中国が経済的・軍事的にどこまで強大化するか底知れないという不安があって、早く日本は行動を起こさないとますます不利になるという焦燥感が共有されているのではないか。
一方で中国人のなかでは、いずれ中国はアメリカを抜いて世界一の経済大国になる、今こそ、永年の屈辱を晴らし、『喪われた国家利益』を回復するチャンスだ、という意識変化が起きているのではないか。

筆者は、このように推測したうえで、そのどちらも間違った前提で考えている、「中国が世界一になる日がくる」という見方は幻想だという。
日中は喧嘩してる場合か! 津上俊哉「中国台頭の終焉」_e0016828_1351641.jpg
(夕方、眠りにつく5羽のコガモ)

中国は、世界一どころか今のままでは遠からず成長が失速し、深刻な停滞を迎えると警告する。
それは、
Ⅰ短期的(~15年頃)にはリーマン・ショック後の「4兆元投資」の後遺症。
製造業・不動産・インフラなどが何年も先の投資需要を先食いしてしまった。
投資財源の大半を有利子負債に頼ったため、これ以上高水準の投資を続ければ金融不良債権の増大を招く。
今朝の東京新聞では中国の「闇の銀行(シャドウバンキング)」が464兆円の規模になっていると報じている。

Ⅱ中期的(~20年頃)には、賃金が物価の上昇が見込まれるなかで生産性・付加価値向上を図るためには都市化の一層の進展、第三次産業の発達、規制緩和、民力の培養などが必須なのに、既得権益との衝突など政治的に解決すべき難問が山積している。
効率の劣る国有セクターが膨張する「国進民退」問題、「都市・農村二元構造」問題なども解決の兆しが見えず、経済成長を妨げる要因となっている。

Ⅲ 長期的(20年~)には、2012年の人口センサスで、合計特殊出生率が全国1・18、北京、上海では0・7強しかなく従来の見通しと大きくかい離することが明らかになってきた。
従来2015年に想定していた生産年齢人口比率は2010年にピークアウト、総人口は2020年にピークアウト(2032年と予想していた)するのだ。
日中は喧嘩してる場合か! 津上俊哉「中国台頭の終焉」_e0016828_14243341.jpg
↑の三点について各種のデータを示しながら、中国社会の実情を踏まえつつ見通しの暗さを説明する。

すでに紹介した、阿古智子「貧者を喰らう国 中国格差社会からの警告」に明かされる「都市・農村の二元構造」や地方政府の横暴・腐敗、既得権益層の抵抗などと合わせて読むとなおさら厳しさがよくわかる。
「親方日の丸」ならぬ「親方五星紅旗」の弊害は凄まじい。
今までの目覚ましい発展によって得られた利益はほとんど官に吸い取られてしまったという。
日中は喧嘩してる場合か! 津上俊哉「中国台頭の終焉」_e0016828_14595151.jpg
(千葉のトウモロコシ)

いうまでもないことだが中国経済がうまくいかないことは世界経済、とくに日本にとって深刻な脅威となる。
アベノミクスがうまくいくかどうか疑問だが、いくとしても中国経済が予想されてきた成長を維持することが前提のはずだ。

日本も中国も尖閣問題で角つきあわせている余裕などないはずだと筆者は強調する。
日本は少子高齢化でも世界の先頭に立ち、前人未踏の領域を歩んでいる。その日本が中国に、「君も同じ病気に罹るよ」と呪いの予言をするだけでは情けない。「課題先進国」として、これから東アジア全域、さらには世界中で進む「少子高齢化」のソリューションを率先して編み出していくことが日本のなすべき新たな国際貢献であると思う。
「他者の立場に立って、他者のことを思いやる」=empathyに長けているのが日本の文化・対人関係の特徴ではないか。
大量の移民を受け入れることを示唆するのだ。

日経プレミアシリーズ
Commented by antsuan at 2013-06-18 15:46
日本国内における外国人犯罪の大半がチャイナと韓国からの入国者です。即ち、日本は彼らに侵略されているのではありませんか?
日本はまもなく乗っ取られますね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-06-18 17:49
antsuan 、犯罪者がいるからと言って侵略されているとは、私は思いませんが。
乗っ取られるとも思いません。「まもなく」でなくとも。
Commented by 小言幸兵衛 at 2013-06-18 21:38 x
>「他者の立場に立って、他者のことを思いやる」=empathyに長けているのが日本の文化・対人関係の特徴ではないか。

まったく、その通りだと思います。
中国の首脳部は、必死なのでしょう。
そのサインに気づかず、相変わらず摩擦を起こす言動や行動をするばかりの安倍政権には、まったくempathyがない。
Commented by saheizi-inokori at 2013-06-18 21:40
小言幸兵衛さん、自分がエライ・正しいと言ってみても何も解決しないし、国民も喜ばないと思いますね。
Commented by 通行人A at 2013-09-01 18:05 x
もう少し中身のあるサイトかなと思って読んだけど・・・
あははでした。
Commented by saheizi-inokori at 2013-09-01 20:17
通行人A さん、そうですか、あははですか。
そうならよほどいいのですが。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2013-06-18 15:02 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31