俺たちの戦争記念日

23年前に亡くなった戦友B君を偲ぶ会、ことしも幹事が早くからみんなのスケジュールを訊いてくれた。
四国にある墓を東京に移したので、今年は墓参りも出来た。
本郷のビルの中の永代供養の”お墓”、ちょっと気分がイマイチなのはしかたがない。
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こういうのがずらっと並んでいて受付でそういうと渡されるカードを挿入すると正面の扉が開いて、○○家の墓というお位牌が現れ、その前には水が流れ、煙のあがらないお香を手向ける。

「戦友」というのは「一緒に戦った友」、ある会社の命運を決めるときに、理不尽なことを押し付ける権力に対して戦ったのだ。
ありゃあ、たしかにひとつの戦争といっても良かった。

ほとんど不眠不休の日々が続き、その苦労が災いしてB君は早世、遺された親御さんは俺が無茶をやらせて死期を早めたとして、会ってくれなかった。
「無理するな、帰れよ」といっても柔和な笑顔を浮かべて最後まで付き合って、深夜一緒にタクシーで帰って、夜中いろいろ頭に浮かんだことを早朝出勤してメモにまとめていると、B君も出て来て俺の書き殴りをきれいな字で清書してくれた。
初期のワープロはあったけれど機能が悪く、彼が書いた方が速くて読みやすかった。

それを増し刷りして役員たちの部屋を回って秘書たちに配る。
昼間の会議で主張する。
俺たちの主張、今進められていることの何が間違っているかを訴えたのだ。
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毎年、戦友たちが集まると当時の激戦を回顧して酒が進む。

上司の役員をみんなの面前で罵倒、「ざけんな!みんなを地獄につれてこうってのか!」、俺だって管理職の端くれだったのにどうしてあんなにひどい口をきいた(きけた)のか、不思議だ。

今思うと、あの時は役員とか先輩とかいう事なんか考える余裕がなかった。
マジ明日は首になるだろう、もしかしたら死ぬかもしれない、それでも現場のみんなを救わなければいけない、それが俺の仕事・使命だ、狂騒の気分だった。

俺たちの主張の基本が受け入れられはしなかった(権力が受け入れるなんてあり得なかっただろう)が、多くの点で修正がなされた。
ある日俺は完全窓際、追いだし部屋に追いやられたのではあるが、マルキシ戦果がなかったのではなかったのだ。
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毎年あっている戦友たちが、毎年一年分歳をとっている。
丸くなった。
身体も頭も、生き方も。
丸くなったのは外見だけで中は山嵐の俺。
Commented by antsuan at 2013-05-23 16:27
いいですねぇー、心の中は山嵐。
死んだ戦友も喜んでいると思いますよ。
Commented by keiko_52 at 2013-05-23 17:18
仕事をするというのも大変なことですね。
左遷、窓際、サラリーマンにはいつもあるかもしれない
人生の激動でしょうね。
でも、貫き通さなければいけないものは人間なので
あるので、それができたのはsaheiziさんは幸せだったっと思います。
Commented by junko at 2013-05-23 17:40 x
Ciao saheiziさん
Saheiziさんの部下になってみたかった、、とsaheiziさんの昔のお話聞くたびに思います
そうしたら、私も日本の会社やめてなく、イタリアにも来てなかったかも、、笑

山嵐吹かせ続けてください
それがsaheiziさんの魅力です
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-23 20:19
antsuan、ああ、戦友!です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-23 20:20
keiko_52さん、力が足りなくても使命は果たさなければいけないと思って生きてきました。
少々ガタが来ましたが。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-23 20:21
junko さん、毎年同じこと書いてますねえ。
なかなか大人になれない隠居です^^。
Commented by fukuyoka at 2013-05-23 20:35 x
saheiziさんのその熱いところが好きです。大人になるってなんなのかな〜と思いますよ。
Commented by kuukau at 2013-05-23 20:55
夫もsaheiziさんと同じ想いを味わってたのかなぁ、と。
家には仕事の話を持ち込まなかったので言いたい放題の悪妻だったなぁ、と反省です。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-23 21:02
fukuyokaさん、ありがとう。ますます未成熟に甘えてしまいます。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-23 21:09
空子さん、私がブッ飛ばされて給料が下がったばかりか将来も不安な状態に陥った時に、少しも騒がずなんとかなるわよ、と笑っていたのが亡妻です。子供たちがまだ大学に入る前でした。そうだから私も突っ張れたのだと思います。
Commented by mi-mamam1 at 2013-05-23 21:24
かっこいい!!!山嵐さんを敬服いたします。ドラマでしか見たことなかったです。奥様もまた、素敵。正直に生きることが、なかなか難しい今の私なので、とても眩しく読みました。
Commented by 小言幸兵衛 at 2013-05-23 22:17 x
“戦友”という言葉の重みを、ずしっと感じます。
そして、現役バリバリの頃の佐平次さんの姿が、何となく目に浮かびます。
きっと“戦友”も、佐平次さんの気持ちをわかってくれているでしょう。


(ブログを衣替えしたんですが、馴染めなくて戻しました^^)
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-24 09:49
mi-mamam1さん、かっこいい?ボロボロでしたよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-24 09:51
小言幸兵衛さん、彼は私を信じていてくれたという事を他の戦友が証言してくれたのが嬉しかったです。
それだけに早世が残念です。
Commented by ジュ at 2013-05-24 12:00 x
まるで山崎豊子さんの小説みたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-24 12:23
ジュさん、私も書こうと思ったことがあります、マジ。
Commented by hisako-baaba at 2013-05-25 08:34
かっこいい!こういう話大好きです。
気骨のある人は魅力的。
働いていた時代は、私も戦争してたなと感じます。
Commented by saheizi-inokori at 2013-05-25 10:09
久子さんの戦中戦後の戦いに比べたら私のなんか演習みたいなもんでしょう。
だいたい餓えがないのですから。
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by saheizi-inokori | 2013-05-23 10:03 | よしなしごと | Trackback | Comments(18)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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