分裂しつつあるアメリカ チャールズ・マレー「階級『断絶』社会アメリカ」
2013年 04月 30日
1963年11月21日、ダラスでケネディが撃たれた。
この日以来、いわゆる60年代、文化変容の時代が始まった。
新たに誕生した上流階級、それは経営管理職、専門職(医師、法律家、エンジニア、建築家、科学者、大學教員など)、およびマスコミのコンテンツ制作職に就いているうちのもっとも成功している上位5パーセントに入る人々、というのが筆者の定義。
今のアメリカを動かしているのはこの人たち。
60年代以前に見られた苦学力行のエリートたちとは出自が違うのだ。
本書はまず新上流階級が形成された要因を分析する。
知能指数が高い、選ばれた特別な大学(ハーヴァードなど)を出て、同じ階層の人同士で結婚し(遅い年齢が多い)、特別な地域に住み、健康志向、テレビはあまり見ないが新聞などはよく読んで情報を得ることに熱心、外国旅行に家族を連れていくのは当たり前、教育熱心、、彼ら特有のライフスタイルを維持する。
控え目に自分たち・仲間たちだけの文化を享受する。
それが問題だ!
彼らエリートたちは閉ざされた社会しか知らず、アメリカにとって何がベストかを決める際に、自分たちの特殊な生活を基準にして判断してしまう。
一方でかつて貧困層とも人種問題とも関連していわれた下層階級とは別の、白人の労働者たちの間に新しい下層階級が形成されてきた。
彼らは、結婚しない、働かない、コミュニテイに参加しない、教会に行かない。
筆者はアメリカの建国以来、アメリカを特別な(ヨーロッパと異なる)国としてきたのは、国民たちに「勤勉、正直、結婚、信仰」という4つの特徴があったからだという。
アメリカを支えてきた4つの特徴が60年代以降、白人社会の新下層階級において顕著にうしなわれてきたことを統計で示す。
多くのグラフは、ふたつの階級が60年代以降の劇的な変化をしたこと、その違いを呆れるほど明確に示す。
新上流階級にはかろうじて維持されている建国の美徳だが、その上流階級の間にも不誠実な見かけ倒しのエリートが生まれて、市民の義務の不履行、マナー、芸術、言語の卑俗化など”プロレタリアート化”(トインビー、「魂の分裂」)する恐れがある。
さらに、自分たちの慣習や価値観に対する自信を喪失しているから、常に”いい子”であろうとする『普遍的優しさの掟』とでもいうべきものに囚われてしまって人のやり方に口をさしはさまない。
したがってエリートの行動規範が社会の行動規範にならない。
新上流階級のなかには「見苦しい行い」に走る人も出てきた。
非常識なほどの豪邸、退職金、年金、報酬などを受け取る仲良しクラブが実例だ。
このままではアメリカという特別な国は崩壊する。
ヨーロッパ型の福祉国家(これも決して安泰なものではない)として生き延びるのはアメリカの死だ。
そこで筆者は新上層階級の人たちに”大覚醒”を求めるのだ。
アメリカ2012年における最も重要な本といわれ全米で喧々囂々の議論を巻き起こしたという。
アメリカ建国の美徳が失われることがアメリカ社会の崩壊につながるという指摘は、ほんとに?と訊きなおしたくなるが、ひるがえって日本の現状をみたら他人事とも思えない部分もある。
コミュニテイへの不参加、ウソのまかりとおる社会、見苦しいエリート、、、うん、あるある。
かつては子供を地域社会全体で育てる空気があったのに、今は悪いことをする子を見ても知らん顔をするようになった、それどころか注意すると逆切れする親が多い、なんてまるで日本のことのようだ。
最大・最重要な問題はエリートたちがIQは高くても、自分たちの安穏を追い求め、社会貢献をしようという使命感がなくなったこと。
日米双方の深刻な病だ。
橘 明美 訳
草思社
この日以来、いわゆる60年代、文化変容の時代が始まった。
今のアメリカを動かしているのはこの人たち。
60年代以前に見られた苦学力行のエリートたちとは出自が違うのだ。
本書はまず新上流階級が形成された要因を分析する。
知能指数が高い、選ばれた特別な大学(ハーヴァードなど)を出て、同じ階層の人同士で結婚し(遅い年齢が多い)、特別な地域に住み、健康志向、テレビはあまり見ないが新聞などはよく読んで情報を得ることに熱心、外国旅行に家族を連れていくのは当たり前、教育熱心、、彼ら特有のライフスタイルを維持する。
控え目に自分たち・仲間たちだけの文化を享受する。
それが問題だ!
彼らエリートたちは閉ざされた社会しか知らず、アメリカにとって何がベストかを決める際に、自分たちの特殊な生活を基準にして判断してしまう。
一方でかつて貧困層とも人種問題とも関連していわれた下層階級とは別の、白人の労働者たちの間に新しい下層階級が形成されてきた。
彼らは、結婚しない、働かない、コミュニテイに参加しない、教会に行かない。
アメリカを支えてきた4つの特徴が60年代以降、白人社会の新下層階級において顕著にうしなわれてきたことを統計で示す。
多くのグラフは、ふたつの階級が60年代以降の劇的な変化をしたこと、その違いを呆れるほど明確に示す。
新上流階級にはかろうじて維持されている建国の美徳だが、その上流階級の間にも不誠実な見かけ倒しのエリートが生まれて、市民の義務の不履行、マナー、芸術、言語の卑俗化など”プロレタリアート化”(トインビー、「魂の分裂」)する恐れがある。
さらに、自分たちの慣習や価値観に対する自信を喪失しているから、常に”いい子”であろうとする『普遍的優しさの掟』とでもいうべきものに囚われてしまって人のやり方に口をさしはさまない。
したがってエリートの行動規範が社会の行動規範にならない。
新上流階級のなかには「見苦しい行い」に走る人も出てきた。
非常識なほどの豪邸、退職金、年金、報酬などを受け取る仲良しクラブが実例だ。
ヨーロッパ型の福祉国家(これも決して安泰なものではない)として生き延びるのはアメリカの死だ。
そこで筆者は新上層階級の人たちに”大覚醒”を求めるのだ。
あなたがたの真の利益は何なのか、それを新上流階級の人々に早く気づいてほしい。数々の古い教えが、充実した人生は周囲の人々とのかかわりから生まれるのだと説いている。リバタリアンの論客による刺激的な問題提起。
豊かな暮らしは快適だが、よくよく考えてみると、もっと実りのある、そしてもっと愉快な生き方がある。それは山あり谷ありの人生を送ることであり、また山あり谷ありの人生を送っている人々のなかに自分も身を置くことである。
アメリカ2012年における最も重要な本といわれ全米で喧々囂々の議論を巻き起こしたという。
コミュニテイへの不参加、ウソのまかりとおる社会、見苦しいエリート、、、うん、あるある。
かつては子供を地域社会全体で育てる空気があったのに、今は悪いことをする子を見ても知らん顔をするようになった、それどころか注意すると逆切れする親が多い、なんてまるで日本のことのようだ。
最大・最重要な問題はエリートたちがIQは高くても、自分たちの安穏を追い求め、社会貢献をしようという使命感がなくなったこと。
日米双方の深刻な病だ。
橘 明美 訳
草思社
Commented
by
kuukau at 2013-04-30 15:58
上流階級って言葉がすでにアメリカやね。
欧州では貴族階級と労働者階級に分かれてるけれど、アメリカには貴族がいないもん(^^);
全員移民(笑)
欧州では貴族階級と労働者階級に分かれてるけれど、アメリカには貴族がいないもん(^^);
全員移民(笑)
0
Commented
by
たま
at 2013-04-30 19:01
x
亀戸天神さまのフジ?
Commented
by
saheizi-inokori at 2013-04-30 21:00
空子さん、そのアメリカが腐敗堕落してブッシュ、ケネディ、クリントンなどを貴族のように崇めはじめたのです。
全員移民の原点に戻らなきゃ!
全員移民の原点に戻らなきゃ!
Commented
by
saheizi-inokori at 2013-04-30 21:01
たまさん、駒沢公園です。
私の鼻が劣化しているのか、あまりいい香りはしなかったのが残念!
私の鼻が劣化しているのか、あまりいい香りはしなかったのが残念!
Commented
by
c-khan7 at 2013-05-02 11:44
Commented
by
saheizi-inokori at 2013-05-02 12:59
c-khan7 さん、人間は滅びにむかっていますから。
それは万物にいえることですが。
それは万物にいえることですが。
by saheizi-inokori
| 2013-04-30 12:24
| 今週の1冊、又は2・3冊
|
Trackback
|
Comments(6)