原発の若狭に故郷はあったのか? 水上勉「故郷」
2013年 04月 20日
たった二人の若者(たぶん)に全米が揺らいでいる。
海外ニュースを見ていると兄弟の父や叔父の写真やコメント、被害者の遺族のインタビューなどが素早く報道(BBCでも)されて酒々井のアウトレット開業のことで燥いでいる日本はゆでガエルだなあと思う。
アメリカで起きたことが明日にでも日本に起きないという保証は皆無だ。
G20で日本の金融緩和が了解されたと燥ぐ麻生、KBSは新興国の危惧・反発を伝えているのに。
なにがアジアのリーダーだ。
敦賀への旅のついでに寄った小浜に魅せられて、小浜出身のアナーキスト・「古河力作の生涯」を読んだら、その作者・水上勉が自分の故郷に重ねて書いたという小説を読みたくなった。
アメリカから母を尋ねて若狭の冬の浦にやってきたキャシー。
英語をしゃべれない駐在夫婦、カタコトだけの和尚、少しはしゃべれる郵便配達の男を中心に村人が親身になって親子の再会を期す。
キャシーの母は冬の浦の出身、アメリカ人と結婚して渡米したものの夫の浮気で離婚、単身日本に帰ったまま行方が知れないのだ。
その前に、すっかり気難しくなっている祖父が青い目の孫を受け入れるかが心配のタネ。
夫と帰国する飛行機のなかでキャシーと知り合った富美子はキャシーの話を聞いて他人事と思わず駐在宛の手紙を書き、その後も母子再会に立ち会う。
そこまでの、まるで良寛たちの集まりのようなヌクトイ人々のありよう・会話はこの世のものであって夢のようでもあり読んでいる男の涙腺を刺激する。
キャシーの母、その家族の物語は数奇なようで、その内実はどこにでもある人間の物語、死にもの狂いに生きた庶民の物語なのだ。
富美子も若狭出身、夫は丹後、二人ともやはり貧しい村に安住するゆとりがないまま追われるようにして街に出て苦労の挙句にアメリカで料理人としてなんとか安定した暮らしを得たのだ。
二人はアメリカでなく日本で死にたいと考えている。
二人が自分たちの故郷をめぐってみると「故郷には考えていた以上にさまざまな思い出があることがわかってくる」のだ。
かつて大きいと思ったものが小さかったり「大きな家ほど、内へ入ると淋しい」と思ったりはするけれど。
夫はなかなか同意しない。
(小浜線車内から、あの山の名前なんていうの?尋ねたけれど女子高生知らなかった。「嶺南」「嶺北」というときの「嶺」かな、そうです。であるならば山中峠・木ノ芽峠・栃ノ木峠の稜線)
原発が村人の生活を救った反面、その村にはなにかかつてのような明るさとか人々の睦まじさがなくなっている。
昭和62年、もんじゅやふげん、東海村の事故が起きる前の作品。
現在を予言している。
それもあるけれど失われた・喪われつつある日本の心の原風景をシミジミと描く”風俗小説”だ。
集英社文庫
さっきゴンチチの番組でやっていた懐かしい曲。
海外ニュースを見ていると兄弟の父や叔父の写真やコメント、被害者の遺族のインタビューなどが素早く報道(BBCでも)されて酒々井のアウトレット開業のことで燥いでいる日本はゆでガエルだなあと思う。
アメリカで起きたことが明日にでも日本に起きないという保証は皆無だ。
G20で日本の金融緩和が了解されたと燥ぐ麻生、KBSは新興国の危惧・反発を伝えているのに。
なにがアジアのリーダーだ。
英語をしゃべれない駐在夫婦、カタコトだけの和尚、少しはしゃべれる郵便配達の男を中心に村人が親身になって親子の再会を期す。
キャシーの母は冬の浦の出身、アメリカ人と結婚して渡米したものの夫の浮気で離婚、単身日本に帰ったまま行方が知れないのだ。
その前に、すっかり気難しくなっている祖父が青い目の孫を受け入れるかが心配のタネ。
夫と帰国する飛行機のなかでキャシーと知り合った富美子はキャシーの話を聞いて他人事と思わず駐在宛の手紙を書き、その後も母子再会に立ち会う。
そこまでの、まるで良寛たちの集まりのようなヌクトイ人々のありよう・会話はこの世のものであって夢のようでもあり読んでいる男の涙腺を刺激する。
キャシーの母、その家族の物語は数奇なようで、その内実はどこにでもある人間の物語、死にもの狂いに生きた庶民の物語なのだ。
二人はアメリカでなく日本で死にたいと考えている。
二人が自分たちの故郷をめぐってみると「故郷には考えていた以上にさまざまな思い出があることがわかってくる」のだ。
かつて大きいと思ったものが小さかったり「大きな家ほど、内へ入ると淋しい」と思ったりはするけれど。
人はみな、生まれ故郷の土に帰るのです。実家の梅林の片隅に家を建てて母を大切に見守りつつ余生を送りたいと富美子は思うのだが、、
夫はなかなか同意しない。
若狭に原発がなければなァ長男はもっと強硬だ。
あれは文明のお化けだよ。何も年とってからお化けの棺桶のそばへ眠りにゆかなくてもいいじゃないか。昔、チエルノブイリのあと、高校生だった長男もソ連や東欧の産物に神経質になったなあ(それをヤヤ冷やかした親が俺だった)。
原発が村人の生活を救った反面、その村にはなにかかつてのような明るさとか人々の睦まじさがなくなっている。
誘致と決めただけで漁業権や山林の売却で、もちなれない大金が入りこむんですものね。家の様子も可笑しくなって当り前よ。盆、暮れに帰りもしなかった弟さんらが都会をたたんで帰ってくる。逆に原発を嫌って出ていく、娘が大きくなると都会へ出ていく人もいるのだ。
昭和62年、もんじゅやふげん、東海村の事故が起きる前の作品。
現在を予言している。
それもあるけれど失われた・喪われつつある日本の心の原風景をシミジミと描く”風俗小説”だ。
集英社文庫
さっきゴンチチの番組でやっていた懐かしい曲。
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kuukau at 2013-04-20 11:16
わ、懐かしい。
今みたらひょっこりひょうたん島の博士君そっくりw
今みたらひょっこりひょうたん島の博士君そっくりw
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蛸
at 2013-04-20 18:15
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saheizi-inokori at 2013-04-20 21:01
空子さん、この子がね?
私は隣の家のテレビの音だけ聞いてましたよ^^。
私は隣の家のテレビの音だけ聞いてましたよ^^。
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saheizi-inokori at 2013-04-20 21:02
蛸さん、開発ってなんだろうと思います。
そこに住んでいた人が幸せにならない開発っておかしいと思いますよ。
そこに住んでいた人が幸せにならない開発っておかしいと思いますよ。
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haru_rara at 2013-04-21 10:11
小浜線に乗りたいなあ。雪を頂いた山の稜線、その麓には田畑も広がっているのでしょう。
美しく素朴な場所にばかり、巨大なバケモノが持ち込まれ、かけがえのないものが失われてしまいました。引き換えに得たものはいったいなんだったのでしょうか。
水上勉の「故郷」、ずいぶん前に読んで忘れているところも。再読したくなりました。
美しく素朴な場所にばかり、巨大なバケモノが持ち込まれ、かけがえのないものが失われてしまいました。引き換えに得たものはいったいなんだったのでしょうか。
水上勉の「故郷」、ずいぶん前に読んで忘れているところも。再読したくなりました。
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saheizi-inokori at 2013-04-21 11:37
ハルさん、私はまた訪問したくなりました。
この小説、長いけれど読んでいる間ほのぼのと心が温かくなりました。
この小説、長いけれど読んでいる間ほのぼのと心が温かくなりました。
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c-khan7 at 2013-04-21 23:05
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saheizi-inokori at 2013-04-22 09:39
c-khan7さん、日本にも火種はありますよ、油断大敵、といっても用心のしようがないかも。
by saheizi-inokori
| 2013-04-20 11:01
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(8)