咲いた咲いた、、どの花みてもきれいだな 日高敏隆 「春の数え方」

家は住んで快適であってほしい。田畑からはよけいな草や虫を追いだして、作物を作らねばならない。これは人間のロジック(論理)である。自然にやさしくなどしてはいられない。
けれど、その家や田畑のまわりには自然がある。そこでは自然は、自然のロジックに従って、互いに競争しあっている。競争に勝とうとして、人間の家や田畑へ入り込んでくる草木や虫もいるであろう。人間はそれらを、人間のロジックで追いだそうとする。しかし、自然はまた、自然のロジックで巻き返してくる。
このように、人間のロジックと自然のロジックがせめぎ合っている場を、ぼくは人里と呼ぶことにしている。こういう人里では、人間は自然のどれかにやさしくしているわけではないが、自然のロジックは自然のロジックにままにさせている。そこに調和はないのだが、人間はあえてそこに調和を作りだそうともせず、あえてかき乱そうともしていない。このような状態が自然と人間の共生なのかもしれないという気がしている。
日高敏隆の言葉。載っているのは、↓。
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2009年に亡くなった日本の動物行動学の草分けのエッセイ集。
椎名誠が新聞で薦めていた、彼の推薦は歩留まりがいいのだ。
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毎日サンチと歩いていると日々時々刻々と言ってもいいほど、いろんな草木が変化しているのが見えて嬉しかったり驚いたり、およそ退屈をするということがない。
こういうことはずっと俺のまわりにあったことなのに、それに気がつかないでいたとはなんという損失だったろう。
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せめて残された日々を精一杯楽しんで生きたい。
とはいえ、性ズボラだから草花や動物たちを仔細に観察してその本質に迫るようなことは出来ない。
せいぜいが
なんで花たちは色とりどりなのだろう?
紫の花は黄色の花と何が違うのだろう?
といったスコブル幼い疑問を抱いて、しかもそれを書物にあたって調べるということもしていない。
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日高さんは子供のころからそういう疑問をそのままにせず、ず~っと大事にして、研究し続けてきたから世界的な学者になった。
もっとも疑問を持って大事にしたからと言ってだれでも大学者になれるわけではない。
柔軟な心とか鋭い観察・推理と言ったものが必要なのだろう。
そうそう、忍耐・継続する力も。

そんなことが本書を読んでいるとよくわかる。
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草花や昆虫が春になって咲きはじめたり孵化するのはどういう仕組みなのか。
生きものたちは概日時計とよばれる概ね一日をはかる時計をもっているそうだ。
概年時計も。
でもそれがどんな仕組みで動く時計なのか、どうやって合わせる時計なのか、まだ謎に包まれたままである。
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椎名は本書の解説を書いていた。
そのさいごに
この『春の数え方』は動物や虫や植物への興味だけでなく、人間として生きることの喜びを確認できるすぐれた人生の思考の書
であることを確信していると書いている。

そうです、”植物や動物たちのことを考えている人間の思考”、肩ひじ張らないユーモアとやさしいまなざしの書です。
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予算が余ったのかこんな↑ことをして自然らしくして見せるのは日高さんのいう自然との共生の真反対の行為だ。

新潮文庫
Commented by ジュ at 2013-04-15 10:46 x
素敵なお話ありがとうございます(^-^)
最後のFotoのご感想愉快・・・。
でもホントに除草剤などを使っている人たとも沢山いられることに悲しくなります。人間のロジックだけでいる人がなんて多いことか・・・。
Commented by kuukau at 2013-04-15 11:28
枯れ葉剤を作った会社モンサントが種の改良をして自然をコントロールし、世界制覇を目論んでます。
この美しい地球を破壊するのは人間やね。罪深い種です。
Commented by hanamomo06 at 2013-04-15 12:10
>そうです、”植物や動物たちのことを考えている人間の思考”、肩ひじ張らないユーモアとやさしいまなざしの書です。
saheiziさんのこの感想文がいいなあ~。
これでまたこの本が読みたくなってしまいます。
Commented by koro49 at 2013-04-15 16:48
>予算が余ったのかこんな↑ことをして自然らしくして見せるのは日高さんのいう自然との共生の真反対の行為だ。
その通り。
原発立地自治体には、こんなのが多いと思われ。
この本読みたいな。

Commented by saheizi-inokori at 2013-04-15 18:00
ジュさん、もう自然は滅びるばかりなのでしょうか。
子供や孫たちが可哀そうです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-15 18:01
空子さん、過剰消費過剰な欲望、人間の原罪ですかね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-15 18:02
hanamomo06さん、お薦めですよ。
ユーモアというのはやさしさかもしれないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-15 18:03
koro49さん、原発には人間の過剰な欲望が表出してますね。
Commented by sweetmitsuki at 2013-04-15 19:38
私も最初のうちは、自然との共存とかそんなことを考えてはいたのですが、今考えてることは
「いかにしてモトを取るか」
「買うより安い手はないか」
などと、欲得と算段のことしか考えてません。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-15 21:43
sweetmitsukさん、「買うより安い手はないか」がなぜ共存と反するのでしょうか?
算段こそ知恵ではないですか。
Commented by marsha at 2013-04-16 03:58 x
予算が余っても街中に変てこな造形を作って貰いたくありませんね。
悪趣味以外の何物でもないのに。
こんなもの作ってセンスが良いつもりなんでしょうかねー。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-16 13:42
marsha さん、ったくです。
喉から手が出るほどお金が欲しい人たちもいるでしょうにね。
区役所の縦割りの弊害でもあります。
Commented by tona at 2013-04-16 20:28 x
椎名さんの本が好きなので、彼推薦だそうで是非読みたく明日借りてきます。「おどろきの中国」も予約しました。
いろいろな本をご紹介いただきありがとうございます。
佐平次さんがお元気で嬉しい!
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-16 21:37
tona さん、たくさん本が出ますから、だれか信頼できる案内人が必要ですね。
椎名は有難いです^^。
元気、ヤセ、ですがね。
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by saheizi-inokori | 2013-04-15 10:27 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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