今夜も又 おばあちゃん甘えるよ

ちょっと寂しいおばあちゃんの歌

今夜も又 おばあちゃん甘えるよ_e0016828_1351994.jpg

背にあたる湯婆のぬくみに寝とぼけて抱き寝の孫と思ふしばしば

あとに残り三とせ以上も生きるのは薄情者よと言ひしよ夫が

旅二十日十八通のたより来ぬ有難きかな娘のこころばえ

一生に殿御一人と決められし古き女と吾は生き来ぬ

菊の苑に召さるるといふ記事があり思ひ出づるよ我のその日を


祖母の夫は陸軍大学を出なかったから大佐で終わったが人格円満かつ謹厳な男だったという。俺は引揚げたあと本家に居候しているときに爺さんと少し”付き合った”が、当時4歳くらいだった俺に弓を作ってくれた。その弓を喜んで引いていたら「危ない」とえらく怒られて廊下の上の長押にしまわれてしまったことを覚えている。子供心に理不尽なジジイだと思ったなあ。

今夜も又 おばあちゃん甘えるよ_e0016828_1373230.jpg
祖母は軍人の妻として懐剣をいつも身の回りから離さなかった。万一の場合は自刃するつもりだったそうだ。これも理不尽な話だけれどその話しを聞いたときは「ふーん、軍人って大変なんだ」としか思わなかった。万一の場合という意味も分からなかったのだ。
菊の苑、云々は俺の叔父(祖母の娘の旦那)のことだろう。嬉しかっただろうし自分の晴れの日が懐かしかったのだね。これも俺には全く、俺なら断わっちゃう。
Commented by みい at 2005-11-29 14:46 x
ちょっと寂しいけれど、なんだか温もりの伝わるいいおうたです。うたの背景にあるものは、暖かいです。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-29 16:23
ありがとう、みいさん。歌っていいですね。私は創れないけれど。
私の「梟仲間」に登録させていただいた「雪の朝ぼくは突然歌いたくなった」も、毎日短歌です。
Commented by pompu at 2005-11-29 20:14 x
短い歌の中に、はっきりと色々な情景が浮かんできます。それに、何とも繊細な愛がありますね。いいなあ・・・余計なことを削ぎ取った後の完成度の高さ。日本人って凄い!
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-29 23:22
pompuさん、こんばんは。いいおばあさんでしたよ。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2005-11-29 01:44 | わが母と祖母の遺したまいしうた | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31