中国を嫌いな人一読すべし 橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司「おどろきの中国」

昨日はサンチを獣医に連れていって狂犬病予防の注射などをした。
診察室の台に乗せたとたん、震えだして俺にしがみつく。
「お父さん」と病院の人に呼ばれるけれどほんとに親の気分也。
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ときどき行く居酒屋で知らない女性(女性の常連が多い店なのだ)と犬の話になった。
なにをしゃべったか忘れたが、隣に座っていた、やはり女性常連さんが、「見かけがとっつきにくかったけれど、犬の話を聞いていて見直した」と言って、それからちょくちょく話をするようになった。
サンチはその場にいなくても助けてくれるのだ。
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「ふしぎなキリスト教」の橋爪・大澤コンビに宮台が参加した鼎談。
のっけから「中国は国民国家なのか?中国のアイデンティティとはなにか?」などとわかっているようでわかっていない核心にふれる疑問を取り上げる。

中国では軍人がトップにつかないのは何故だろうか?
あれだけ広大で多民族を統合することができるのは何故だろうか?

主として、橋爪が答える。
中国において漢字が決定的な役割を果たしていることについて、
中国はEUみたいなものだったという点が大事です。春秋戦国時代の、越とか楚とか秦とかは、お互いに異なる民族だと考えたほうがいい。、、(略)外国人みたいに言葉が通じない人びとばかりのとき、表音文字を使うと、各言語を表記できる。でも音がわかったところで、意味はわからない。中国はこういう戦略をとらずに、絵みたいな文字を作った。絵は、概念をかたどったものだから、具体的なものなら、言葉がちがっても意味が分かる。抽象的なものだと困るんだけど、具体的なものの組み合わせでなんとか表わす。そしてこの文字を、それぞれの言語の読み方で読むことにした。漢民族は、漢字を使う人々であり、小麦を作り、城壁で都市国家をつくる人々である。

漢字を使えるのはほんのひと握りの人々に限られる。
漢字の数は概念の数だけあるわけだから、とても多い。
そこで大多数の人びとは文字が読めないままになって、大きな情報ギャップが生まれる。
これが儒教の、ひと握りの官僚/大多数の農民、という構図として固定化する。農民は、反抗しようにもそもそも、団結できない。少し遠方の人びとは、言葉が通じないから。
言語をもとに文字が作られるのと逆に漢字を中心に言語が作られた側面があるのだというのだ。

漢字をもとにカナを発明した日本とは似て非なる文化にならざるを得ないのだろう。
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俺の理解度が低いせいもあって要領よく紹介できない。
あっちこっち”おどろき”の発言だらけ、付箋だらけ。
中国問題に関心のある人はぜひ一読されることをお勧めします。

目次の紹介。
第1部「中国とはそもそも何か」
第2部「近代中国と毛沢東の謎」
第3部「日中の歴史問題をどう考えるか」
第4部「中国のいま・日本のこれから」
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記憶に残った発言。

日中の歴史認識のギャップは中国の側に立って日本の”侵略”を考えてみればよくわかる。
中国(朝鮮も)にとって日本は辺境の国、なにかと教えてやった国、それが「中国を助ける」と称して実際は侵略し途中で略奪暴行を働いてきた、何よりそれが許せない。
同じく辺境の台湾が日本の支配を受け入れたのとはそこが違う。
相手がどのように世界を見ているか(認知地図)をつかむことが外交や異文化理解の基本なのに、日本人は相手も自分と同じように世界を見ていると思いこむ。

日本は日中戦争に深入りしたのは「意図せざる結果」であって、軍人トップたちも自分がなんのために中国大陸奥深く進出しているのかが明確ではなかった(今でも)。
そのことが、今に至るも心底からの”反省”ができない理由ではないか。
それは財務官僚が個人としては増税が国益に反することを理解していながら省益のために増税を推進しているのに似通っている。
政策の優先順位が明らかでないのが日本の特徴。
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トップ・リーダーは優秀でなければならない=中国、リーダーはお神輿で良い=日本。
責任を取るものがいない日本と革命・粛清が行われる中国。

「社会主義市場経済」とは何か?
中国は21世紀の覇権国になるか(なりそうもない)。
日本は米中関係の附属物にすぎない。
台湾が自主的に中国と統合すると意思決定したらアメリカは反対しえない。
北朝鮮問題の最終解決は北朝鮮の民主化だが、そのために日本も難民の受け入れなどリスクを引き受けるべきだ。

中国=毛沢東の権力は理想主義的であるから理想のためには「殺す」ことも道徳に背馳しない。
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2010年の尖閣諸島、中国漁船逮捕事件について。
宮台が、それまで日中間での暗黙のルールは「逮捕・起訴」でなくて「拿捕・強制送還」とすることになっていた(自民党や小泉政権でも)のに、それが民主党政権に受け継がれなかった。
それで前原国交大臣が「逮捕・送検」を指示した。
前原大臣は日中間の協定の歴史をまったく知らなかったのだ。
宮台はその時、驚倒して前原に面会を求め、秘書たちに会って話をしてそういう感触を得たという。

そのあと仙石官房長官が「日本は粛々と国内法に従って対処している。ボールは中国側にある」との発言は中国からするととんでもない間違いで、日本が協定を破ったんだから、説明責任は日本側にある。
つまり「終始一貫して、ボールは日本のコートにあり続けている」とコメントした中国報道官の言うとおりだったのだ。

やれやれ、ではないか。
居酒屋のお隣さんのように見かけだけじゃなくて中身もよく見て接して欲しいものだ。
Commented by kuukau at 2013-04-13 13:47
一つ確かなことは中国に何かが起これば世界中が巻き込まれるってことやね。なって欲しいような欲しくないような・・
Commented by 豆ママ at 2013-04-13 18:29 x
サンちゃん(たぶん豆太も)は、一流の外交官ですね。

狂犬病予防といえば、豆太の場合は注射より、おチリでの検温がショックのようです。目が真ん丸になります。「ギャ~~」って悲鳴が聞こえてきそうです。可哀想だけど面白い、いえいえ可愛い。
Commented by hanamomo06 at 2013-04-13 20:41
中国の変化 特にあの国の生活のレベルが向上したことで世界中が動かされているような気がします。
だけど新幹線を作ってもすぐに脱線、野菜の作り方なんてどう指導しても絶対に駄目だと言う話も聞いたことがあります。
膨張剤のようなものを与えてスイカが爆発する国ですからね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-13 23:33
空子さん、日本は中国の無事を祈るしかありませんよ。
二千年の昔から。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-13 23:36
豆ママ さん、サンチは案外注射とか検温のときは静かです。
その前、先生と話している間がつらいようです。
私も手術よりその前の方がドキドキしましたから同じです。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-13 23:40
hanamomo06 さん、記事に書いたように中国の一般人民とエリートの間には隔絶があるようです。
日本人は一般人民のレベルをみていろいろいうのですが、エリートたちのレベルは日本人にはかなわないとおもいます。
いや、一般レベルでも負けるかもしれない。
日本人の政治意識なんて噴飯ものですから。
Commented by みい at 2013-04-14 10:54 x
サンチ君のおとうさんかあ~そうですよね。
動物と暮らしている人は皆親の気持ちです^^。
うちのルナも、台の上にのると、固まって動きません(笑)

タンポポとサンチ君、いいね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-14 11:25
みいさん、サンチは動かないのではなくて立ち上がって私にしがみつくのです^^。
Commented by ほめ・く at 2013-04-14 11:31 x
支那事変における日本軍のスローガンは「暴支膺懲」、つまり生意気な支那を懲らしめてやるというのが目的でした。
懲らしめる為には相当乱暴なことをしたのは想像に難くない。
イジメや暴力でもそうですが、加害者は直ぐに忘れますが、被害者はいつまでも憶えています。日中関係ではそういう視点が大事でしょう。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-14 11:48
ほめ・く さん、「懲らしめる」って中国の何を懲らしめようとしたのか。
対ソ戦に際して後顧の憂いを失くしておこうとチョット「引っ込んでいてくれ」くらいな気持ちだったのが退くに退けなくなって、、そもそもはっきり戦略目標がないからですね。
松井将軍なども『上海を落としてみせる』なんて餓鬼大将みたいに張り切ってしまう。
盧溝橋から日華事変に拡大していく過程の詳細な検証が未だになされないままに、戦後生まれの餓鬼たちが声高に、現代版「暴支膺懲」を叫び始めているようです。
Commented by c-khan7 at 2013-04-14 14:19
しばらくご無沙汰している間に、ブログのタイトルがリニューアルされてますね。
軍人は戦うことが生業なので、何かと理由をつけて戦いの場を求めてしまうのでしょう。その裏で誰かと誰かが儲かって、その他の人が命を落とす。今も昔もその構図は変わらないと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-14 18:35
c-khan7さん、憲法改悪、軍隊創設はその意味でもよくないですね。
Commented by maru33340 at 2013-04-16 04:36
これはやはり面白そうな本ですね。
自分だけいかに中国のこと知らなかったかと愕然としました。
読んでみたいと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-16 13:44
maru33340さん、ほんとに「おどろくべき」話が多かったです。
多くの日本人に読んで欲しいものです。
Commented by tocotoco-o3po at 2013-04-16 20:12
こんばんはです~。サンちゃんタンポポ畑でとってもかわいいですね(^-^)/
注射の時期ですね!うちの健太はどうだったかな?今度健太にきいてみます(笑

いつも遊びに来てくださってありがとうございます~(^-^)/
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-16 21:35
tocotoco-o3poさん、サンチの目玉はすきとおって茶色なんです。
だからまぶしさも違うのかなと思っています。
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by saheizi-inokori | 2013-04-13 12:29 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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