《かくあるべし》が強すぎる? 奥田英朗 「ウランバーナの森」(講談社文庫)
2005年 11月 27日
ジョン・レノンが疾風怒濤のビートルズ時代を過ぎてヨーコとの結婚でジュニアも誕生、落ち着いた新しい人生に目覚める。77年頃、音楽活動を停止して”隠遁期”を軽井沢などで過ごした事実を下敷きに書いた小説。大鷹俊一は、あとがきでフアンが読んでも違和感を感じないほどジョンを良く勉強して上手に構築された小説という。
ジョンは、家庭を大事にすることなどの価値観に安らぎを感じる一方で、過去のトラウマに悩まされる。青年時代に人を殺したらしい、友達の親に言ってしまったひどい言葉、、誰にもあるはずの思い出すと逃げ出したくなるような思い出。それにもまして母親の嫌な思い出。
精神的な悩みとともに、肉体的には”便秘”に悩む。便秘と戦う過程で過去のトラウマと戦う。どうやらそれは同じ戦いだったのかも。
ジョンが治癒していく過程でいくつかの大事な言葉がある。そのひとつが
人間にしろ、動物にしろ、生きていくうえでしなければならないことなど実はひとつもない・・(略)権利はある。しかし義務はない。してはいけないことがいくつか存在するだけで、しなければならないことは何もないのです。あなたは《かくあるべし》という気持ちが強すぎる。
この言葉にはホッとさせられる。同時に、だからこそ、ナニをどうして行くかが大事なんだな、自分で考えることなのだな、と再び《如何にあるべきか》と考えてしまう。しょうがないんだよな。
奥田の初期の作品だ。この”フントウキ”にはふたつの方向がある。ユーモア作家とシリアスな物語作家との。ユーモア作家として花開いたのが「空中ブランコ」や「イン・ザ・プール」(もっとも俺は他の作品を読んでいないのだが。)奥田のいろんな要素の萌芽がここにあると思う。
ジョン・レノンがオノ・ヨーコと息子ショーンとともに軽井沢に避暑に来ていた「充電期」を下敷きにした作品です。ジョンへの思いが込められた作者デビュー作。★★★★☆その... more
同じところにホッとされたようで、うれしいわ♪
ブログのおもしろさって、こうやって感情を共有できる楽しみもあるんですね。
確かに、「かくあるべし」の見方をちょっと変えてみると、新しい側面が見えてくるということもあるよな~なんて思いました。
ま、それでも譲れないものもあるけどね。
何か大きなつながりというか、光というか、そんなものを感じさせる作品でした。
大人のなるということは運命に優しくなれるということだという言葉が、とても印象的でした。
ほかの奥田作品、もし機会があったらヨロシクねっ♪
(いや、私が言うことでもないけれど…。*^_^*)