越前三日間の通奏低音は”出会いの不思議” 司馬遼太郎「越前の諸道」
2013年 03月 12日
ひょっとした出会いが次の出会いにつながり、喜びとなり新しい発見や進歩にもつながっていく。
出会いこそ歴史の原動力かもしれない。
司馬遼太郎は陶器・古越前の由来について思いをめぐらす。
愛知の常滑から越前丹生山地に伝わったというのだ。
(えちぜん鉄道・福井駅)
奈良三彩や平安朝の緑釉のように貴族や社寺で用いられた陶器と違って、”膚が不器量で、働き者の農夫のように頑丈で、硬さもすわりもしっかりしていて”
すでに古越前(こえちぜん)を作る人がいなくなったと思っていたら、たった一人福井県の山中で古越前を作り続ける重良右衛門さんに会ったときの記述は感動的だ。
重良右衛門さんは司馬の目の前で輪積みという轆轤を使わないで器を作るところを見せてくれる。
ほんの十五分ほどのあいだに、人間が二人ほど中にしゃがめるほどの器をつくった重良右衛門さんが、こちらをむいた。
そうして、ある心、タイプとでもいうべき何かを伝える。
それが、延々と細々と現代に伝わり続けている。
(永平寺前の商店街)
二泊三日の越前の旅を振り返ると、道中で読んだ上の文章のことをどうしても引いておきたくなる。
偶然出会った秋田の人との交流が奥さまとのお付き合いに広がり、ついには奥さまの弟がやっているという敦賀のイタリアンレストランに行こうということに発展。
弟さんご夫妻の父上が作っていらっしゃる仏像を拝見し、その後、単にこのまま帰るのはもったいないという、ただそれだけのことで、ほとんど知識のなかった小浜に行って、そこが古い仏像や寺の宝庫であることを知った。
(福井市内。右近さんの一木彫り)
(86歳の今も毎日鑿をもつ。
夜を徹して彫ることもあるとおっしゃる)
折しも、国中は3・11で失った絆と新たな絆のことを語っていた。
俺は千年を超える時の流れの中でじっと立ち続けて人々の苦しみや悩みを受け止めてきた仏たちに手を合せてきた。
1920年~22年、ポーランド孤児が800人近く敦賀港から受け入れられた。
さらにかの有名な杉原千畝の「命のビザ」によって救われたユダヤ人たちも敦賀港から上陸、東洋の波止場・敦賀港は「人道の港」でもあるという。
救われた当時4才の男の子が70歳になってお礼に来た写真も展示されていた。
出会いこそ歴史の原動力かもしれない。
司馬遼太郎は陶器・古越前の由来について思いをめぐらす。
愛知の常滑から越前丹生山地に伝わったというのだ。
奈良三彩や平安朝の緑釉のように貴族や社寺で用いられた陶器と違って、”膚が不器量で、働き者の農夫のように頑丈で、硬さもすわりもしっかりしていて”
「われわれの先祖は、こういうものが好きだったのだ」という感想が、同じリズムで間断なく湧いてくると司馬は『越前の諸道』に書いている。
すでに古越前(こえちぜん)を作る人がいなくなったと思っていたら、たった一人福井県の山中で古越前を作り続ける重良右衛門さんに会ったときの記述は感動的だ。
重良右衛門さんは司馬の目の前で輪積みという轆轤を使わないで器を作るところを見せてくれる。
ほんの十五分ほどのあいだに、人間が二人ほど中にしゃがめるほどの器をつくった重良右衛門さんが、こちらをむいた。
「わかったでしょう」野を越え山を越えて尾張の人と越前の人が邂逅する。
とはいわず、目もとに笑いじわを作っただけでその意味のことを表現した。平安時代の技術が、生きてそこに動いている。重良右衛門さんは自分の仕事に充足しているようでもあり、変にさびしそうでもある。ただひとりであるということは、ときに精神を充足させるが、余人には窺えぬ孤独な思いがあるのかとも思える。
そうして、ある心、タイプとでもいうべき何かを伝える。
それが、延々と細々と現代に伝わり続けている。
二泊三日の越前の旅を振り返ると、道中で読んだ上の文章のことをどうしても引いておきたくなる。
偶然出会った秋田の人との交流が奥さまとのお付き合いに広がり、ついには奥さまの弟がやっているという敦賀のイタリアンレストランに行こうということに発展。
弟さんご夫妻の父上が作っていらっしゃる仏像を拝見し、その後、単にこのまま帰るのはもったいないという、ただそれだけのことで、ほとんど知識のなかった小浜に行って、そこが古い仏像や寺の宝庫であることを知った。
夜を徹して彫ることもあるとおっしゃる)
折しも、国中は3・11で失った絆と新たな絆のことを語っていた。
俺は千年を超える時の流れの中でじっと立ち続けて人々の苦しみや悩みを受け止めてきた仏たちに手を合せてきた。
さらにかの有名な杉原千畝の「命のビザ」によって救われたユダヤ人たちも敦賀港から上陸、東洋の波止場・敦賀港は「人道の港」でもあるという。
救われた当時4才の男の子が70歳になってお礼に来た写真も展示されていた。
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gakis-room at 2013-03-12 18:45
小浜は「海のある奈良」ともいわれるようです。それだけたくさんの古寺,仏像があるのでしょうね。
行ってみたくなりました。
行ってみたくなりました。
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at 2013-03-12 18:46
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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saheizi-inokori at 2013-03-12 19:03
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saheizi-inokori at 2013-03-12 19:03
鍵コメさん、ありがとう。
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kuukau at 2013-03-13 10:11
黒人のお医者さんがホームに座ってるのかと(汗)
なしてワニ?
なしてワニ?
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saheizi-inokori at 2013-03-13 12:01
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saheizi-inokori at 2013-03-13 21:22
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wildrose53 at 2013-03-14 10:21
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saheizi-inokori at 2013-03-14 12:24
ハルさん、もうすぐ春ですよ~^^。
by saheizi-inokori
| 2013-03-12 12:08
| 今週の1冊、又は2・3冊
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