一本筋が通っている・・ 気持ちワリイ「小泉写真集」  斎藤美奈子 「誤読日記」 (朝日新聞社)

一本筋が通っている・・ 気持ちワリイ「小泉写真集」  斎藤美奈子 「誤読日記」 (朝日新聞社)_e0016828_9224515.jpgいつもながら美奈子さんは面白い。いい加減な知ったかぶりとか、”男の常識”みたいなものを鋭くツイテ叩きのめす。根拠無き”権威”は顔色なしだ。

今回、彼女は「内容のいかんによらず無理やり」新刊書を読む。「つまらない」「役に立たない」本も無駄にならない。それは”誤読術”を身につけていれば、だそうだ。”誤読術”とは?深読み、斜め読み・・それら世の中に知られているさまざまな読み方の一歩先を行く方法。

やつし読み

自分には関係のない本だと思っても、ある立場に「なりきる」ことで楽しく読める。嫁いびりめいた本は嫁のつもりになって読む。

虫の目読み

「つまんない本だな」と思ったら、虫眼鏡で気になる部分を拡大してみる。秀逸なフレーズが目にとまり、得したような気分になる。

カウント読み

同じような言葉、同じような出来事がくり返して出てくる場合、数を数えてみる。ちょっとしたマニア気分が味わえる。

こんな調子で「見取り読み」「脱線読み」「クロスオーバー読み」・・10の方法を駆使して読んだ175冊、俺が読んだのは10冊を超えるかどうか、本屋で見てもほとんど手に取ることもない、そんな本が多い。面白おかしい紹介があっても、やはり読もうとは思わない本だ。職業とは言え美奈子さん、本当にお疲れ様でした。

紹介されている本を読むことはないだけに美奈子さんの”芸”を堪能しながら最後まで読みました。読んだ場所も完読に貢献した。すなわちトイレです。一冊分が短いから決まり良く読める。一本筋が通っているからこちらも通る。失礼!

傑作をひとつだけ紹介します。「KOiZUMi 小泉純一郎写真集」(撮影・鴨志田孝一)という破廉恥な本!(こんな本が出ていたのですね、ったく)

ビニールで包装されて立ち読みできないようになっている。
不幸中の幸いである。中身を見てしまった私は、労働意欲を失って半日寝込んだ。バスローブ姿に当てられた、のではない。このさい写真は瑣末な問題、この本の見どころは、巻頭に収められた首相自身のメッセージである
そのメッセージを全文紹介している。それは
私が総理になってから、皆さんの愛ある応援には、感動した。
に始まり
私にとり、この愛こそが原動力だ。恋は心から感動する。
そして、恋はかくも甘く、せつないものだ。
皆さんもおおいに恋をしよう。
と歌い上げ
FOREVER LOVEー愛は永遠である 
TO FIRSTLADY 小泉純一郎
で終わる。

巻末には身長・・好きな女性のタイプ等と並んで、首相自作の短歌も載っている由。

うるわしき いとしの君と デイトする 心ときめく 宵のひととき

ほほよせて 好きよなんでも あげるわよと ささやく君の 若さいとしき

シャレではすまないね。ゲーだな。紹介したのも恥ずかしい。一本筋が通っている・・ 気持ちワリイ「小泉写真集」  斎藤美奈子 「誤読日記」 (朝日新聞社)_e0016828_1014126.jpg



口直しに 池袋・「ここのつ」 こんな歌の後は、チトしょっぱめがよろしいかと
Tracked from ポンコツ山のタヌキの便り at 2005-11-26 22:57
タイトル : 斎藤美奈子『文章読本さん江』 その3
斎藤美奈子の『文章読本さん江』によりますと、子どもの作文教育において、ポスト生活綴り方として読書感想文が「次代のスタ一」となったということです。 斎藤美奈子が「読書感想文と聞いただけでゾッとする、という人も少なくないのではないかしら」と言ってますが、...... more
Tracked from ポンコツ山のタヌキの便り at 2005-11-26 22:58
タイトル : 斎藤美奈子の『誤読日記』の脱線的紹介
『紅一点論』『文章読本さん江』等の著者である斎藤美奈子の『誤読日記』(朝日新聞社、2005年7月)を読みましたので書評を書きます、と言いたいところですが、著者が同書の前書きに相当する「たのしい誤読生活のおくり方」で、「誤読は森林資源を有効に活用する、地球に...... more
Tracked from ポンコツ山のタヌキの便り at 2005-11-28 20:34
タイトル : 斎藤美奈子『文章読本さん江』その5
saheizi-inokoriさん、こんばんは、やまももです。拙文「斎藤美奈子『文章読本さん江』その4」へわざわざコメントを寄せて下さり、またそこで貴重なご質問をいただき、心から感謝いたします。 ご質問は、「『趣味は読書』でしたっけ、本の市場の薄さを書いてましたね...... more
Tracked from ポンコツ山のタヌキの便り at 2005-11-29 22:09
タイトル : ネット時代の新しい文章読本を希望
saheizi-inokoriさん、こんばんは、やまももです。 河野多恵子の「小説の秘密をめぐる十二章」(文春文庫)や村田喜代子の「名文を書かない文章講座」(葦書房)などを面白く読まれたとのことですね。私はこの2冊は未読なんですが、斎藤美奈子が『文章読本さん江』で主に...... more
Tracked from 自由の森学園図書館の本棚 at 2008-11-22 20:43
タイトル : 読書メモ『誤読日記』
切れ味の良い文章が良かったです、斎藤美奈子。この書きたい放題書きまくる、という感じが良いです。しかも切れ味抜群、どれも揚げ足取りな気もするけど爽快です。175冊の本を紹介しています(多分)。タレント本、ハウツー本、政治家の本などなど。どれも1、2ページ程度で読みやすいのがいいなぁ・・・ 自由の森学園図書館の雑誌ヴォイスでも取り上げたいなぁ・・・... more
Commented by やまもも at 2005-11-26 22:56 x
saheizi-inokori さん、初めまして、やまももと申します。

 私は斎藤美奈子の文芸評論が大好きで、出版された彼女の本はほとんど読んでいますが、特に彼女ならではの”芸”を楽しんでいます。

 彼女の『誤読日記』も購入し、大いに笑わせてもらいました。saheizi-inokori さんは、同書で紹介された本で読まれたものは「10冊を超えるかどうか」と書いておられますが、私などは5冊しかありませんでした。

 紹介本の大半は自分で購入することはまずないと思われる「珍本」なんですが、特に、「KOiZUMi 小泉純一郎写真集」には仰天させられ、ある意味で「感動した!!」って感じでした。

 私も自分のブログに『誤読日記』についてのコメントを書きましたので、トラックバックをお送りしておきます。もしご覧いただけたら光栄です。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-26 23:13
やまももさん、ようこそ!私も美奈子フアンです。「文章読本さん江」「物は言いよう」など面白かったです。よろしく。
Commented by みい at 2005-11-27 10:03 x
「小泉・・写真集」出てたのは知っていたけれど、、、
短歌?にはびっくりそして(爆)かなりはずかしい~~~
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-27 10:08
でしょう?私でもそうだもの、みいさんには毒だよ。
Commented by やまもも at 2005-11-27 13:53 x
saheizi-inokori さん、こんにちは、やまももです。

 saheizi-inokoriさんがお書きになった斎藤美奈子『誤読日記』のとても的確なコメントに共感してコメントを差し上げましたが、嬉しいことに拙ブログにコメントをいただき、さらに幾つかの文章もTBでお送りくださり、本当に心から感謝いたします。また、「梟仲間」に登録して下さり、大変光栄に思っています。こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-30 00:05
やまももさん、こんばんは。TBありがとう。わざわざひとつ記事を書いていただいて恐縮至極です。
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by saheizi-inokori | 2005-11-26 10:20 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(5) | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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