若者を見捨てる社会に未来はない  ダルデンヌ兄弟

社会の底辺で苦しみ人間性すら失っていく若者を描いた「ある子供」で今年のカンヌ映画祭パルムドール賞を受賞した(今度で2回目)映画監督のインタビューをみた。俺はあまりTVを見ないのに、たまにみるといいものにぶつかるなあ。まあ、いいものだから見続けたのか。
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監督兄弟の生まれたベルギーでも、若者たちの失業は社会問題になっていて前途に希望を見出せないまま麻薬に手を出したり非行に走るものも多い。フランスの暴動の背景にも若者の憤懣・不安があるという。番組にもベルギーの町で「全く将来に希望が見出せない。別の社会に生まれ変わって人生をやり直したい」という若者が登場する。

兄弟は語る。
年長者が仕事などを若者に教えるということは「自分の場所を若者に譲る」ということ。それなのに居座って譲ろうとしない年寄りが多い。時間に遅れてはいけない、と言うような瑣末なことばかりチエックするから本当に人間として大事なことを考えることを忘れている若者が多くなる。

社会の底辺にいる人間と向き合うのは自分の良心をみつめることだ。

人間は変われる存在だ。変わるためには自分を見つめることが必要だがその契機は”人との出会い”だ。若者という存在は常に反逆して大人になっていく。今の若者はある意味ではもっと社会に出て反逆すべきだ。そういう若者を大人が見捨てないことが大切だ。若者が見捨てられている社会には未来がない。


昨日書いた「下流社会」の問題提起もつまるところは監督の言うところと重なっていくと思う。インタビュー番組の中でもある若者が「今は親と一緒にいれるから、何とかなるけれど何時までもそういうことは望めない。そのときのことを考えると不安だ」と語る。「下流」でいいさ、と居直っておれなくなるのだ。
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「ALWAYS 3丁目の夕日」に描かれた昭和30年代、貧しくてもがんばればきっとよくなると多くの日本人が信じていた、あの社会が”既に失われた”と書いたのはそういう意味だ。”幸せなことに”そういう時代を生きてきた俺には責任があると思う。「俺はなあ、苦労してきたんだぜ」とそっくり返って居座っていてはいけないのだと思う。
Tracked from 雪の朝ぼくは突然歌いたく.. at 2005-11-25 16:25
タイトル : 051123 日々歌う
―NHK「クローズアップ現代」(051121)にダルデンヌ兄弟の出演するを観て詠める まなざしのやさしく深き映画撮るベルギー人の兄弟のゐて ダルデンヌ兄弟撮りてわが魂に深く刻まる... more
Tracked from ** Paradise .. at 2005-11-26 23:52
タイトル : 職業訓練所で木工の仕事を教えるのが好きなんだ ~ J-P..
こんにちは。晴れの休日、日曜日です。今日はDVDで観た映画について。『息子のまなざし (LE FILS/THE SON)』 (‘02年 ベルギー/フランス)オリヴィエ(オリヴィエ・グルメさん)は職業訓練所で木工の仕事を教えている。ある日、そこにフランシス(モルガン・マリンヌさん)という少年が入所してくる。彼は大工のクラスを希望したが、オリヴィエは手一杯だからと断り、フランシスは溶接のクラスに回される。オリヴィエは、元妻で再婚相手の子供を宿している マガリ(イザベラ・スパールさん)を勤め先のスタンドまで...... more
Tracked from 園長の♪のたりのたり♪な日記 at 2005-11-27 22:13
タイトル : 今 観たい映画「ある子供」
今、一番観たい映画はジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の作品で、「ある子供」(公式サイトはこちら)先日朝日新聞で対談が掲載され、NHKのクローズアップ現代でも取り上げられた。映画は今の日本の若者にもいそうな、いわゆるニートの男性が主役。フランスにもヨーロッパ各国にニートは存在する。それも驚いたが、この監督(ご兄弟ですね)が若い人達を決して否定せず、あるがままに描いていること。インタビューに答えるお二人の雰囲気は優しいおじさん。今の若い人達の状況を問題視しているけど、彼等に罪があるのではない、彼...... more
Tracked from エンタメ!ブレイク? at 2005-12-07 12:24
タイトル : ある子供
本年度カンヌで最高賞を手にした、 寸分の狂いもないリアリズム作品。 鑑賞後、温か... more
Tracked from LA SPECTATRICE at 2005-12-29 00:49
タイトル : ある子供('05)
    ?  タイトルの「子供」とは、ブリュノとソニアの間に生まれた赤ん坊ジミーのことではない。父親・ブリュノのことだ。20歳で定職につかず、仲間と盗みを働いて生計をたてている。父親の自覚はまるでなく、ソニアに乞われてもジミーを抱くことすらしない。職業斡旋... more
Tracked from Augustrait at 2006-01-08 18:08
タイトル : 【生命力】 「ある子供」 / ジャン=ピエール・ダルデ..
社会のどこにも居場所がない者たち  ベルギー東部に位置する労働者の街、スラン。鉄と石炭に恵まれた鉱山、ムーズ河の肥沃な流れは、良質な工業製品を生産する基盤だった。ベルギーを支える資本の源は、この豊かな天然資源に加え、イタリア、スペイン、トルコからの移民が貴重な労働力として生産に従事したことにある。  200年の長きにわたり、「鉄の街」スランの高炉は、製鉄所で「巨人」のごとき轟音をうならせ、鉄に絡みつく炎がコークスを熱源に熱風を舞い上げる。日に4000トンを超える銑鉄を吐き出すこの高炉を稼動できるの...... more
Tracked from soramove at 2006-01-09 18:48
タイトル : 「ある子供」ハリウッドの対極
「ある子供」★★★★ ベルギー=フランス、2005年 リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督 定職につかず、盗みを働き、 その日暮らしをしている 20歳の青年ブリュノ 彼は18歳の恋人が 生んだ子供さえも 売り払ってしまう。 人は自分の居場所を探してい...... more
Commented by そら at 2005-11-22 16:28 x
最近、同じテーマのお話が梟さんのアンテナにひっかかってくるみたいですね。今一度、考えなさいということなのかな。
私も、最近いろいろ考えることが多いです。

リンクの件、暖かいお言葉ありがとね♪
コメントが10件を越えると書き込みができなくなるようなので、
こちらで失礼。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-23 00:27
そらさん、ありがとう。そんなことも知りませんでした。7月にブログ始めたときのコメントは10件など夢のようでした。
Commented by 謎野 at 2005-11-25 16:26 x
はじめまして。
「若者を見捨てる社会に未来はない  ダルデンヌ兄弟」を拝見し、ダルデンヌ兄弟を詠った拙い短歌にTBさせていただきました。
よろしければお立ち寄り下さい。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-25 23:37
謎野 さん、いらっしゃいませ。今一番ももとめられていることは底辺の若者に対する思いですね。
Commented by 謎野 at 2005-11-26 16:01 x
saheizi-inokoriさん、ようこそ (謎野) 2005-11-26 15:59:22
「居残り佐平治」さん、さっそくお訪ねいただきありがとうございました。
「わが母と祖母の遺したまいしうた」の心根やさしき俳句と短歌を覗かせていただきま、その後、今日の記事で紹介されているわがポチ首相の「タン歌」をつい見てしまいました。
うるわしきいとしの君とデイトする心ときめく宵のひととき
ほほよせて好きよなんでもあげるわよとささやく君の若さいとしき
こんな愚劣なものを臆面もなく自分の写真集に載せてるんですか!
ほんとにゲーッです。
斉藤美奈子さんが半日寝込んだのもむべなるかな、ですね。ったく!
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-26 16:37
これが総理・総裁と言われる人かと、よしんばゴーストにしてもひどいですね。
Commented by たろ at 2005-11-26 23:52 x
初めまして。こんばんは。
弊ブログへのコメント&トラックバック、ありがとうございました。
こちらからもコメント&トラックバックのお返しを失礼致します。

僕はこの番組を観る事が出来ませんでしたので、貴ブログの記事をありがたく拝見させて頂きました。
【 若者を見捨てる社会に未来はない 】とは良いお言葉ですね。
厳しい現実でありながら暖かな視点を忘れないジャン=ピエール氏とリュック氏のダルデンヌ兄弟の監督作品と同様に、良質のTV番組であった事が良く伝わる記事でした。

また遊びに来させて頂きます。
今後ともよろしくお願い致します。
ではまた。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-27 08:24
たろさん、おはよう。よろしく。同じ問題意識の人がいると嬉しいですよ。
Commented by 園長 at 2005-11-27 22:10 x
こんばんは!
つたない私のブログへお越し頂きありがとうございます。
TBとコメントのおかえしさせて頂きますね!

娘の冷めた言葉にいつも悲しさを覚えつつ、
もしかして、その責任は私に?と狼狽しつつ、
毎日過ごしておりますと、
お二人の「若者を見捨てる・・・」と言う言葉には、
ものすごい重みを感じます。
もちろん、娘を見捨ててなどいませんが・・・。
この頃の子ども達を見ていると何かえもいわれぬ
不安を覚えます。なんとかしなきゃ!と思います。
ブログにも時々書いていますが、そんな気持ちもあって、
子ども劇場の活動に参加しています。

また、遊びに来ますね!よろしくです。
Commented by ジュ at 2013-04-08 10:17 x
今もまったく変わりないですねー!大変な人間社会・・・。2013年4月
Commented by saheizi-inokori at 2013-04-09 09:50
ジュさん、変わらないどころかひどくなっているのではないでしょうか。
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by saheizi-inokori | 2005-11-21 20:59 | よしなしごと | Trackback(7) | Comments(11)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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