堅固に思想的武装をしよう だが難解すぎる! 絓秀実「反原発の思想史」

脱原発、反原発、今度の選挙で投票先を決める重要な論点だ。
だが、インチキに気をつけなければならない。
現在のフクシマの惨状を見たら、ほとんどの人が反原発、少なくとも脱原発依存という。
権力奪取を大同とする連中にとっては脱原発も原発推進も”小異”、言葉のフアッションみたいなものかもしれない。

筆者↓によれば、共産党だって、ながらく原子力の平和利用に賛成であり、脱原発に舵を切ったのは「福島」以後、それも浜岡原発の停止が決まった後なのだから。

情緒的・感情的な反原発でなく本当の反原発を進めるのにはいかなる思想が有効なのか。
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本書を読んでいると維新の会が気楽に脱原発という言葉を弄ぶのがわかるような気がする。
電力消費軽減、第二次産業の旧第三世界諸国への移転、、脱原発依存とは自国内の新自由主義を推進することと同義なのだ。
あたかも沖縄に米軍基地を押し付ける構造と同じく、国家資本主義的なブロック経済と新自由主義は旧第三世界に原発を押し付ける。

筆者はドブネズミ、「だめ連」の系譜をひく「素人の乱」を従来の反原発運動とは異なった新しい運動として評価するが、反原発とともに反新自由主義運動でもあることはディレンマを抱えていると指摘する。
日本の原発(だけ)がなくなればよいというのは、端的にナショナリズムでしかない。その結果、一国的な新自由主義政策に加担することになるのだ。一方、「仕事をよこせ」という場合、一般的には、第二次産業を空洞化させるな、ということだから、「脱」原発の速度は、相対的に遅くなってもいたしかたないとされることになる。いや、原発の多少の増設さえ容認せざるを得ないかもしれない。しかし、「素人の乱」や、それが提起するデモに出てくる者たちの多くは、「市民」化した、主に第三次産業に従事する認知労働者だから第二次産業に従事する者への配慮は相対的に希薄である。
原発とは日本だけの問題ではなく世界資本主義の問題である。
そういう視点を持つ運動こそが、これからの反原発運動に求められる。
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本書は、反原発運動の思想的淵源を1950~60年代の中ソ論争に起き、それ以後、フクシマ、「素人の乱」に至るまでの運動に関わった人たちの思想、その出自や変容までをも説き明かす。

「死の灰詩集」と和合亮一の類似(詩壇の劣化)、武谷三男の技術論(原発容認)が新左翼に与えた影響、津村喬の反原発論の大きさ、ニューエイジ・宮沢賢治・アナキズムと原発の関わり、反原発としての「宝島文化」、革マル出身の松岡正剛、ヒッピーたちの反原発、ニューウエイブ、フエミニズム、ドブネズミ、、そして「素人の乱」。
項目的に挙げて見ても何のことやらわからないかもしれない。
読むともっとわからない。
つくづく俺は頭が悪いなあと今さら情けなく思った。
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筆者の絓秀実(すが ひでみ)ってどんな人かと思って調べたら、とても変わった(面白い?)人物だ。
そのなかで福田和也が
絓さんって、物書きのなかでもいちばん難しいことを書く人でしょう。ある座談会で浅田彰氏にまで「難しいから何とかしてくれ」って言われていた。普通の人より前提条件が高いところから話しはじめちゃうんですね。だから、あの人の文章を読もうとしたら、その前に読まなきゃならない本がたくさんあるという、極端なメタ活字の世界。
と語っていることが紹介されていた。
少しほっとした。

分からないなりに”とても”面白かった、ってますます変?

筑摩書房
Commented by haruneko3 at 2012-11-21 00:07
わたしも図書館で、この本ぜひ借りてこようと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-21 08:48
haruneko3 さん、難しいところは飛ばして読みました^^。
Commented by ほめ・く at 2012-11-21 09:36 x
>共産党だって、ながらく原子力の平和利用に賛成であり、脱原発に舵を切ったのは「福島」以後、それも浜岡原発の停止が決まった後なのだから。
共産党は1955年の原子力基本法以来原発には反対しています。ただ核エネルギーの平和利用そのものの研究については認める立場で、これは現在も変えていないようです。
(2011年8月25日付毎日新聞)
著者の【デモに出てくる者たちの多くは、「市民」化した、主に第三次産業に従事する認知労働者だから】という指摘は事実を正確に見ていないような気がします。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-21 10:04
ほめ・くさん、おっしゃる通りですね。不正確なので訂正します。
後段は、筆者独特の言葉使いですが、要は余裕があるから戦えるという側面をついているのかも知れない。http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/9dfee96d82b2491c6772b391c531cd42
この後、筆者は反新自由主義であり反原発を貫徹するということは働くことを拒否してパラサイト化することを選ぶことになるのかもしれないと言ってます。
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by saheizi-inokori | 2012-11-20 15:06 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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