旅の空でサンチに想いを馳せる スタンレー・コレン「犬も平気でうそをつく?」

ピンボケ老人の旅、最終日は徳島の街を眉山、阿波おどり会館、水際公園、商店街、、と歩き、ひょうたん島周遊船にも乗って、だいぶ疲れたので徳島駅のホテルの喫茶店でコーヒーをのんだ。
俺は喫茶店というものは学生時代の期末試験のとき(冷暖房、美人ウエイトレスも少し、目当て)を除くと日常ほとんど利用しない。
一杯何百円もするコーヒーを呑む金があるなら居酒屋で一杯呑めるじゃないか。
今は安くてうまいコーヒー屋がたくさんできたけれど、めったに入らない。
生来ケチだから、たかがお茶如きに金を払うのに抵抗感がある。
関西で言うところのイラチだから、確たる目的もなしにコーヒー屋で時間をつぶすことに罪悪感みたいなものもある。

旅先で喫茶店に入るのは非日常気分で金と時間の贅沢を楽しもうというわけ、それでもホテルの喫茶ロビーなんて清水の舞台から飛び降りるようなものだ。
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誰もいない静かな空間、座り心地の良いソフア、まあまあウマイコーヒー、そこはかとない満足感はあるが、目の保養になりそうな存在もなく、たちまち所在なくなって取り出したのが本書だ。

八ヶ岳の麓でサンチと泊まったペンションの本棚にあった本。
ベッドに寝転がって、窓の外の雨を、やせ我慢でなく楽しみながら、持って行った「パコと魔法の絵本」を読み終って、まだ晩飯まで時間があったので、はじめの方だけ読んだら面白かった。
それで図書館で借りて四国への機内で3分の一読んだ。
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著者は、カナダ、ブリティッシュコロンビア大学の心理学教授にして大した愛犬家、「デキのいい犬、わるい犬」は全米でベストセラーになった。

犬の嗅覚・聴覚・視覚・記憶力・味覚・学習力・芸術や科学を理解する力、”超能力”、、さまざまな例を挙げながら科学的に論証・検証してみせる。
その検証実験の方法も面白い。
実験対象になっている犬たちの表情・仕草が目に浮かぶようだ。
犬の老化、とくに認知症についての予防策などの記事は読むだけで切ない。

しつけの仕方についても、何となく聞いていたことが間違っていることも教えられた。
「来い」を教えるときに、犬が自発的にこちらに来たら、そのときにすかさず「来い!サンチ、いい子だ」といい、ご褒美をやるのが好いそうだ。
そのタイミングがなかなか難しいけれど。
体罰はあまりよくない(無意味ではないが)。
褒めて教える方がいいって。
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犬の視力は最高で0・26(それを測るのもご褒美をうまく使うのだ)、では犬は俺を遠くからは見つけられないか?
そうではない、サンチは物全体の様子、歩き方の特徴などで俺を認識する。
動体視力はワンちゃん並みだし、視界は最高270度。

味蕾の数は人間の5分の一で塩気に鈍感、もともと塩分の含まれる肉食だから塩を欲しがらないのだ。
サンチはリンゴが大好きで薄く細かく切ったのを少しやるのだが、甘党の犬は自動車エンジンの不凍液に含まれるエチレングリコールを舐めると生命の危険がある。

落語に「松山鏡」という鏡のない国に住む村人の噺があるが、サンチは鏡に映る自分に反応しない。
それはサンチに自意識がないからか?
いや、そうではあるまい、犬は視覚で捉えたものに反応しにくいが、犬にとっての最重要な感覚は嗅覚だ。
嗅覚を使って犬の自意識の有無を調べる。
それは”黄色の雪のテスト”、自分の尿と他の犬の尿の匂いを嗅ぎ分けて、他犬の痕跡はしつこく嗅ぎその上にオシッコをかけたりするが、自分の尿の痕跡には冷淡な態度をとる。
それは自分の肉体の一部を言うような感覚ではあっても自意識とまではいえないかもしれない。
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犬は他者と自分のものの考え方が違うということを理解している。
つまり獲物の身になって考えて先回りして待ち伏せする力がある。
人間の目を盗んで悪いこともやる。
いつか、救急車が近所に来たので見に行って帰ってきたらサンチの姿が見えない。
呼び続けるとテーブルの下からノソノソと出てきた。
なんと鍋料理の材料の油揚げを半分ほど食っちまった、あの決まりの悪そうな姿は思い出すたび吹き出したくなる。
人間の目をそらさせるために騙すことも。
サンチは粗相をしてカミさんに叱られると思うと、叱られる前に別の部屋でパソコンに向かっている俺のところに来て椅子に足をかけて甘える、厭らしいやつだ^^。

人と犬は結果として同じような行動をとることがあるが、そこに至る過程は必ずしも同じじゃない。
犬から見て人間は犬、できの悪い犬なのだ。
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出来が悪くて、悪かったなあ、サンチ。
見捨てないでくれよな。

文春文庫
木村博江 訳
Commented by orangepeko at 2012-11-16 11:56 x
こんにちは。
サンチくんに対する愛情溢れる観察眼が伺えますね~♪

しつけに関しては犬とか人間とかはないと思っています…同じではないでしょうか…

愛情を持って育てれば、彼らも感情を理解してくれますね…
怒られそうな時はわが家でも似たような行動を示します…(笑

サンチくん、自分を犬と思っていないと思いますよ(笑
わが家の千楽(ちら)もそうですが…(汗
Commented by ジュ at 2012-11-16 14:31 x
楽しいお犬さま談義のひとときを有り難うございますー!
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-16 16:44
orangepeko さん、この年になってまた子育てとは^^。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-16 16:45
ジュさん、どういたしまして。
犬に興味のない方も生物学的興味はあるのではないかと^^。
Commented by poirier_AAA at 2012-11-16 18:54
>褒めて教える方がいいって。

子どももそうみたいですね。つい怒っちゃうんですけど。褒めると照れくささと嬉しさの混じった変な顔になります。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-16 20:15
poirier_AAAさん、子どもも部下も、小さな声でカミさんも、そうです。
でもついつい叱ってしまう私。
娘の旦那はその点実に立派、いつも褒めるのです。
Commented by at 2012-11-16 20:57 x
犬とも子供とも根比べさ、さて、どっち?
Commented by 豆ママ at 2012-11-16 22:55 x
早速、注文しました。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-17 08:59
蛸さん、どっちも可愛い^^。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-17 09:04
豆ママさん、私には初耳のこともあって楽しかったですよ。
Commented by c-khan7 at 2012-11-18 23:48
そうっか、、犬もウソをつくんですね。。
人の目を盗んで、、ご馳走を食べたりするんだ、、
でも、あの目を見たら、怒れないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-11-19 09:24
c-khan7さん、きゃつめ、それも計算してるのかと^^。
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by saheizi-inokori | 2012-11-16 11:13 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori