日経「私の履歴書」 オススメ 泣かせる仲代

日経朝刊の一番裏っ側の面が面白い。といって何とかいうお医者さんの書いてるポルノのことではない。仲代達矢の「私の履歴書」だ。会社でとっているので読めない日もあるけれど、出来るだけ読む。第1回で仲代は、この履歴書は亡き恭子夫人への「恋文」になりそうだと言う。彼女のガン死から書き始めるのだ。

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三船敏郎と共演ということで撮影に入るが、演技論などで仲代と喧嘩になり(仲代は萬屋錦之助とも殴り合いをしたそうで演技論になると手も早かったようだ)雪の中を「殺してやる」とののしりあい殴りあいになった。三船は「こんな映画出ていられない」と途中でひきあげてしまう。三船は当時・黒澤門下で押しも押されぬ国際的大スター。仲代はようやくスターの道を歩み始めたところだ。そのとき仲代が留守宅の恭子さんに電話すると「絶対に謝っちゃだめよ。映画会社や関係者に迷惑かけても、どんな借金してでもお返しするから」と言った話。

1963年のカンヌ映画祭で「切腹」は下馬評ではグランプリ間違いなしと言われたがヴィスコンテイ監督・アラン・ドロン主演「山猫」に負けてしまう。その映画祭の後、パリで夫婦が過ごしたときの思い出。
安ホテルに泊まり、朝食はもっぱら近所のカフエでパンをかじった。あゝ、でもそれが楽しかった。ずだ袋にサンダル履き。誰にも邪魔されず人目も気にせず、恭子といるのは楽しかった。どれだけ笑みを交わしたことだろう。嫌なことは何ひとつなかった。

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日本の映画がもっとも輝いていた時代の裏話・いい話がドンドンでてくる。しかし、そういう興味もさることながら仲代と恭子夫人の”心”の履歴書だ。俺は「私の履歴書」は普段ほとんど読まないし、下の小説も読まないし、ときどき真ん中の随筆を読むくらいの日経の裏っ側だったが、俄然!である。
Tracked from こころは超臨界 at 2005-11-21 06:50
タイトル : 楽しみながら三船さんに切られて死んだ――仲代達矢さん
【幸せと平和を願う心が臨界質量を超えるとき世界が変わる】 仲代達矢さんは『七人の侍』にエキストラで出演した。スクリーンの端から端へと5秒ほど歩くだけのシーン。ところが、ゆっくりと歩き始めた途端、黒澤監督からダメが出た。何度やってもOKしてもらえない。結局、5秒のシーンのために6時間も歩かされるという屈辱を味わった。その7年後。仲代さんは、黒澤監督から『用心棒』の準主役ともいうべき卯之助役に指名される。こんどは黒澤監督から特別の注文もなく、気持よく演技に打ち込むことができたという。ラストシーンでは、仲...... more
Tracked from 来夢望瑠_日々平凡 at 2005-11-21 22:38
タイトル : 日経新聞:今月の私の履歴書:仲代達矢さん 
1日、2日と見逃していて、今朝ようやく気がつきました。 (小生は理由なき:-)日経新聞Only購読者です。) なぜでしょう? これまで、同業の幾人の方の履歴書も読んできましたが、 今回はこれまでにないほどの興味をもってしまいました。 凡人オヤジのただの感想にすぎませんが、今日3日の記事のエピソード、 文章が実に自然で心地よいのです。 そうして、1日、2日の見逃していた記事を読み返すと、その心地よさが ずうううと持続しているのです。 「私の履歴書」、(こういっちゃなんですが)ただの自慢話、...... more
Tracked from 笑門福来ありがとう日記 at 2005-12-23 11:00
タイトル : 気になるコトバ。
突然お邪魔しますm(_ _)m... more
Commented by そら at 2005-11-19 01:13 x
梟さん、こんばんは♪
眠れないままにブログ巡りなどをしています(苦笑)
「私の履歴書」、朝からとても気持ちのほかほかするような記事なんですね。う~ん、ちょっと違う。何だろう?心の中で温かいものがくつくつ笑うって感じかな。
こんなふうに人を好きだって言えるのって、いいな~と思います。
それだけで、周りの人も幸せになれるよね。
Commented by suiryutei at 2005-11-19 18:08
こんばんは。
いつも梟さんがくださるコメントにレスするので手いっぱいで、なかなかこちらから伺えないでいます(いつもありがとうございます)。
ビスコンティの『山猫』が相手ではしょうがないですね。今年の春、NHKBSで『幕末』という映画が放映されたのを終わりのほうだけチラッと視たのですが、仲代達矢が中岡慎太郎、萬屋錦之介が坂本竜馬、そして三船敏郎が後藤象二郎という配役でした。暗殺される直前までの竜馬(錦之介)と慎太郎(仲代)の議論は、なるほど迫力あったわ。
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-20 11:30
suiryuteiさん、よくいらっしゃいました。何もお構いできませんがごゆっくりどうぞ。
仲代は「山猫」が逆転したのは、当時やや不振のイタリア映画界を活性化させるという”政策的”配慮があったらしいとかいてます。本人は「審査員特別賞」を取れたことを喜んでいます。授賞式のあとどこやらのレストランでヴィスコンテイの一行と鉢合わせしたときのことなども面白く書いていました。単行本になったら買いたいと思います。
Commented by pompu at 2005-11-21 22:00 x
読んでいると奥様への恋文のようですね。お子様を流産された時の話などは女性の心の優しさ、強さ、悲しさが凝縮されていました。それを理解できた仲代さんも素敵です。
Commented by Kimball at 2005-11-21 22:37 x
saheizi-inokori さま、
はじめまして。

愚BLOGへのTBありがとうございました!!

本日(11/21)の最後も、じーんときました。
(他の人の言葉だったらなんともなかったとおもうのですが)
--------
だが、私たちにとって無名塾は単なる私塾ではない。演劇人、
いや人間としての「死の準備」だった。
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「無名塾」(そのようすをNHK?のドキュメント番組で
みたような記憶がありますが)が始まったエピソードがまた
素敵ですね!!:-)
Commented by saheizi-inokori at 2005-11-21 23:28
pompuさん、Kimballさん、こんばんは。映画[ALWAYS 3丁目の夕日」で泣き、Qちゃんで涙し、仲代でジーンと来て・・感動の日々です。ありがたいことです。それだけに失業の若者とか「下流社会」などといわれると胸が痛みますね。
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by saheizi-inokori | 2005-11-17 21:53 | よしなしごと | Trackback(3) | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori