シエイクスピアは難しい 彩の国シェイクスピア・シリーズ『トロイラスとクレシダ』

山本裕典がトロイラス、月川悠貴がクレシダ。
クレシダはまあまあだたっが、トロイラスはちょっと戴けなかった。
最初から終わりまで一本調子で怒鳴るばかり、せっかく勉強していってもなお聞き取れないセリフ。
いつも右手を高く揚げてがなる。
これではクレシダに振られてもやむを得ん。
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(ほとんどこの舞台装置で劇は進行する。客席内の通路がフルに活躍、二階席を買った俺は失敗)

止むを得ないことだが若いイケメン俳優たちと老練の俳優たちの差が目立ち過ぎ。
道化をやった、たかお鷹、ユリシーズの原康義、アキレウスの星智也などがよかった。

ほとんど女性ばかりで満員の客の多くは若手イケメンを観に来たのかもしれない。

芝居のあと、ポストトークがあって、松岡和子の司会でたかお鷹、星智也、細貝圭(アイアス)が喋ったのが面白かった。
鷹が芝居全体の感想を「戦争ってくだらないですね」、トロイラスとクレシダの恋愛及びその破局に冷たかったこと、第5幕第一場で、梅毒、腸ねん転、ヘルニア、カタル、腎臓結石、中風、、病気の名前を言い立てるところをラップでやったのは、稽古の時にそうすると覚えやすいからやってみたと語ったこと。
星は蜷川から「今までやっていたという感じでテントから出てこい」と言われて怒られてもともとと、初めは全裸、さいごは向日葵の花で前を隠して出てきたら、すんなり通ってしまい、ゲイの恋人役のパトロクロス(長田成哉)も行きがかり上裸にならざるを得なかったという。
後ろを向くと完全裸体のイケメンは蜷川サービス?

しょっちゅうクレシダも含めて性愛に絡んだ下品な言葉が出て文字で読んでいるとそれが淫猥な空気を感じさせるのだが、早口でパラパラっといわれると聞き逃すかもしれない。
その分、ビジュアルで、ということか。
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(開場前に下のホールでやっていた弦楽四重奏ライブ、「アメリカ」は懐かしかった)

「監督から言われたことで何が一番記憶に残っているか」と問われた細貝が「お前は一本調子で怒鳴るばかりということを批判されるかもしれないが、心配するな、その批判は全部俺が引き受けてやるから迷わず今のままでいけ」と言われてそれからはアイアスの造型に迷わずやっている、と答えた。
たしかにアイアスも一本調子だったが、これはバカな単純男という性格からそんなに違和感はなかった。

むしろ上に書いたように主人公のトロイラスはもっと感情の起伏や苦悩を表現して欲しかったのだ。
山本にも監督は同じことを言ったのか。
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(与野本町駅から劇場までまったくスッポンポンで太陽に曝されたのはつらかった)

若い才能を育てるために、全てを要求することは伸びる芽を摘んでしまうかもしれない。
シエイクスピアの劇の長いセリフを覚えること、長丁場を耐え抜く体力と運動神経、今はそれだけでも大変なのかもしれない。
変に感情をこめたり抑揚をつけて喋られたらかえって聞くに堪えないのかもしれない。
能の子役が大きな声で謡うようにいうのを思い出すが、あっちは聴いていて可愛くて心地よい。

それほどに役者にも観客にとっても難しい劇だと思った。
スペクタクルやカタルシスやうっとりするような美しいセリフも少ない。
戦後国内での主な上演は今回が5度目だということにも表れている。
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Commented by takoome at 2012-08-30 13:53
サワディ〜カ〜
もし、蛭川がもっと若かったら違ったと思うな、
それにしても、イケメンだらけだな、
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-30 13:56
蛸さん、爺はお呼びじやなかった!
Commented by poirier_AAA at 2012-08-30 17:08
遠目で見る舞台だからこそ、声や動作で誰でも絶世の美女や英雄になれるだと思います。だから俳優も技が勝負ですよね。若い俳優たち、若い外見に頼らずにがんばれ〜!
Commented by きとら at 2012-08-30 19:53 x
 『トロイラスとクレシダ』なんて芝居、初めて聞きました。ということは凡作、あるいは駄作、箸にも棒にもかからない作品、誰もやりたがらない作品、なのかもしれません。
 俳優たちの写真、器用な役者はいるかもしれませんが、力のある役者はいないように見えます。蜷川さんも苦労したんじゃないですか? (笑)
 
 たまには、人生幸朗・行方幸子の漫才もいいですよ。
Commented by junko at 2012-08-30 20:16 x
Ciao saheiziさん
saheiziさんのレパートリーは、相変わらず広いですねぇ
出演の俳優さん達、一人も知りませんでした
でも顔を見ると、、今風の、まあイケメンと呼ばれそうな面々
私の好みではないけど、奥様方は好きかもねぇと思いました 笑
Commented by c-khan7 at 2012-08-30 23:52
シェークスピアと、聞いただけで、難しそうなので、見た事なかったですが、イケメンかぁ〜〜。
Commented by つきのこ at 2012-08-31 07:03 x
おはようございます。

演劇、古典芸能などなど、幅広いですね。
今の御時世、若ければいいという風潮がありますね。

演劇大好き友人から以前聞いたことがありますが、
蜷川さんの演出と人選、当たり外れがあるとか、、。

明日は友枝さんのお能、拝見してきます!
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-31 07:41
poirier_AAAさん、この芝居は敢えてシエイクスピアがシニカルに英雄を描いていて、そのほうが役者としては難しそうです。
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-31 07:44
きとら さん、中野好夫によれば「シエイクスピア劇の中でもっとも野心的な実験が試みられたもっとも意欲的な作品であることは疑いない」そうです。
そういう作品を興行的に成功させようとするのは大変でしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-31 07:46
junko さん、イケメンが上半身をさらけ出したり時に全身裸になったり、サービスしてます。
原作そのものがなかなか曲者だからなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-31 07:47
c-khan7 さん、私の数少ないシエイクスピア体験ではいつも大笑いしたりワクワクしたりうっとりしたり、とても楽しいのですが、今回は少々疲れました。
Commented by saheizi-inokori at 2012-08-31 07:49
つきのこ さん、いいですね、羨ましいなあ。一昨日のような難しい込み入った劇を観た後では能のすっきりした舞台を観たいと思います。
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by saheizi-inokori | 2012-08-30 12:48 | 能・芝居 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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