暑いときは落語と馬刺しで 喜多八膝栗毛 夏之瞬

さすがに、ってなにがさすがかわからないが、疲れが回ってきた。
早朝からチョコマカ動きまわって家に帰ると気づかれもあってくた～。
でもしかし、男佐平次は行かねばならぬ。

内田樹も言ってるじゃないか。

日本的な精神は、西洋と日本のあわい、政論と遊蕩、学殖と落語のあわいを遊弋する。（「昭和のエートス」）

って。
なんせ内田は、無人島には自分で編集した落語のＣＤ一枚を持っていくそうだ。
幕末から明治末年にかけての市井の日本人たちの生活と心性を活写した落語。
趣味が合うじゃないか、内田君。
そこで炎暑落語会三連荘の第二夜は銀座博品館で喜多八膝栗毛だ。
銀座の街を歩いていると軽い吐き気があって、ははあ、これが熱中症ってやつかと他人事みたいだ。
冷蔵庫に置いてあった水をいれたペットボトルを持ち忘れたので、自販機で買おうかと思うが行動に移らない。
代わりに腹ごしらえにお茶漬けカウンタ―の店に入って出されたコップの水をくいっと飲む。
「冷や汁茶漬け」を啜る。
隣で待ち合わせた同伴カップル、たんなる馴染客とホステスという以上に同郷の友人というような雰囲気があって、ちょっとした物語を感じた、、がそれはうらびれたものになってしまった。
若いということはまぶしくもあるがそれは侘しさの予感も含んでいるのではないか。
博品館の中も蒸し暑く、前座ろべえ「ぐつぐつ」が詰まらなくて、この暑いのにくだらないマクラをやった挙句に、おでん鍋のなかの具たちの会話という噺をヘタクソにやる、その神経にイライラする。

喜多八「粗忽長屋」に続いて「青菜」
なんかわさわさと落ち着かない話しぶり。
ファンばかりだから笑いは取れているが、メリハリもないし、、そうこうするうちに眠気が襲ってきて、「青菜」では大学の数少ない受講経験をなぞって、ウツラウツラ、あの頃は授業の途中で退席をしたが、今日はそうもいかない。
（今朝の散歩で）

仲入り後、鏡味初音・大神楽曲芸
舌足らずなしゃべり方と壊れそうに細い体で、いかにも覚束なげに五階茶碗などをやる。
毬を二つ重ねるところでは「怖いのでやめます」って。
このハラハラ感が独特の魅力なのか。

最後は喜多八「怪談　乳房榎」
今まで怪談はあまり縁がなかったのにもう何度目かだ。

休憩中に冷たいエアコンの下に行って深呼吸をしたからパッチリ目も覚めてまじめに聴いていた。
どうも、怖くもないし、男と女の本性なんて大上段に言うほどのこともなし、物珍しさだけが取り柄だったかと。
少々体調が悪くてもキャンセルもせずイソイソ銀座まで出かけたのは、喜多八の魅力は当然だが、東銀座の居酒屋の拡大居残り会があったから。
店の予約を取ったのも俺だし。
タテガミたっぷりの馬刺し、焼き鳥、刺し盛り、、出されるたびに歓声の上がるほどの活きの良さと盛りの良さ。
男女比率２対４、話は上下左右古今東西におよび店主が志ん朝・玉三郎などの常連客のお噂などで加わって、そもそも開始が９時４０分、アッと思えば終電間際という盛り上がり。
体調不全などどこに行ったかという一日の終わり也。