日本がうまくいっていない本当の理由 佐伯啓思「反・幸福論」
2012年 07月 27日
先日のNHk「クローズアップ現代」で石牟礼道子が、水俣病患者に対する政府の冷酷・理不尽な対応について語る中で、「国には何を学んでほしいと思いますか」と尋ねられて
3・11は水俣病には関心を持たなかった普通の市民にも「普通に生きること」の大切さを改めて感じさせたのではないか。
戦後の日本人は、個人の自由こそすべてとし、ひたすら追求してきた「幸福になりたい」。
始め、その幸福とは、「守るべきささやかな幸福」だったはずなのに、いつの間にか「実現すべき膨張する幸せ」になってしまった。
つまりいつも「不幸」になってしまったのだ。
畏怖するものを失い、畏怖と貼り合わせになった安心できる場所=「ふるさと」を失った我々は経済的な利益に特化していった。
日本人の心を取り戻すことはできないか。
それは
生きていることに罪を感じ、自然を畏怖するような死生観が。
なんであれ”ポジティブ”であればよしとする軽薄な幸福論は「幸福という強迫観念」であって「死への漠然たる恐怖」にすぎない。
脱原発をいうことは現代の技術文明、成長経済路線を修正ないしは否定する覚悟をもたなければならない。
自然を「挑発」し、自然をねじ伏せて、有用性・効率性を追求してきた現代技術(テクノロジー)―その究極が原子力利用ーは、ほんらい自然が内蔵している力が生み出す運動を人間が手助けする『技術』=テクネー、あたかも華道が制作者の個性を殺して花の力・美を引き出すような『技術』によって修正されなければならない。
こうして著者の言うことと俺の考えをごちゃごちゃにして書いてきたのはおおむね共感できる部分だ。
以下の部分は今までの俺が同意しなかったこと。 俺は、民主党には期待したし、「平和憲法」「東京裁判史観」の徒であるし、豊かになることを追い求めてきた。
しかし普天間やオスプレイをみたら日米安保に問題があることは明らかだし、水俣病やフクシマの惨状をみたら経済成長至上主義の虚ろさがつきつけられる。
日米安保と訣別してなおかつ平和憲法を守り続けることができるのか(できると思うが)。
たしかに俺は不誠実に三点セットのぬるま湯に浸ってきたことを認めなければなるまい。
新潮新書
きょうも無事に生きた。と言った。
あしたも、きょうくらいに生きられればいいと思う人たち、特別、出世したいと考えもしない人が、この世にはたくさんいる。
普通に生きている人たちの行く末、普通に生きるというのは大事なこと。
3・11は水俣病には関心を持たなかった普通の市民にも「普通に生きること」の大切さを改めて感じさせたのではないか。
始め、その幸福とは、「守るべきささやかな幸福」だったはずなのに、いつの間にか「実現すべき膨張する幸せ」になってしまった。
つまりいつも「不幸」になってしまったのだ。
畏怖するものを失い、畏怖と貼り合わせになった安心できる場所=「ふるさと」を失った我々は経済的な利益に特化していった。
日本人の心を取り戻すことはできないか。
それは
「死」を常態と考えることの裏返しに「生」を無常と観ずる心欲望肯定、効率至上、義務を伴わない自由、、俺のいうシーベルト星人の侵略によって、日本人の死生観が失われた。
生きていることに罪を感じ、自然を畏怖するような死生観が。
なんであれ”ポジティブ”であればよしとする軽薄な幸福論は「幸福という強迫観念」であって「死への漠然たる恐怖」にすぎない。
自然を「挑発」し、自然をねじ伏せて、有用性・効率性を追求してきた現代技術(テクノロジー)―その究極が原子力利用ーは、ほんらい自然が内蔵している力が生み出す運動を人間が手助けする『技術』=テクネー、あたかも華道が制作者の個性を殺して花の力・美を引き出すような『技術』によって修正されなければならない。
こうして著者の言うことと俺の考えをごちゃごちゃにして書いてきたのはおおむね共感できる部分だ。
以下の部分は今までの俺が同意しなかったこと。
民主党はやりたいことがあったのではなく、単に権力への野望に取りつかれて、自民党と官僚に反対した。
権力奪取に「民主主義の実現」という正義の装いを施しただけだから政権を握ってしまったら何の定見もなく権力維持だけが自己目的化する。
民主党が失敗するのはあらかじめ分かっていた。
日本がうまくいっていない根本的な理由は民主党政権にはない。
「平和憲法」「日米安保」「経済成長追及」の戦後の三点セット、その背後には「東京裁判史観」がある。
だから日本を立て直すためにはこの価値観・歴史観を見なおさなければならない。
これはわれわれ自身の内部に巣くっている価値観であり歴史観だ。
権力批判はしても、上記の三点セットには満足してきたのが日本国民のほとんどだ。
自分が責任を負うことをせず、入れ代わり立ち代わりする政治家のせいにして、権力批判という”にねくれた権力欲”をみたしてきた知識人・大衆。
ニーチェのいう「ルサンチマン」、それも「正義の仮面をかぶったルサンチマン」こそ日本の”民主政治”の原動力ではないか。
しかし普天間やオスプレイをみたら日米安保に問題があることは明らかだし、水俣病やフクシマの惨状をみたら経済成長至上主義の虚ろさがつきつけられる。
日米安保と訣別してなおかつ平和憲法を守り続けることができるのか(できると思うが)。
たしかに俺は不誠実に三点セットのぬるま湯に浸ってきたことを認めなければなるまい。
新潮新書
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antsuan at 2012-07-27 13:27
吉田茂がたった一人で日米安保条約の署名をしたのは、敗戦から日本を復興させるために「戦後の三点セット」が、必要悪だと考えたからだと思います。
そしてその後の、「普通に生きることの幸福」が達成された証しである大阪万国博覧会の成功こそが、この三点セットを見直す絶好の機会だったことが分かります。
逆に言えば、これ以降の日本は国家戦略を見失ってしまったのではないでしょうか。
そしてその後の、「普通に生きることの幸福」が達成された証しである大阪万国博覧会の成功こそが、この三点セットを見直す絶好の機会だったことが分かります。
逆に言えば、これ以降の日本は国家戦略を見失ってしまったのではないでしょうか。
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takoome at 2012-07-27 13:44
サワディ〜カ〜
ぬるま湯って、生温くないかい? なんかねぇ、麻痺って感じかなぁ、
ぬるま湯って、生温くないかい? なんかねぇ、麻痺って感じかなぁ、
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saheizi-inokori at 2012-07-27 15:17
antsuan、そうかもしれないですねえ。
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saheizi-inokori at 2012-07-27 15:18
takoomeさん、そろそろお湯から出ないとゆであがってしまうかも。
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sweetmitsuki at 2012-07-27 23:01
民主党が駄目だったからといって、自民党があのまんま政権を担っていればよかったとは思いませんし、戦後の歴史観が誤りだったからといって、戦前の国家構想が正しかったわけじゃないと思うんですけど。
ぬるま湯でも平和ボケでも平和なのが一番です。
今の世の中、今のままでいいとは思いませんけれども、東京裁判史観の見直しとか恐ろしいこという人は本当に剣呑です。
ぬるま湯でも平和ボケでも平和なのが一番です。
今の世の中、今のままでいいとは思いませんけれども、東京裁判史観の見直しとか恐ろしいこという人は本当に剣呑です。
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saheizi-inokori at 2012-07-28 00:17
sweetmitsuki さん、自民党では日本が終わってしまうとおもったから民主党に政権をゆだねたのですが、それは3点セットに穴をあけることをきたいしたのではなかったでしょうか。
普天間、尖閣、オスプレイ、、平和ボケでいつまでもおれないということでしょう。
私も戦前の国家構想が正しかったとはおもいません。
普天間、尖閣、オスプレイ、、平和ボケでいつまでもおれないということでしょう。
私も戦前の国家構想が正しかったとはおもいません。
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fukuyoka at 2012-07-28 01:09
鴨一家の写真は心が和みます。子供達が成長し、お母さんが日々逞しく見えてきます。鴨さんニュース、これからも宜しくお願いしますね。
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旭のキューです。
at 2012-07-28 09:52
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私も民主党に期待した一人でした。次ぎの総選挙では、負けるでしょうけど、私自身がどこに投票しようか迷っています。
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saheizi-inokori at 2012-07-28 10:06
fukuyokaさん、一羽欠け二羽欠け今は5羽、春先の三羽は大きくなりました。
日と時間によって姿が見えないこともあってドキドキします。
日と時間によって姿が見えないこともあってドキドキします。
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saheizi-inokori at 2012-07-28 10:06
旭のキューです。 さん、がっかりでしたね。
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orangepeko
at 2012-07-29 10:53
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saheizi-inokori at 2012-07-29 11:54
orangepeko さん、>そのまま一生を終えられたら
さてどうでしょうか、そうはいかなくなってきたような気がします。
中東の混乱や民主化はアメリカの崩壊の結果ではないでしょうか。
ロシアや中国はすかさず攻勢に出てきました。
少なくとも子供たち孫たちはゆでガエルでいることすら許されないような気がします。
たしかに食欲がなくなりますね^^。
さてどうでしょうか、そうはいかなくなってきたような気がします。
中東の混乱や民主化はアメリカの崩壊の結果ではないでしょうか。
ロシアや中国はすかさず攻勢に出てきました。
少なくとも子供たち孫たちはゆでガエルでいることすら許されないような気がします。
たしかに食欲がなくなりますね^^。
by saheizi-inokori
| 2012-07-27 11:22
| 今週の1冊、又は2・3冊
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Comments(12)