許せない!と拳を振り上げたものの、、 ニコラス・シャクソン「タックスヘイブンの闇」
2012年 04月 24日
多くの人のイメージはオリンパスの財務取締役とかマフィァの麻薬取引などごく限られた人たちがインチキをする場所だと思っている。
とんでもない。
オフショア世界は我々のまわりのいたるところにある。
世界の貿易取引の半分以上が、少なくとも書類上はタックスヘイブンを経由している。すべての銀行資産の半分以上、および多国籍企業の海外直接の3分の1がオフショア経由で送金され、国際的な銀行業務や債券発行業務の約85パーセントが、ユーロ市場ー国家の枠外のオフショアゾーンで行われている。
IMFは2010年に、島嶼部の金融センターだけで少なく見積もっても世界総生産の約3分の1に相当するバランスシートの合計額に登ると推定している。
アメリカの大手100社の内83社、ヨーロッパの大手100社の内99社がオフショアに子会社をもちその大多数は銀行だった。
タックスヘイブンなんて俺たち庶民には関係ない?
とんでもない。
オフショアこそが本題だったのだ。オフショアはリーブルヴィルとパリを、ルアンダとモスクワを、キプロスとロンドンを、ウォール街とメキシコシティやケイマン諸島を、ワシントンとリヤドをむすびつけている。犯罪の地下組織と金融エリートたちを、外交・情報機関と多国籍企業をつないでいる。紛争を促進し、われわれの認識を形作り、金融の不安定さを生み出し、大物たちに莫大な報酬をもたらしている。オフショアは、権力の世界が現在どのように動いているかを示す縮図である。途上国の援助金を食い物にした世界金融資本は1ドルにつき10ドルの資金を途上国からもちだしている。
価格移転のカラクリ、債務を担保にする無税・有限責任の取引、二重非課税、租税戦争、守秘の壁、、何度読んでもおぼろげにしかわからない世界を崩壊しつつある仕組みだ。
そこが付け目、デラウエア、ジャージー(イギリスの統治下にある”自立国”)、ほとんど金融の知識のない人たち、小さなお互いに顔なじみの共同体で議会や政府を構成しているようなところを金融資本は乗っ取るのだ。
あれよあれよという間に、特別優遇措置(租税ゼロとか)の法律が出来上がり世界中の企業が支店や子会社を設立する。
その結果莫大な利益を得るのは一握りの富裕層、残りの国民は脱税されただけ租税負担も増す。
こうしたことをイギリスやアメリカは国策として黙認ではなく推進している。
ニコラ・サルコジが2007年に大統領に就任したとき、最初に電話した外国首脳は、オマール・ボンゴだった。
ガボンはフランスから独立したが、そのごもフランスの支援のもとに腐敗した支配権力を維持しようとする。
オマール・ボンゴはフランスにとってうってつけの大統領だった。フランス最大手の企業グループ、エルフ・アキテーヌはボンゴと組んでガボンの独占的な石油採掘権を獲得、その黒い金が世界各地でフランスの政治・商業外交を進める潤滑油になっていた。
フランスは表玄関から出て行って、横手の窓から戻って来た今でもガボンの大統領官邸に地下通路でつながっている駐屯地にはフランス部隊が駐留している。
イギリスも似たような手口だ。
ジャージーなどの王属領地においてもイギリスは実質上のコントロールを行い、金融上の膨大なメリットを享受している。
さればアメリカがきれいごとを言っていたらアメリカに流入すべき資金はシテイの闇=ユーロダラーに吸い込まれてしまう。
読んでいると、猛烈に腹がたった後、何とも言えない妙な脱力感・無力感にとらわれる。
今、俺が棲んでいる、100円の交通費を節約して、それでも別に貧乏人ではないと思われる世界とは実在しているのか。
タックスヘイブン・オフショアというネットワークの世界(観念、書類、バーチャルな世界のようだ)の方が本物でその住人達に俺たちは穴の中の蟻のように見られているのかもしれない。
しかし、その人たちというのは近所にもいて、銀座を歩き、大手町を闊歩しているのかもしれない。
1989年、OECDがタックスヘイブンとそれに関連するオフショア活動は
他国の課税基盤をむしばみ、貿易や投資のパターンを歪め、課税制度全般の公正さ、中立性、幅広い社会的受容を損なっている。このような有害な租税競争は世界の幸福を減少させ、課税制度の完全性に対する納税者の信頼を損なっているという極めて妥当にして、驚くべき報告書を提出した。
この報告書がOECD諸国自体のタックスヘイブンのことは除いていたにせよ、世界史上初めて行われた守秘法域に対する本格的かつ持続的な知的攻撃だった。
そのとき、危機感もあらわに猛然と反撃を行ったのがヘリテージ財団、ダニエル・J・ミッチエルの矛盾だらけではあるが、大向こうの賛同を得られやすい論文や講演活動を牽引車にして、つまるところOECDを完全に屈服させてしまったのだ。
先日アメリカで石原都知事が尖閣諸島を都で買うと演説したのはヘリテージ財団が開催した講演会だった。
それがどうした?
本書を読むと日本がタックスヘイブンと無関係でいるとは思えない。
他の国でもタックスヘイブンがそもそも厳重な守秘性を売り物にした世界であるだけに、オフショアにおけるタックスヘイブンが実際に自国民にどれほどの影響を及ぼしている(本来の納税額が特段に減っているはずなことは間違いないが)かが報道されることは少ないようだ。
だが、それでは困る。
日本企業や富裕な個人の実態を洗い出して、本来の納税箇所、すなわち日本に納税させる努力を、、、さて、だれがするんだろう?
無力感の所以だ。
「世界の富は盗まれている!」が副題
藤井清美 訳
朝日新聞出版
税金は少ない方がいいけれど国家を支えるためには必要なものだと思います。
どんな企業も国家がなければ存在できないはずです。
もぉ、私には想像を絶することです。
課税できないとなると、搾取されっぱなし、労働者はますます窮乏化して、再生産もできなくなり、国も成り立たなくなる。こういうことですか?
貧富の差の拡大といった生やさしいものではなく、世界は(金融)貴族と(金融)奴隷の二極構造になる。こういうことですか?
すると奴隷解放が課題になりますが、勝てる見込みはありますか?
もっともタックスヘイブンの仕組みは量子物理学より難しいのですが。
イギリスのシテイと国の対立の歴史をみても国は負け続けです。
アメリカが三流国家になるという本も紹介しましたが、その根っこはタックスヘイブンにあるような気がします。
99%の戦いに勝算ありや?
すでにジャージーなど富裕階級が税を納めず労働者階級の方がはるかに税負担をしているところがあちこちにできているようです。
結局それは自壊の道なので富裕層やアメリカ・イギリスなどにもタックスヘイブンをなくそうという動きはでてきつつあるようではありますが、、。
環境問題よりも難しいのではなでしょうか。
普段は、人種やら国やら宗教やらの区分をつけ、いかにもそれが、全ての闘争の根源であるかのようにしているのは、あるものを隠すための手段であり、実際は富める者と貧なる者の2者しかいないってことですね。
ゾーっとしますね。
ジャージーの統治は奇妙ですね。
根っこはイギリスが抑えているのに法制度も違い、ほんとうの三権分立もないようです。そこに金融資本が乗り込んで守秘法域をつくりあげた。
イギリス(シテイ)はジャージーをタックスヘイブンの金融センターとして利用してそこから資金を吸い上げているくせに、都合の悪いことはジャージーは別の国だというのです。
イギリスの旧植民地を支援という名に寄る支配、金融支配をして、それが旧体制より酷い結果を生み出していることは多いようです。
政党もなく元老議員、代議員、教区長たちからなる53人の議会は総選挙もなく、支配層のコンセンサスに反対する人はいづらくなります。
そして彼らの大部分は当然ながら国際金融の複雑な動向を全く理解していません。弁護士や銀行家が必要だというんだから信ずるのです。
そしてジャージー島に風穴を開けるといよいよロンドンに攻勢をかけて、イギリスがLLP法を制定しなければジャージー島に移転すると公然と脅しをかけ2001年に法律は成立しました。
こうして監査法人の責任を軽減したことが金融危機や不祥事の原因になったともいえます。
こっちでね、[Report]という番組があって、実に辛辣に社会の富裕層,政治家がなるたけ目に触れないようにと、大事にそして暗躍する世界を、実にあからさまに報道する番組で、なんでこういう番組日本にはないのだろうと思ってたばかり
見てると、ホントめまいと吐き気と、最終的に、税金取りやすい庶民が格好の餌になっている
それじゃあその税金大事に使うかと言ったら、悪党どもの悪癖に浪費されてるのが事実で
それももの凄い金額
私も、こういう使い方をされるなら、税金など払いたくないと思いますね
彼らにしてみたら、ひねったらいつも蛇口から出てくる水のようなもんですから...
世界が壊れるのにね。