スカイツリー、泣き相撲、奥山座、雲助蔵出し、芭蕉の句、浅草いろいろ日記

半蔵門線押上げ行き、表参道で乗り換えた浅草行、どちらも混んでるわけだ。
スカイツリー景気に沸く晴れた休日。
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泣き相撲、後ろ姿は団十郎審判役。
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わざと外して田原町、観光客のきそうもないような蕎麦やに入ったら、たしかに観光客はいないけれど、地元の競馬フアンがのんびりとテレビ観戦、店の方ものんびり、結構あわてて浅草見番へ。
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俺は一番後ろに柱を背にして座る。
志ん吉「金明竹」
ゆったりした喋り方がいいカモと思っていたらず~っとメリハリ無しのゆっくり、ちょっと飽きてきたら三度目の言い立てで少し調子が出てきた。
今日の客はいづれも”ご通家”、それが目の前1メートル位のところにぎっしりだから硬くもなったかな。
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(これからの休日の浅草寺境内はいろいろ楽しい)

雲助
桜のこと、年を取ると無常感に誘われると西行の歌など引きつつ来年は65、定年だという落語家人生を回顧して
若いころもっといろいろ習っておけばよかったと思う反面若い人たちにはまだまだ教えてないことがいくつもある。感性は人それぞれだが落語の基礎的な技術をもうちょっと教えたい。
と、上下の切り方の応用編、扇子の使い方、茶と酒の飲み分け、、時そばを教えた時に最後に弟子が「ところで肩に何か担いでいるふりをするのは何ですか」と尋ねた、車を曳くものだと思ってたらしい、などと笑いながら、たしかに俺だってもうよくわからないことが結構増えている。
先天的に盲目な人は恐ろしいということが分からないから杖を後ろに顔を突き出して歩くが後天的に目が見えなくなった人は杖を前にして恐る恐る歩く、なかには勘がいい事を自慢に杖を肩に担いで唄を歌いながら歩く人もいる。
うまいなあ、すらっと「景清」の定次郎が現れた。
日朝様に願をかけて満願の日に少し視界が明るくなったてきたと思ったら隣に脂粉の香り、どうやら妙齢の盲目の美人らしい、ついつい邪心を起こすと途端に視界は真っ暗、ふてくされて日朝様にごろを巻いていると通りかかった石田の旦那が叱ったり慰めたり、上野の清水さま(景清がくり抜いた目を納めた京都の清水様の出店)に百日、それでだめなら二百、三百日の願をかけろと勧める。

百日の願明の日、目が明かず怒ったり悲しんだりしていると、ふたたび石田の旦那が様子を見に来てまだまだあきらめずに明日からも、、ととりなし共に帰る途中で俄かの落雷、定次郎は目を回して倒れてしまう。
さあ、そこで俺が分からないのは、こんなに親切な石田の旦那が定次郎を介抱することもなく一人で逃げ帰ってしまうのだ。
それからもう一つ分からないのは、定次郎が「今日まで百日、一日も欠かさずお参りして出したお賽銭を返せ、泥棒!」と観音様に怒りまくるお賽銭とはいったいいくらくらいだったのだろう。
日朝様にも21日願かけているしなあ。

俺は昨日浅草寺に200円出したが、ずっと前に若い人たちの声を聞いたら、10円5円という人もたくさんいたのには驚いた。

石田の旦那の不可解な(それとも当然の?)行動のわけ、とお賽銭のこと、雲助師匠にオセーテもらいたい。
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話は脱線するが、浅草見番がある柳通りには芭蕉の「奥の細道」の句碑が並んでいるのだが、冒頭の句、この句の意味も分かるようで分からない。
嵐山光三郎は「魚の目は泪」を見送りに来た弟子の杉風の泣いている姿を歌ったと解している。
芭蕉の死出の旅路を送る涅槃図だという解釈もある。
これは小満ん師匠にでも訊いたら教えてくれるかしらん。

さて雲助は席を立たず、そのまま「人情噺 火焔太鼓」
落とし噺である火焔太鼓を、あれはお父ちゃんの噺だからと嫌がる馬生師匠に今松と三顧の礼をつくして教わったエピソードを話して(想像がつくと思うけれどこういう話が聴けるのが雲助独演会の幸せなのだ)、なぜ”人情噺”なのかと説明する。
若いころ、嫌いな評論家に、雲助の口調は落とし噺に向くとか向かないと書かれて、腹いせに密かにこの噺を人情噺の口調でやってみたら面白かった。
それで、今日は、あくまでシャレとして、やらせていただきますとさ。
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冒頭のお上さんが生活苦あふれてしかし、貞節な妻よろしく「ちょいとお前さん、、」と始めたとたん場内大爆笑。
SPをLPの回転で聴くような、浴衣を脱がずに温泉に(気持ちいい面もある)入ったような、みょうちきりんの火焔太鼓。
最後に50両、おかみさん「しえーっ!」、歌舞伎仕立てで悶絶しそうになるところで場内の笑いはクライマックスに。
その間、笑いが絶えなかったのは客が本寸法の「落とし噺 火焔太鼓」の粋をよく知っているからその対照のおかしさに堪らなかったのだ。
まあ、でも短い噺で、あのくらいが限度だ、もっと続けるとだれるだろう。
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(終わってからの居残り会分科、場内馬券売り場脇の屋台店で)

仲入り後は羽織も着ないで雲助「五人廻し」
吉原遊郭がないからこういう噺がかえって話しやすい、実際には陰惨なところだったでしょうから、と前置きをして「廻し」について解説、もっとも今日の客は必要ないかもしれないが。

哀しいモノローグのすがれた職人、「ほーほーほーほー」、先日テレビでみた岩下何とかさんみたいに笑うオカマッポイ若旦那、「男の女郎買いの本質を那辺にあると心得る」漢語まじりで恫喝する旧士族、「ちょっくらこけこ、おらこうみえても江戸っ子だ」お馴染み田舎甚助、四股を踏む力士、五人の煩悩の塊・煩悩の佃煮と化した哀しき男どもを活写して楽しい半日は終わった。
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アルバイトの娘、台湾からきて2年、昼間は専門学校に通って観光ガイドの資格を取るんだと、あと1科目だけになったと、笑顔が素晴らしい、いいガイドになるだろう。
震災で一度は帰ったけれどまた来日したという。
Commented by maru33340 at 2012-04-22 13:08
昨日読了したばかりの小川洋子『原稿零枚日記』に「泣き相撲」を見る印象的なシーンがありました。シンクロニシティーですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-22 14:10
maru33340さん、どんな気持ちで洋子さんは泣き相撲を見たのでしょうか、興味あるなあ。
Commented by ほめ・く at 2012-04-22 17:39 x
お賽銭ですが、誰かに仏様への「ご縁」だから「五円」が正しいと教わってずっと五円にしてます。無い時は十円、これで「ご縁」が2回分。女房からは「あんたケチだわねぇ」と非難されてますけど。
Commented by 豆ママ & 豆太 at 2012-04-22 21:21 x
こんばんは、今日は浅草で巧い落語と美味しいお酒だったんですね!
さて、お賽銭、私も「ほめ・くさん」同様、大抵「ご縁」の5円。たまに豆太くんの分(5円)+5円。無いときはなし、か10円。ケチですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-22 21:40
ほめ・くさん、奥さまから非難されるのはなかなか。
定次郎はいったい毎日いくらあげたのでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-22 21:42
豆ママ & 豆太 さんも御縁党でしたか。
百日でも5百円、それじゃ定次郎のように文句も言えないですね^^。
Commented by 豆ママ & 豆太 at 2012-04-22 22:52 x
毎朝晩毘沙門天に詣でてますが・・・そういえばそこは「無し」でした。「賽銭返せェ~」どころか「たまには賽銭寄越せェ~」と言われてるかも、です。
Commented by c-khan7 at 2012-04-22 23:53
浅草充実日記ですね。
泣き相撲。赤ちゃんが泣くのは可哀想な気もしますが、、
可愛くて、見ている方は笑っちゃいますね。
Commented by mama at 2012-04-23 08:10 x
時間が自由になったら、ゼッタイに雲助さんは聴くぞ~~!それまでsaheiziさんや幸兵衛さんのブログを楽しみにしています!!
「鳥啼き」と「き」が入らないんだなあと目に留まったことがあるんです。いろいろな解釈がありそうですね。
Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-23 08:52 x
雲助、良かったですね。
「居残り分科会」、つい飲みすぎました^^
次回開催が日曜というのが残念。次は、たぶん銀座ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-23 10:27
豆ママ & 豆太さん、考えてみれば毎朝仏壇に祈って家族の無事を願うのですが、それは水一杯だけです。
なんか面白いですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-23 10:30
c-khan7さん、浅草いろいろ日記、寸借しました^^。
「泣け~泣け~」って、いつまでも泣かない子もいるんですね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-23 10:31
mama さん、陶淵明の詩を踏まえているとか。
奥の細道はもう一度ちゃんと読みたいと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2012-04-23 10:33
小言幸兵衛 さん、人形町、銀座、浅草、新宿、、会場には事欠かないですね^^・
宇姫さんの健闘を祈りたい。
Commented by 創塁パパ at 2012-05-04 08:51 x
行かれず、残念(苦笑)
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by saheizi-inokori | 2012-04-22 10:23 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(15)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori