芸協が抜擢人事をやらないワケ 桃太郎VS寿輔 犬猿二人会

落語会、昨日のを優先しよう。
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上野広小路亭、腹ごしらえで食べた富士そば、桜エビのかき揚げの写真がうまそうだったのに実物はひどい。
メリケン粉の塊を食っているみたい、桜エビは幻覚のごとくで実体はないに等しい。
鯉昇はここで「ベートーベン亭」のインスピレーションを得たのかもしれない。

ひどい続きは前座・吉好、ながながとマクラをやって、新作「英会話」が落語にはならかった。

寿輔のマクラも長かった。
ほんとは「英会話」をやろうと思って出てきたのだが前座がやるのを袖で聴いていて「こんなにつまらない噺だったか」って、ちょいと厳しいコメント、すぐにシャレですよ、とフォローはしたが、手遅れ。
内視鏡検査を受けたという話から健康ネタをひとしきりやって、時間がなくなってから客のリクエスト、「善哉公社」と「生徒の作文」のうち6分でできる「生徒の作文」をやった。
中入り後の出で鶯春亭梅橋のネタを全面的に書き換えたものだという。

鶯春亭梅橋という人、帰宅後WIKIで調べると、今輔の弟子、推理作家の都筑道夫の兄、暗い芸風だったので名前だけでも明るくと、正岡容が命名した由、「幽霊タクシー」などの新作があり将来を期待されたが結核のため1955年に29歳で夭折したとある。
寿輔の落語もさることながらこの噺家の物語を聴きたいような気持になる。
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三月は落語会が多いという桃太郎、でも客は一部の噺家を除いて少ないとぼやき。
先日日本橋劇場で三人会(俺が聴いたのとは違う)をやったが300席のうち50席しか埋まっていなかったので主催者ともめたそうだ、やる前から分かっていたのに、って。

芸協でも真打が誕生するので歌丸以下幹部が記者会見をしたそうだ。
朝日の記者が「芸協は落語協会のような抜擢人事はしないのか」と質問、朝日は芸協批判記事を書いているから歌丸はカチンと来て「芸協は芸協です」とにべもない。
桃太郎がとりなす形で説明したのは
36人抜いて真打になった小朝はいまだに寄席に出ない。着物を着かえるときは車の中で着かえてみんなのいる楽屋を通らないで囃子の横から出入りする。
36人抜いたらその36人からは生涯怨みを買うんです。
噺家の世界なんてちっぽけな器量で固まっているから抜擢なんてやらないで順送りが一番平和なのだ。
だいたい入門して10年くらいでその後何十年のことが分かるのか、やめるまで差をつけてしまっていいのか。
芸協には抜擢するような人材もいなのも事実だけど、と付けたりを言って、いくつか面白い事例(自身のことも)をあげて噺家たちがいかに狭量で執念深いかを語る。
分からないでもないけれど、、俺はここはハシモト派かもしれない。

ネタは「おしの釣り」
与太郎がシンからバカじゃなくてこれでなかなか油断できないキャラであるってのが巧まずして、いや巧んでか、うまく出ていた。
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(広小路亭から)

中入り後はふたたび桃太郎
私は人生間違えたかなと思うことがある。
入門したころは圓歌を筆頭として爆笑派全盛だったからそっちを目指したが今は爆笑派はほとんどいないしお座敷もかからない。
爆笑派は噺家のキャラを前面に押し出すから人情噺をしんみり語るのは苦手だ。

小満んとか今松とかしょぼい地味な人だと噺が前に出てくる。
長く落語を聴いているとたいてい地味な噺家が好きになるそうだ。
でも私らが相手にしている客の95パーセントは二度と寄席に来ない人だからなあ。
ちょっと懐旧談。
師匠・柳昇がいかに執念深い人だったかを面白おかしく懐かしさをどこかに漂わせて聴かせる。
こういうのは好きだな。
昇太が笑点に出たことで昇太の落語かとしてのステータスは下がった。
笑点の面々が全国各地を回ってはつまらない落語をしゃべっている。
ま、異論はない。

席亭の加藤さんにはやるなといわれて封印していたけれど、やってくれというファンに逢ってやってみたら面白かったので敢えてやります、と「歌謡曲を斬る」
夜霧よ今夜もありがとう、、、どこの世界に夜霧にお礼を言う人がいる?!
書いてみようとするともうすっかり出てこないが、要するに次から次へと歌謡曲の題名や歌詞にいちゃもんをつける。
ただそれだけ、ぶっきらぼうな口調と間の良さで笑わせるのだ。
文治がマクラでやっていたような気もする。

狭い会場に40人近く、いずれもややマニアックな客は笑い続ける。
笑うたびに空気が弛緩していって終わるころには倦怠の極。
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寿輔はあがると
もうたっぷり笑ったから笑い疲れたでしょう。今度は泣く噺をします
と断って「ラーメン屋」

子どものないラーメン屋夫婦とヤサグレの青年の邂逅、そして新たな家族の誕生。
寿輔の師匠・5代目今輔のネタだ。
お婆さんの口調など”お婆さんの今輔”が彷彿。

みっちり熱演だった。
Commented by sweetmitsuki at 2012-03-24 19:13
画像を見た瞬間、なんだか富士そばのかき揚げそばみたいだと思ったのですが、まさか佐平次さまがあんな拙いそばをUPする筈がないと思い気を取り直して続きを読んだらやっぱし富士そばだったので驚いてしまいました。
あれは桜えびじゃなくってなんか別の小エビでしょう。
あの値段なら仕方ないのですけど。
そんな拙い富士そばが嫌いじゃないのと同じで、笑点の落語も嫌いじゃありません。
TVで見れる落語ならこの程度かな、と。
Commented by saheizi-inokori at 2012-03-24 21:32
sweetmitsukさん、エビの皮だけとか、ね^^。
たしかに安いです。
だから今度はワカメだけのにします。経験済みですから。
落語は笑点のメンバーで聴くのは昇太、歌丸、小遊三といったところでしょうか。
Commented by 豆ママ at 2012-03-24 22:21 x
この会、「本気」の寿輔さんが聴きたくて行くつもりだったんですが・・・急用で行けなくなりました。それも縁なんだな・・と思ってました。
寿輔さんの「文七」とか・・・凄いんでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-03-25 09:16
豆ママさん、この日は女性が少なくて寿輔も不満をもらしていましたよ。
私は女性が好きなのに、男の方はどうでもいいのに、って。
でもラーメン屋は師匠・今輔に捧げるがごとくでした。
この日の桃太郎のマクラなどで師匠たちの思い出話が多かった、その流れをそのまま受けての熱演かもしれないです。
Commented by ほめ・く at 2012-03-25 09:45 x
抜擢人事の件は、サラリーマン時代をふりかえると身につまされる話です。年功序列か能力主義(成果主義)、どちらが良いのか未だに議論の分かれる所ですし。
所詮は人間社会のドロドロに行きつくんでしょうかね。
Commented by saheizi-inokori at 2012-03-25 10:38
ほめ・くさん、噺家に負けず劣らずサラリーマン社会の嫉妬は凄まじいですね。
でも聴く方からすると嫉妬に負けず才ある噺家がどんどん面白い噺を聴かせてくれるのが一番です^^。
寄席という公開の舞台があるんですから。
Commented by 創塁パパ at 2012-03-25 18:21 x
佐平次さん。お疲れさまでした。私は「日高屋」でした。あそこは意外とまずくないです(笑) 桃・寿こういう噺家さんも必要ですね。反省会の「焼き鳥」はいまいちいや、いまにでした(苦笑)
Commented by saheizi-inokori at 2012-03-25 21:01
創塁パパ さん、日高やの方がわずかに高いかもしれないですね。
やはりあまりうまくないとせっかくの余韻が醒めててしまいます。
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by saheizi-inokori | 2012-03-24 14:32 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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