師弟4人の個性が生きたチャレンジ 五街道四門三月双蝶々初夜
2012年 03月 15日
俺にしては久しぶりに人形町へ。
だいぶ暖かくなった街を歩いていつもの無添加減塩ウメボシを買う。
リュックに詰めているとレジのおばさんが「男の人って長細い財布をお尻のポケットに入れてるけど、あれってスリにやられないかしら」とか男の不用心について話しかける。
「女の人のバッグもひったくりに狙われると危ないんじゃないの」と俺、ときならぬ防犯会議。
いつもの牡蠣蕎麦をと思ったが、通りかかったラーメン屋に気が動いて入ってしまう。
手もみ麺、国産素材、自然素材、、いろいろ売り文句がある、それがほんとだった。
シナチクもしっかり炊いてあってうまいし、焦がしネギも嬉しい。600円。
日本橋劇場、おっ、花道がある。
五街道雲助が雲助十番を無事打ち上げた、そのお祝いだろうか師弟がそろって「双蝶々」を通しでやるという。
もとは圓朝が創ったと言われる、六代目圓生がやった長い噺。
まず、ライトを浴びて花道を二階席に手を振ったりしながら桃月庵白酒が登場。
八百屋長兵衛の息子は手癖が悪く嘘もつき義理の母お光に反抗すること甚だしい。
あることないことお光の悪口を長兵衛に告げ口をして夫婦喧嘩のもとを作る。
見かねて中に入った大家から長吉がいかに悪い子かを教えられて、これは奉公に出すしかないと腹をくくる。
と、ここまでが「長屋」。
悪がきをやるのは白酒のハマリ。
まずは先頭バッター、二三塁間を渋く抜いてヒット。
ちょっと照明を落として浮かび上がった花道を歩いてきたのは蜃気楼龍玉。
マクラで前の圓歌が懐中時計の中身だけ掏られたとか、今の掏りは力でひったくるなどと、まるで俺が漬物やのおばさんと話していたのを聞いてたようだ。
山崎町の黒米屋に上がった長吉は要領よく立ち回るが、そこに胡散臭さを嗅ぎつけた番頭・権九郎は銭湯に行くという長吉の後をつける。
長吉は悪仲間と合流、道行く御嬢さんの簪を掏り取る。
番頭・権九郎は長吉を問い詰めてゲロさせたはいいが、大旦那に黙っていることと引き換えに奥の部屋から50両を盗んで来いと、若旦那と張り合っている吉原の花魁を身請けするのに要るんだと、権九郎、お主も悪よのう。
ちょいとしたいくたてはあったが長吉は50両を手にし、「これをこのまま番頭にやるのもつまらねえ、番頭をぶち殺して、、」ひとりごつのを小僧の定吉に聞かれてしまう。
「かけ護り」を買ってやるから、寸法を測らせろと首の周りを手拭いで測るふりをしながら、ぐい~っと、ああ、可哀そうに殺しちまった。
場内を暗くして龍玉のニヒルな顔が浮かび上がって、悪番頭と単なる悪ガキだった長吉が殺しをたくらむ本物の悪党になっていく語り「定吉殺し」、これもハマリ。
二番バッターは内懐をえぐるクセ玉をみごとに弾き返して二塁打、ランナーは二三塁。
ここで黒い幕が下りるから中入りだと思ってロビーに出たら別の落語会の切符を売っているのでスケジュールを調べていたら場内の拍手が聞こえるのであわてて戻ると、真っ暗な場内、舞台は赤毛氈を引いた上に雲助が、弁天小僧かなんかのセリフを交えながら、浅草で約束した長吉が50両持ってくるのを待つ権九郎になっている。
もうすぐに惚れた花魁と所帯を持てるかと浮かれまくり。
そこに到着した長吉は定吉を殺して腹が据わったのかますます凄みを増している。
すぐにも金をよこせという権九郎を冷たく突き放し、金はやらねえ、力づくで取り上げるという権九郎に、「時代なセリフじゃねえか」とせせら笑う。
「芝居掛相勤申上候」、雲助、柝(き)の音に乗って、思いっきり、気持ちよさそうに、たっぷり殺しの場面。
権九郎を殺した長吉、尻ぱしょりをして、手拭いで頬かむり、あっぱれ天下の大悪党になって、さて見栄を切ったら、奥州目指して逐電だ。
六方踏んで花道を引き揚げる、五街道や!
三番バッター、走者一掃の二塁打。
ここでほんとの中入り。
隅田川馬石も暗い場内、花道を右手のヤゾウで速足で登場。
千住の女郎を買いに行く田舎ぺいだ。
多田薬師の前で袖を引く女がいる。
長吉の悪事にすっかり参った父長兵衛が流れ流れて病を得て立ち上がれない。
貞女・お光が背に腹を変えられず乞食でタツキをたてようとしている。
金をやるから体を売れという男を峻拒したものの、、ひとりになって、、ああ、何も持って帰らなければ、、これはイッソ、、と切ない決意をしたところに速足で差し掛かる若い男。
袖を引いてみたら思いがけない大金をくれる。
風が吹いて提灯が倒れて燃えて、男の被り物がめくれて、あ、お前は長吉じゃないか!
お光は長吉を連れて帰る。
どの面下げて俺に会える!
怒って、謝る長吉、おっかあ、子供のころの俺はおっかあが優しくしてくれればくれるほど憎くなって、、わりい子だった、俺のためにお前たちまでこんなにしてしまって、勘弁してくれ、と50両差し出しても受け取らねえと、、、言ってみても親は親、一緒に住みたくも凶状持ちだ、石巻に帰って魚やをやるからと、帰る息子を呼び止めて、古く汚れた羽織だけれど、これを着ていれば怪しまれねえ、いいか、できるだけ逃げて逃げまくれ、それがお前の親孝行だ、もういちど顔を見せてくれ、、、と涙の別れ、「雪の子別れ」。
裏長屋をでれば本所は雪。
吾妻橋には捕り手が十重二十重。
哀れ長吉はお縄。
極悪・長吉が人間の優しさを取り戻し分別も備わった若者になった顔・たたずまい。
これも馬石のハマリ。
ど真ん中にくる速球をセンター前に運んだ二塁打。
するすると幕が下りてまた上がると4人が居並び「これにて終了」、深々と頭を下げる。
なに?二塁に残塁?
そう、初夜だもの、今度は満塁ホームランでも見せてもらおう。
だいぶ暖かくなった街を歩いていつもの無添加減塩ウメボシを買う。
リュックに詰めているとレジのおばさんが「男の人って長細い財布をお尻のポケットに入れてるけど、あれってスリにやられないかしら」とか男の不用心について話しかける。
「女の人のバッグもひったくりに狙われると危ないんじゃないの」と俺、ときならぬ防犯会議。
手もみ麺、国産素材、自然素材、、いろいろ売り文句がある、それがほんとだった。
五街道雲助が雲助十番を無事打ち上げた、そのお祝いだろうか師弟がそろって「双蝶々」を通しでやるという。
もとは圓朝が創ったと言われる、六代目圓生がやった長い噺。
まず、ライトを浴びて花道を二階席に手を振ったりしながら桃月庵白酒が登場。
八百屋長兵衛の息子は手癖が悪く嘘もつき義理の母お光に反抗すること甚だしい。
あることないことお光の悪口を長兵衛に告げ口をして夫婦喧嘩のもとを作る。
見かねて中に入った大家から長吉がいかに悪い子かを教えられて、これは奉公に出すしかないと腹をくくる。
と、ここまでが「長屋」。
悪がきをやるのは白酒のハマリ。
まずは先頭バッター、二三塁間を渋く抜いてヒット。
ちょっと照明を落として浮かび上がった花道を歩いてきたのは蜃気楼龍玉。
マクラで前の圓歌が懐中時計の中身だけ掏られたとか、今の掏りは力でひったくるなどと、まるで俺が漬物やのおばさんと話していたのを聞いてたようだ。
山崎町の黒米屋に上がった長吉は要領よく立ち回るが、そこに胡散臭さを嗅ぎつけた番頭・権九郎は銭湯に行くという長吉の後をつける。
長吉は悪仲間と合流、道行く御嬢さんの簪を掏り取る。
番頭・権九郎は長吉を問い詰めてゲロさせたはいいが、大旦那に黙っていることと引き換えに奥の部屋から50両を盗んで来いと、若旦那と張り合っている吉原の花魁を身請けするのに要るんだと、権九郎、お主も悪よのう。
ちょいとしたいくたてはあったが長吉は50両を手にし、「これをこのまま番頭にやるのもつまらねえ、番頭をぶち殺して、、」ひとりごつのを小僧の定吉に聞かれてしまう。
「かけ護り」を買ってやるから、寸法を測らせろと首の周りを手拭いで測るふりをしながら、ぐい~っと、ああ、可哀そうに殺しちまった。
場内を暗くして龍玉のニヒルな顔が浮かび上がって、悪番頭と単なる悪ガキだった長吉が殺しをたくらむ本物の悪党になっていく語り「定吉殺し」、これもハマリ。
ここで黒い幕が下りるから中入りだと思ってロビーに出たら別の落語会の切符を売っているのでスケジュールを調べていたら場内の拍手が聞こえるのであわてて戻ると、真っ暗な場内、舞台は赤毛氈を引いた上に雲助が、弁天小僧かなんかのセリフを交えながら、浅草で約束した長吉が50両持ってくるのを待つ権九郎になっている。
もうすぐに惚れた花魁と所帯を持てるかと浮かれまくり。
そこに到着した長吉は定吉を殺して腹が据わったのかますます凄みを増している。
すぐにも金をよこせという権九郎を冷たく突き放し、金はやらねえ、力づくで取り上げるという権九郎に、「時代なセリフじゃねえか」とせせら笑う。
「芝居掛相勤申上候」、雲助、柝(き)の音に乗って、思いっきり、気持ちよさそうに、たっぷり殺しの場面。
権九郎を殺した長吉、尻ぱしょりをして、手拭いで頬かむり、あっぱれ天下の大悪党になって、さて見栄を切ったら、奥州目指して逐電だ。
六方踏んで花道を引き揚げる、五街道や!
三番バッター、走者一掃の二塁打。
ここでほんとの中入り。
千住の女郎を買いに行く田舎ぺいだ。
多田薬師の前で袖を引く女がいる。
長吉の悪事にすっかり参った父長兵衛が流れ流れて病を得て立ち上がれない。
貞女・お光が背に腹を変えられず乞食でタツキをたてようとしている。
金をやるから体を売れという男を峻拒したものの、、ひとりになって、、ああ、何も持って帰らなければ、、これはイッソ、、と切ない決意をしたところに速足で差し掛かる若い男。
袖を引いてみたら思いがけない大金をくれる。
風が吹いて提灯が倒れて燃えて、男の被り物がめくれて、あ、お前は長吉じゃないか!
お光は長吉を連れて帰る。
どの面下げて俺に会える!
怒って、謝る長吉、おっかあ、子供のころの俺はおっかあが優しくしてくれればくれるほど憎くなって、、わりい子だった、俺のためにお前たちまでこんなにしてしまって、勘弁してくれ、と50両差し出しても受け取らねえと、、、言ってみても親は親、一緒に住みたくも凶状持ちだ、石巻に帰って魚やをやるからと、帰る息子を呼び止めて、古く汚れた羽織だけれど、これを着ていれば怪しまれねえ、いいか、できるだけ逃げて逃げまくれ、それがお前の親孝行だ、もういちど顔を見せてくれ、、、と涙の別れ、「雪の子別れ」。
裏長屋をでれば本所は雪。
吾妻橋には捕り手が十重二十重。
哀れ長吉はお縄。
極悪・長吉が人間の優しさを取り戻し分別も備わった若者になった顔・たたずまい。
これも馬石のハマリ。
ど真ん中にくる速球をセンター前に運んだ二塁打。
するすると幕が下りてまた上がると4人が居並び「これにて終了」、深々と頭を下げる。
なに?二塁に残塁?
そう、初夜だもの、今度は満塁ホームランでも見せてもらおう。
「少数精鋭」という言葉は、この一門のことを表す言葉かもしれませんね。
選んだネタが、また渋い^^
あのラーメン屋さんでは食べたことないので、ぜひ次回行ってみます。
選んだネタが、また渋い^^
あのラーメン屋さんでは食べたことないので、ぜひ次回行ってみます。
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同じ殺しの場面でも龍玉のリアリズム、雲助の様式美、どちらも結構でした。
同じことを書いても佐平次さんの臨場感にはかないませんね。
同じことを書いても佐平次さんの臨場感にはかないませんね。
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saheizi-inokori at 2012-03-16 00:04
小言幸兵衛 さん、実は今日もあそこで別のラーメンを食って長講三番と聞いて居残り分科をやってきましたよ^^。
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saheizi-inokori at 2012-03-16 00:05
ほめ・く さん、何をおっしゃいますやら^^。
しかし楽しい仕掛けでしたね。
しかし楽しい仕掛けでしたね。
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よたろ〜
at 2012-03-16 06:28
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会場、寒かったですね...
白酒を聴いてると、毎度、眠りに落ちます... ズビバゼン。
龍玉(初めて聴きましたが、時々、圓生の語尾を感じた)の後、小用に立ったら、やおら雲助が始まってアタマを見逃した!
双蝶々リレー口演は画期的な企画なので、(歌舞伎などに疎いアタシは定式幕と緞帳を見誤ってしまい)予め「雲助の後に仲入り」と、アナウンスがほしかったなぁ... です。
馬石、「落語物語」ではヤな役を演じていましたねぇ。実に悪声ですが声が通ります!志ん生の前名でもあって、五街道ファミリーは(どこからもってくるのか)物凄い名跡ネットワークを拡げてますな...
ところで御主人!
梅干し買ってラーメン喰って、よくぞこんなにブロク書けますなぁ... 落語通にもホドがあります!
m(_@_)m
白酒を聴いてると、毎度、眠りに落ちます... ズビバゼン。
龍玉(初めて聴きましたが、時々、圓生の語尾を感じた)の後、小用に立ったら、やおら雲助が始まってアタマを見逃した!
双蝶々リレー口演は画期的な企画なので、(歌舞伎などに疎いアタシは定式幕と緞帳を見誤ってしまい)予め「雲助の後に仲入り」と、アナウンスがほしかったなぁ... です。
馬石、「落語物語」ではヤな役を演じていましたねぇ。実に悪声ですが声が通ります!志ん生の前名でもあって、五街道ファミリーは(どこからもってくるのか)物凄い名跡ネットワークを拡げてますな...
ところで御主人!
梅干し買ってラーメン喰って、よくぞこんなにブロク書けますなぁ... 落語通にもホドがあります!
m(_@_)m
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rinrin
at 2012-03-16 07:50
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saheizi-inokori at 2012-03-16 08:59
よたろ〜さん、冷やかしなしでせうよ。
買った梅干しが酸っぱいです^^。
あの定式幕、落語会なんだから事前に案内が欲しいですね。
しかもロビーで切符や香水を売ってるんだから!
まあ、そういうこともご愛嬌、楽しい春宵、ちょっとさびいけど、でした。
買った梅干しが酸っぱいです^^。
あの定式幕、落語会なんだから事前に案内が欲しいですね。
しかもロビーで切符や香水を売ってるんだから!
まあ、そういうこともご愛嬌、楽しい春宵、ちょっとさびいけど、でした。
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saheizi-inokori at 2012-03-16 09:01
rinrin さん、私の学生時代には人形町末広があったんです。
先日居酒屋で隣に座った地元のおじさん二人に尋ねたけれどどこにあったか、意見がわかれていましたよ^^。
先日居酒屋で隣に座った地元のおじさん二人に尋ねたけれどどこにあったか、意見がわかれていましたよ^^。
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豆ママ
at 2012-03-16 21:55
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いらしてたんですね!?
馬石さんは、花道で、お尋ね者らしく袂で顔を覆ってました。役者ですねぇ~~。なかなかの御趣向でしたね!
馬石さんは、花道で、お尋ね者らしく袂で顔を覆ってました。役者ですねぇ~~。なかなかの御趣向でしたね!
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mama
at 2012-03-16 23:18
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わ、私が出掛けられない時期に・・・クヤシイ。けっこう通っていますのに、この会場に花道が置かれるのも見たことがないのです。
雲助師匠は、ほんとによい企画をなさいますよね。そして、めずらしい噺をきかせてくれるのが楽しみです。
雲助師匠は、ほんとによい企画をなさいますよね。そして、めずらしい噺をきかせてくれるのが楽しみです。
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豆ママ
at 2012-03-17 00:18
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saheizi-inokori at 2012-03-17 01:04
豆ママ さん、噺家が独特の演芸空間を創ってくれたような気がします。
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saheizi-inokori at 2012-03-17 01:06
mama さん、たしかにこういう席に出会うとずいぶん得をした気持ちになります。
だてに隠居をやってんじゃねえぞって^^。
だてに隠居をやってんじゃねえぞって^^。
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saheizi-inokori at 2012-03-17 01:08
豆ママ さん、迷ったのですが髪結新三は買わなかった。
やっぱり買うべきか?
やっぱり買うべきか?
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豆ママ
at 2012-03-17 19:36
x
「髪結新三」も何かサプライズがありそうですよね?!
気になりましたが・・・予定が立たず見合わせました。
気になりましたが・・・予定が立たず見合わせました。
by saheizi-inokori
| 2012-03-15 12:08
| 落語・寄席
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