おつかれさまでした! 俺の観た談志の最後

2009年8月「談志ひとり会」(国立演芸場)の第三夜が俺の談志見おさめだった。
その模様は、痛々しい?アッパレ?執念だと言うが 「談志ひとり会~夏三夜~」、という記事にしてある。
「源平盛衰記」をちょっとやりかけて「堀之内」もいい加減にしかできなくて、胡坐をかいて「ちょっと話をしましょうや」と云って小噺を少ししたと思ったら
ちっちゃい子は来てますか?
と場内に呼びかけた。
11歳の男の子が手をあげたら座布団持ってこさせて自分の隣に坐らせた。

そしてその子に云ったもんだ
あのねえ、落語ってのはねえ、ひとことで言うと
ワッと場内が湧いて
常識に対する非常識なんだよ。
世の中はこうしなくちゃならないという常識に対する非常識
座布団の前に扇子をおいて
こっちがノーベル賞とか医者とかエライって言われる奴、そしてこっちがそうじゃないやつ、それでこっち側のノーベル賞だとかなんとか言ってるやつがこっち側の人間、とくに子どもにどう話が出来るかが問題なんだ、、、
常識ではいけないってことでもやっていいの。
卑怯とか汚いとかの集大成が落語なんだ
自分に言い聞かせているような、念を押しているようなことを云って、あとは立てつづけに小噺をいくつもやった。
その小噺も↑の記事に書いた。
立川談修のブログには子供と談志の後ろ姿の写真が載っている。
とてもいい写真だし記事も好い記事だ。

2008年3月の独演会でやった「天災」はよかった。
その前の1月、談志一門会でやった「源平盛衰記」はたどたどしくて観ているのが辛かった。
おい!もたないぞ。
(客席に)もう少し、終わるまで(帰るのを)待って下さい。、、こんなことを言う芸人じゃなかった、、。
40分、どうにかサゲまでやって
ただ、懐かしいだけで、、思い出のためにやったんですから、、そのために拍手してください。
一旦下がった幕があがって
いつもはこうして幕が揚がるときは優越感があってその優越感を客席と共有したい気分があるのだけれど。
今は謝りたい。
、、、
落語の傘の中で生きてきたんじゃなくて談志の傘の中で生きてきた。
だから、、これからひと月ほどで考えを決めたい。
と云って最後に
よく我慢してくださいましたァ!
と終わった。

そのあと、俺は観られなかったが、とてもいい出来の高座があったということを人づてに聴いた。

良かったり、もうダメだったり、、最後まで落語と格闘をして一流の高座を勤め、談志なりに精一杯のサービスをしていた。
孤独な闘いだったのではないか。
おつかれさまでした。






Commented by kaneniwa at 2011-11-24 01:26
現代の生きた芸人伝であり芸人批評である
『談志百選』 はずっと愛読書でした。

この日が来ることが近いことは充分に予感していましたが、
立川談志の逝去をネットニュースで知りました。

合掌

BYマーヒー
Commented by ほめ・く at 2011-11-24 04:51 x
いやー、素晴らしい追悼文ですね。
談志は果報者です。
Commented by maru33340 at 2011-11-24 07:18
談志さん、まさに戦い続けた生涯でしたね。本当にお疲れさまでした、と言いたいと思います。
Commented by HOOP at 2011-11-24 10:42
挑戦する常識のなくなってしまった日本は、
本当の落語の危機なのかもしれません。
ベテランか若手かを問わず、厳しい時代です。

合掌

Commented by saheizi-inokori at 2011-11-24 10:58
kaneniwaさん、好き嫌いはあっても現代の落語にもっとも大きな影響を与えた人だと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2011-11-24 10:59
ほめ・くさん、あの場面に遭遇できた私が果報者です。
Commented by saheizi-inokori at 2011-11-24 11:00
maru33340さん、羨ましいような闘いでもありました。
Commented by saheizi-inokori at 2011-11-24 11:02
HOOPさん、伝統芸能とは常に危機との戦いだと思います。
談志や小三治の挑戦が喝をいれました。
これからが楽しみです。
Commented by みい at 2011-11-24 21:46 x
こういう人は、もう現れないのでしょうね。
75歳は若いですよね。
ご冥福をお祈りします・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2011-11-24 22:39
みいさん、若いような一杯生きたような、密度の濃い生き方でしたね。
Commented by junko at 2011-11-26 16:25 x
Ciao saheiziさん
談志さんが亡くなったと聞き
saheiziさんの昔の記事を思い出しました

思いきり、好きなように生きた人生ですよね
でも、彼自身辛かった時もあるような気がするけど
ああやって外に向かって超強気の人は、逆に妙に繊細なところがあるものですから

楽になったんじゃあないかなあ...なんてふと思いました
Commented by saheizi-inokori at 2011-11-26 21:02
junkoさん、私もそう思いますよ。
自分の美学を貫いた人だと思います。
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by saheizi-inokori | 2011-11-23 23:13 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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