野田政権はTPP”交渉”をやる能力があるのか 韓国FTA、強行可決は催涙弾騒ぎ
2011年 11月 23日
TPP交渉推進派の言い分の一つには韓国がアメリカとFTA(二国間の自由貿易協定)を結ぶと自動車輸出などで日本が負けてしまうということがある。
しかしそれは輸出関連企業の言い分にすぎない。
韓国GDPにおける輸出の割合は45%だが日本のそれは16%程度だ。
前原がTPPは「農業対他産業」、1.5%対95.5%の戦いだなどと云ってるのはためにするウソ、実際は「輸出関連産業対国民経済全般」の戦いなのだ。
というのは
TPPについてアメリカでは24のワーキンググループを設けているがそれは北米自由貿易協定(NAFTA)の条項を反映したもので、工業製品や農産物などの物品の関税はもとより、工業製品の規格、農産物の検疫といった非関税障壁、通信、金融・保険、法務・会計などのサービス貿易分野だけではなく、投資、労働、環境、知的財産権、競争政策といった貿易以外の経済問題全般を包摂しているからだ。
アメリカは1994年以来毎年「年次改革要望書」なるものを日本があたかも51番目の州であるかのように微に入り細に入り内政に対する要求を押し付けてきた。
その具体的かつ屈辱的な内容はアメリカ大使館のHPで誰でも日本語で読める。
読んだらびっくりするほど“懇切丁寧”に日本を指導している。
その年次改革要望書は平成20年に国民にはなにも知らされないまま打ち切られた。
その代わりに2011年2月から始まったのが「日米経済調和対話」だ。
ここでアメリカから要求された事柄がTPPの交渉の内容となる。
すなわち、TPP交渉、「日米経済調和対話」、国内の「規制・制度改革」が三位一体となって、アメリカによる日本改造が進められていく、というのが上述の関岡英之の見立てだ(関岡「国家の存亡 『平成の開国』が日本を亡ぼす」)。
TPP交渉はやってみなければわからないなどと政府は目くらましみたいなことを云っているが実際は上に上げた各項目で具体的にアメリカがなにを強硬に押しつけてくるかはわかっている。
そのなかでも恐るべき条項のひとつにISD条項がある。
「ざまあみやがれい!」さんが全文書き起こしているなかでISD条項についての一部を引用する(このほかのやりとりもTPPの問題点をいろいろ追及しているから全文読まれるといいと思う)。
佐藤委員の質問
WTOには投資協定におけるISD条項……いわゆるISD条項というのは、1企業投資家がその参入先の相手国を国を相手取って訴訟できるという条項でありまして。WTOにこういう条項は存在しておりません。これに対して野田総理の答弁は
そして米・豪…オーストラリアとのEPAではですね、オーストラリアがこれに断固として反対をして削除をした経緯があります。そして米韓FTAではISD条項が入ってしまいましたが、韓国側がこれで激論で今燃えていて、議会で承認できない状況になっている。そういうことであります。
まあ日本の各国の場合のEPAはですね、これはあるんですが。ISD条項はありますけれども、実際に発動事例がないから大丈夫だろうと、そういう答弁を役所はするわけでありますが。
実際ですね、これは相手国が違うんですね。え、今度はアメリカが相手になってくれば、当然我々が見なければいけないのは、かつてNAFTAで何が起きたかとこういうことを事例にしながら我々は戦略を練っていかなければいけない。そういうことであります。
そこで実際にですね、NAFTAの事例をご覧いただきます。資料のページ2でありまして。このNAFTAにおいてですね、このISD条項で1企業・投資家が国を訴えた紛争解決事例。一番最後の行で、まあサンベルトウォーター対カナダ。1999年の事例をご覧いただきたいと思います。
これはですねカリフォルニア州の企業サンベルトウォーターがカナダ政府をNAFTA条約の第一、11条に基づいて、提訴をした案件でありまして。この損害賠償請求の金額は、当時105億ドルという非常に膨大なものであります。いったいこれは何がどうしたかといいますと。実はカナダの州政府であります、ブリティッシュコロンビア州政府が、このサンベルトウォーターと契約を結んで、数億万ガロンの水の輸出の契約をした。それをまあ、ブリティッシュコロンビア州政府があるとき停止をしたために、まあ利害が損なわれたということで、サンベルトウォーターが、カナダ政府を訴え賠償請求として105億ドルを請求したという案件でございます。まあこの他にもたくさんこういう訴訟が実際にISD条項で起きてるんですね。(中略)
仮に今後ですね、日本が国内法において、『これは水の安全保障に関わる事案であるから、国内法を設置して外国企業と国内企業によって水資源の近隣の土地の買収は何らかの差別化をするんだ』と、そういう事案を設けたとしてもですね。これは条約ですから、国内法が曲げられるんですよ。そのことをですね、野田総理いかがお考えですか? 総理、お伺いします」
基本的には我が国の守ってきたその法律で、対応できるように交渉をしていきたいというふうに思いますトンチンカン、もめた挙句の答弁が
あの、ISDSの話で、あの、話だったもの、もんですから、ちょっと私あまり寡聞にしてそこ詳しく知らなかったんで、充分な答えじゃなかったんですが。アメリカと各国におけるもっともホットな対立点となっているISD条項を“寡聞にして知らなかった”という総理の発言はさすがのTPP推進派メデイアも報道したから既に知っている方も多いと思う。
野党側は
(ISD条項は)国内ルールが守られず、中小企業や国民が不利益をこうむる可能性があるとして、同条項の廃止・留保に向けてアメリカと再協議を主張、李大統領は
FTA発効後、3か月以内に米国に再協議を求めるという妥協案を示したが野党は納得せず強行採決に至ったという。
TPPの内容を国民に知らせずに遮二無二交渉に突っ込もうとする政府。
せめて総理大臣くらいには内容を説明しておいたらどんなもんだろう。
それとも知らなければ余計なことを言わないからいいとでも、、。
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蛸
at 2011-11-23 16:26
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TPP、ネット上でかなりの人が意見を書いているけれど(といっても、私自身は書いていない)、いったい自分がそれにどんな形で行動を起こすことが出来るのかわからない。そこが問題だなぁ、
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antsuan at 2011-11-23 17:42
米国に対抗してユーロ圏を創った欧州は分裂寸前です。現代は世界的にも地方分権の時代なのだと思います。一神教の経済原理主義国である米国は、債務不履行寸前の状態なのに、どこまで独善的に突っ走るつもりなのでしょうね。
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HOOP at 2011-11-23 18:27
宗像直子女史だけの責任ではないですよね
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c-khan7 at 2011-11-23 18:54
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HOOP at 2011-11-23 19:16
沈むのがわかっている泥舟に高性能エンジンを積みたい、というのが米国の考えでしょ。そんなことより、防水加工をしっかりしてから船を浮かべるべきなんです。
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saheizi-inokori at 2011-11-23 20:34
蛸さん、なにはともあれこんなに拙速に無知のまま交渉を進めることに反対すべきだと思います。
よく分からない、という人が多いのですから、はっきり賛否(私は反対)の意見を表明することも大事だと思います。
よく分からない、という人が多いのですから、はっきり賛否(私は反対)の意見を表明することも大事だと思います。
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saheizi-inokori at 2011-11-23 20:35
antsuan、破産寸前だからこそアメリカは恥も外聞もなく云うことを聴く日本を侵略しつくそうとするのでしょうね。
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saheizi-inokori at 2011-11-23 20:38
HOOPさん、宗像なる官僚にそんなに力があるのでしょうか、とてもそうはおもえません。
泥舟だからこそ遮二無二日本やアジア各国にアメリカの要求をおしつけて中国に対抗しようというのが戦略でしょう。戦略、悲鳴か。
泥舟だからこそ遮二無二日本やアジア各国にアメリカの要求をおしつけて中国に対抗しようというのが戦略でしょう。戦略、悲鳴か。
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saheizi-inokori at 2011-11-23 20:40
c-khan7さん、アクセルとブレーキの違いも分からない泥鰌運転士に任せていては危ないです。
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mama
at 2011-11-23 22:20
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TPPが日本の国益になるかどうかが問題なんじゃなくて、それ以前に、総理大臣がTPPについてよく知らないという事実・・・恐ろしいです。
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saheizi-inokori at 2011-11-23 23:25
mama さん、そういうことです。
強力なリーダーシップが必要とされる局面で問題のありかすらわからない首相を戴く日本は危うさも窮まったというべきです。
強力なリーダーシップが必要とされる局面で問題のありかすらわからない首相を戴く日本は危うさも窮まったというべきです。
by saheizi-inokori
| 2011-11-23 15:52
| 責任者を出せ!
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