”思い出せない記憶”が俺を支えている  茂木健一郎 「脳と仮想」(1) (新潮社)

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「思い出せない記憶」という言葉がでてくる。忘れてしまったとか言うのとはちょっと違う。さまざまな体験の痕跡とでも言うべきものが脳の中に蓄積されている。それらの”過去の経験”は、エピソードのような形ではっきり思い出せない事柄も多い。そしてそういう”記憶”の方が切実な記憶とも言うべきで我々の生き方や世界観を創る土台になっている。それは又、生まれる前に人類として、日本人として蓄積してきた記憶でもある。言葉はそのような記憶が積み重なってできたもの。だから自分が実際に見聞きしていないことでも懐かしかったり、一つひとつの言葉の意味を辞書を引かなくても何となく理解できるのだ。言葉は過去と今をつなぐ結節点の役割を果たしている。”悲しい”という言葉には戦場で妻子に会えないまま死んで行く戦士の気持ちもこめられている。

すなわちオギャアと産まれた瞬間に、すでに何らかの人類としての記憶をもっている。そういう記憶があるから、何が起こるかわからない未来に向き合っていける。

こういうことを考えると、何かとても謙虚な気持ちにならないか?言葉をもっときちんと使う気持ちにならないだろうか?

梨木香歩「沼地のある森を抜けて」(新潮社)の「ぬか床」や「シマ」の世界に連なる物語だ。

Tracked from ビッグイシュー応援団(第.. at 2006-02-11 11:26
タイトル : ■43号 いま心を考える
脳科学者・茂木健一郎氏がゲスト編集長。 「未知なるモノ」を求めるのが脳。 脳からの要求に現代人はこたえることが出来るのか? 団長と団員で考えます。 作家・島田雅彦さんの上げる「脳に快感」をもたらす方法に団長は賛意を表します。... more
Commented by みい at 2005-10-29 10:21 x
言葉をこんな風に捕らえたことが新鮮です。人としての記憶、そうかもしれない。
>「言葉は過去と今をつなぐ結節点・・・・」そうだとしたら未来へつなぐ橋として美しい日本語、きちんとした言葉でつなげたいです。
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by saheizi-inokori | 2005-10-27 21:28 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(1)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori