今白洲がいたら! 北康利 「白洲次郎 占領を背負った男」(講談社)

痛快だ。戦後の日本の黒幕、いや表にも出ていただろう、として吉田茂を支えGHQに一歩も譲らずマッカーサーを怒鳴りつけても日本の国益を守る。

戦争に反対して奔走する。日本憲法を押し付けられて戦う(負けるのだが)。日米講和条約を結ぶ(彼はアメリカ軍の撤退をいうのだ)。通産省(今の経産省)をつくる。電力再編成をする。・・。あらゆる戦後の重要場面で大きな役割をしたダンデイ。

今白洲がいたら! 北康利 「白洲次郎 占領を背負った男」(講談社)_e0016828_18581671.jpg

カッコいい。今少々白洲ブームの感さえあるがウベなるかな、それだけの男だ。要するに確たる”志”を持っていたのだ。志の前には浮世のアレコレはアホなこと。逆に言えば志のない奴はウロチョロするしかない。そういう奴ばかりになると白洲は懐かしい。

この面白い物語を読んでいて感じるのは、彼の凄さよりも彼以外の日本人のエリートの駄目さだ。大臣になりたくて彼のご機嫌を取る奴。国益よりもGHQとの関係を一番に考えて保身に走る奴。面子や肩書きを大事にして国事をおろそかにする奴。もう少し他の奴が白洲の半分もしっかりしていたら日本はモットマシになっていたろう。今の日本は東大を出て人より早くえらくなっても、それは「僕って頭イインダモン」とか「それだけ勉強したんだもん」または「僕ちゃんのお父様は偉いんだもん」というようなアホが肩で風を切っている。白洲がいたら呆れて腰を抜かすだろうよ。戦後よりもずっと悪くなっている。

産まれついて銀のスプーンを加えてきた男なら当然この位のことをやるべきだ。近衛と若い頃から付き合って、金のことなど何も気にしないでイギリスに留学して彼の地の貴族と刎頚の交わりをむすぶ。そういう男なら、俺がそういう男だったら、当然やるだろう(そうかな?でもやるよ)ということを書いてある。

当時も今もエリート(本当の意味のエリートは単に偉くなるということじゃなくて使命を果たすべく選ばれた人を言うのだが)がいかに駄目かという反対証明だ。

今彼とあったら見ただけで嫌いになるか徹底的につき合うか、おそらく向こうが問題にしないだろう。俺のジエラシーだ。俺はつきあって欲しい。凄く魅力的な男。生き方も共感できる。
彼が母を亡くして、自分がいかに親不孝だったかと悔やみ泣くところには全く共感した。彼は世間的に見たら決して親不孝ではない。でも本人にしたら・・。よく分かる。

今白洲がいたら! 北康利 「白洲次郎 占領を背負った男」(講談社)_e0016828_18591515.jpg

Commented by そら at 2005-10-24 08:39 x
「真のエリート教育」を標榜した学校が日本にもありますね。
だけどなかなか器だけでは難しいようで。
親の気概がそこまで高くないのかな~とも思います。
自分の子供さえよければ…みたいなね。
大人が大きな目を持って次世代の子供たちを育てていかなきゃねと、
反省も含めて思います。
ブーフーウー、懐かしい。
ニャーニャーはもう登場しないの?
あの子の顔、すごく好き♪
Commented by hanashinnotane at 2005-10-25 08:58 x
「真のエリート教育」・・・ああ、来春愛知県三河に開校する、某巨大自動車メーカーと、元国営鉄道会社と、○○電力会社が出資する学校ですか。早くも、小学生に“青田刈り”して問題になりました。小学生のですよ。もう少ししたら、精子バンクの青田刈りもでてくるかも。エリートってそんなに早く決まっちゃうんだ!
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-25 09:56
ああいうのは、まったくエリート教育ではないかもしれません。人より先に苦しみ、人より後に笑う。それがエリート。キリスト教のいう”神により選ばれた人"です。真っ先駆けて敵陣に突入する、責任は全て言い訳せずに引き受ける。マスコミ人も本来はエリートであったはず。だから待遇も良かったのです。経営者もしかりです。小学生からどうこうできるはずのものではないです。
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-25 12:27
hanashinnotaneさん、その学校の首謀者を知っていますが、私の言うエリートとは180度異なる権力志向・権謀術数の権化です。本当に日本を良くしたかったら今君たちがトップを勤めている企業を良くしろよといいたいです。
Commented by そら at 2005-10-25 13:45 x
うっ。。。思いがけず強い当たりが来たので、ちょっとびびってしまった。。。(苦笑)
「ああいうの」ってどういうのか分からないけど、
理念はsaheizi-inokoriさんと同じことをおっしゃってる校長先生、
男子校なんかには結構多くいらっしゃるように思います。
(hanashinnotaneさんがおっしゃっている学校ではないけれど)
そういう方たちがすべて本気でそう思っているとは、さすがに私も思わないけれど、中には本気でそういう気概を持って子供を育てたいという気持ちのある方もいらっしゃると思うのです。
だけど現実にはそういう気持ちってなかなか反映していかないな~と。
きっとトップの人がきれい事を言うだけではなくて、子供と直接かかわる周りの大人が目先にとらわれないものの見方をしなくちゃいけないんだろうな~と、そう思ったんです。
う~ん、変なところに話が行ってしまってごめんなさいね。
多分、 saheizi-inokoriさんが憤っているところと、私が「ん?」とひっかかっているところ、根っこは同じだと思うんですけどね~。(楽観的♪)
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-25 23:52
そらさん、きつい言い方になったかもね。hanashinnotaneさんと一緒にお答えしたからからかも。名古屋のあの学校をやろうとしている人の考え方が好きでないものだったから。ああいうのってそういう意味だったのです。
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-26 08:09
>きっとトップの人がきれい事を言うだけではなくて、子供と直接かかわる周りの大人が目先にとらわれないものの見方をしなくちゃいけないんだろうな

そうですね。後姿でみせることではないでしょうか。自分がいい加減な生き方をしていいてせめて子どもだけは、というのはナンか言っている奇麗事の裏にあるものを感じてしまうのです。そもそもエリート(本当の)って、教育でつくられるものだろうか。教育が無意味だとは思いませんが。どうすればいいかわかって言ってるのではないのです。暗い気持ちで言ってるのです。
Commented by イネ at 2005-10-26 09:06 x
楽しいやり取り。素敵なコミュニケーション!(こんなことが生きてて良かった、なんですね。)
Commented by そら at 2005-10-26 09:54 x
saheizi-inokoriさん、おはよっ♪
saheizi-inokoriさんのお気持ち、きっとどこかにつながっていくと思っています。だってsaheizi-inokoriのおっしゃること、とってもまっとうだと思うもの。
今日がいい日でありますように!
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-26 12:57
そらさん、ありがっと!ちょっと寒いけんじょもね。風邪をひがねよにがんっばってけさいん。〈仙台弁で決めてみました)。
Commented by shimamelon at 2005-10-28 23:31
エリートは箱にいれればできるものにあらずということかな。
しかし白洲次郎となるとねー。私も「まさこの夫か」と思って読んだことがあります。まさこの夫だけありました。変な言い方だけど。
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-29 08:54
正子は骨董だけでなく人物鑑定団としても一流だったようデス。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2005-10-23 19:10 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31