嵐の日にオウムの人たちへの差別を思う 森達也「A3」
2011年 09月 22日
この様子じゃ落語(人形町)なんて無理だよな、でも行けるかも(未練)、主催元に電話してみる。
「今のところはやるつもりですが、お電話番号を教えていただけますか、変更があったらお知らせします」。
寝転がって本を読んでいるとときおり静かになって雨が止んだような気がするが起き上がってみると降ってる降ってる。
南向きのリビングの方はバシバシ雨の音が聞こえるけれど北側の部屋は静かなのだ。
本に夢中になっていたら4時頃電話があって中止とのこと。
払い戻しについては明日連絡します、と丁寧な言葉、恐縮するほどだ。

読んでいた本は麻原彰晃の裁判を中心に日本の司法・行政・メデイア・世論(国民意識?)が急激に変化していくさまを書いている。
取材記者たちの多くは麻原が”壊れている”ことを解っているのに、「詐病」だという裁判所、検察の言い分に沿った報道しかしない。
麻原が拘置所の部屋の中でも垂れ流しクソまみれの生活をし房室だけはなく接見に来た弁護士、娘の前でも自慰をし射精に至っている。
裁判所が最後の最後にアリバイ作りのようなズサンな精神鑑定を依頼した鑑定書(裁判所は非公開としたかった)ではその自慰行為が“意思発動に損傷がない”ことを示しているとされる。
何回も面会に来た娘たちの呼びかけにも一度も反応することがなかったのに。
刑事訴訟法では被告人が心神喪失状態にあるときは公判手続きを停止しなければならないという定めがあるのに、何の根拠もなくきちんとした精神鑑定も行わず、弁護側が依頼した6人もの精神科医がすべて「訴訟能力はない、はやく治療すれば快癒する可能性がある」というのを無視してやみくもに死刑判決の確定を急ぐ。

「早く、吊るせ!裁判など無駄だ」世論を作り世論に煽られ、人権団体もよくて無言・無視だ。
安田は、後に詐欺容疑で告訴されて弁護士を辞めた「平成の鬼平」こと中坊公平の「住宅金融債権管理機構」から公務執行妨害で告発、逮捕され9カ月半も拘禁され麻原裁判に出られなかった。
まるで「不思議の国のアリス」で行われたハートのジャックの裁判。
女王がいう。

オウムの信者は住民届を受けつけて貰えない。
住んでいることが分かれば追い出しの集団行動。
麻原の娘たちは義務教育の中学にも受け入れてもらえず合格した大学からも入学を拒否される。
こんなことを許してはいけなかったのだ。
こんな差別を“例外”的に許してきた、そういう積み重ねが原発にまつわる差別・違法をないものとして増長させ、それがフクシマを作ったのだ。
フクシマを許せないものとするならばオウムの子らも守られなければならない。
差別に良い差別と悪い差別の違いなんてあるものか。
メデイアを煽ってはいけない。
メデイアの煽りに乗ってはいけない。
自分の頭で考えること(自戒)。
集英社インターナショナル
「今のところはやるつもりですが、お電話番号を教えていただけますか、変更があったらお知らせします」。
寝転がって本を読んでいるとときおり静かになって雨が止んだような気がするが起き上がってみると降ってる降ってる。
南向きのリビングの方はバシバシ雨の音が聞こえるけれど北側の部屋は静かなのだ。
本に夢中になっていたら4時頃電話があって中止とのこと。
払い戻しについては明日連絡します、と丁寧な言葉、恐縮するほどだ。

読んでいた本は麻原彰晃の裁判を中心に日本の司法・行政・メデイア・世論(国民意識?)が急激に変化していくさまを書いている。
取材記者たちの多くは麻原が”壊れている”ことを解っているのに、「詐病」だという裁判所、検察の言い分に沿った報道しかしない。
麻原が拘置所の部屋の中でも垂れ流しクソまみれの生活をし房室だけはなく接見に来た弁護士、娘の前でも自慰をし射精に至っている。
裁判所が最後の最後にアリバイ作りのようなズサンな精神鑑定を依頼した鑑定書(裁判所は非公開としたかった)ではその自慰行為が“意思発動に損傷がない”ことを示しているとされる。
何回も面会に来た娘たちの呼びかけにも一度も反応することがなかったのに。
刑事訴訟法では被告人が心神喪失状態にあるときは公判手続きを停止しなければならないという定めがあるのに、何の根拠もなくきちんとした精神鑑定も行わず、弁護側が依頼した6人もの精神科医がすべて「訴訟能力はない、はやく治療すれば快癒する可能性がある」というのを無視してやみくもに死刑判決の確定を急ぐ。

「早く、吊るせ!裁判など無駄だ」世論を作り世論に煽られ、人権団体もよくて無言・無視だ。
(人権派について)あの人たちはね、基本的には、良い人とかかわいそうな人の人権じゃないとダメなの当初麻原の主任弁護士だった安田好弘の言葉だ。
安田は、後に詐欺容疑で告訴されて弁護士を辞めた「平成の鬼平」こと中坊公平の「住宅金融債権管理機構」から公務執行妨害で告発、逮捕され9カ月半も拘禁され麻原裁判に出られなかった。
まるで「不思議の国のアリス」で行われたハートのジャックの裁判。
女王がいう。
宣告がさきー評決はあとアリスが大声で
そんなの、めちゃくちゃよ!女王は叫ぶ
こいつの首をはねろ!政治家たちの失言を咎める俺たちはこれほどのあからさまな人権無視を見て見ぬふりをしていた。
テレビは複雑な事象を伝えることがとても不得手なメデイアとなった。もともとその属性はあったけれど、特にオウム以降、この傾向は急激に促進された。
なぜならば、国民一人ひとりの危機意識が、オウムによって激しく刺激されたからだ。今危機が目の前にあると思い込んでいる人にとって重要なことは、多くの視点や選択肢、途中の経過や理由などではなく、最終的な結論だ。右と左のどちらが自分にとって安全かなどと煩悶していたら、迫りつつある危機から逃げ遅れる。理由や経過はともかくとして、結論だけがあればそれでよい。必要なことは自分にとって有害か有益かという二者択一の迅速な判断であり、境界線上の曖昧さや端数は捨象され、煩悶や葛藤などは何の価値も持たなくなる。

オウムの信者は住民届を受けつけて貰えない。
住んでいることが分かれば追い出しの集団行動。
麻原の娘たちは義務教育の中学にも受け入れてもらえず合格した大学からも入学を拒否される。
こんなことを許してはいけなかったのだ。
こんな差別を“例外”的に許してきた、そういう積み重ねが原発にまつわる差別・違法をないものとして増長させ、それがフクシマを作ったのだ。
フクシマを許せないものとするならばオウムの子らも守られなければならない。
差別に良い差別と悪い差別の違いなんてあるものか。
メデイアを煽ってはいけない。
メデイアの煽りに乗ってはいけない。
自分の頭で考えること(自戒)。
集英社インターナショナル


タイトル : いま、読め。 『A3』
いま読まないといけない。 具体的になにがどういけないか、とは言えない。 しかし、読んで欲しい。 いや、読まないといけない、そう言いたくなる。 A3 時どきお邪魔しているブログで紹介されていた本。 嵐の日にオウムの人たちへの差別を思う 森達也「A3」 講談社ノンフイクション賞授与に抗議があった本です 森達也「A3」(2) 麻原彰晃はピック病であると聞いたことがある。 脳の前頭葉や側頭葉が委縮する病気で、俺の患者にも何人かいる。 麻原の現在の状態がピック病によるもの...... more
いま読まないといけない。 具体的になにがどういけないか、とは言えない。 しかし、読んで欲しい。 いや、読まないといけない、そう言いたくなる。 A3 時どきお邪魔しているブログで紹介されていた本。 嵐の日にオウムの人たちへの差別を思う 森達也「A3」 講談社ノンフイクション賞授与に抗議があった本です 森達也「A3」(2) 麻原彰晃はピック病であると聞いたことがある。 脳の前頭葉や側頭葉が委縮する病気で、俺の患者にも何人かいる。 麻原の現在の状態がピック病によるもの...... more
僕も一年半前から人権関連の仕事に携わっていますが、その活動の実態は…当初少しその活動にやりがいを感じていただけに、次第に虚しさを感じる日々が続いた事(その事実から目を背けていた事)が今回の不調の原因のひとつかも知れません。
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maru33340 さん、安田弁護士のいうような感じ分かるような気がします。
福島の子供に対する差別を許さない人がオウムの子供に対するそれなら目をつぶってしまう、むしろ加害者にすらなってしまう?
福島の子供に対する差別を許さない人がオウムの子供に対するそれなら目をつぶってしまう、むしろ加害者にすらなってしまう?
”A” ”下山事件”以降もこの方の著書あいつでいて・・A3も読みたい読みたいと思いつつ・・・。 図書館が利用できるのが本当に羨ましいです。
こんな差別を許してはいけないと思うし、それを差別だと声をあげる人を”サヨク”とか”エセ人権派”とか決め付けてその本質を議論せずにバカにして終わりという風潮も本当に恐ろしいと思います。
麻原の裁判の問題と死刑制度の問題は切っては切り離せないと思うのですが、この死刑制度に関しても議論すらできない状況です。日本のマスコミは”人間のドラマ”にばかり焦点を当ててそれを大きな流れで相対的に見るという視点が欠如しすぎていると思います・・。
こんな差別を許してはいけないと思うし、それを差別だと声をあげる人を”サヨク”とか”エセ人権派”とか決め付けてその本質を議論せずにバカにして終わりという風潮も本当に恐ろしいと思います。
麻原の裁判の問題と死刑制度の問題は切っては切り離せないと思うのですが、この死刑制度に関しても議論すらできない状況です。日本のマスコミは”人間のドラマ”にばかり焦点を当ててそれを大きな流れで相対的に見るという視点が欠如しすぎていると思います・・。
本日は福岡にいるので、本屋で買ってみます。

自分の頭で考える。そうですね。こういう時代だからこそ
そこが一番大事ですね。私も自戒します。
そこが一番大事ですね。私も自戒します。
melodynelsonさん、死刑廃止どころかどんどん厳罰、どんどん死刑に、という風潮ですね。
死刑存続にしても絞首刑の残酷さについて本書でも触れられていますがアメリカの薬物注射の方が遥かに楽だと思います。
今、死刑について議論をすると早く執行せよという議論になってしまうかもしれない。
死刑存続にしても絞首刑の残酷さについて本書でも触れられていますがアメリカの薬物注射の方が遥かに楽だと思います。
今、死刑について議論をすると早く執行せよという議論になってしまうかもしれない。
Willway_ER さん、できたら専門家としての読後感を聴かせて欲しいです。
創塁パパ さん、メデイア関係者も自分の頭で考えて欲しいものです。

小さな村の掟を強行する日本。何もかも・・・・
蛸 さん、国の掟=法律は守らなくてもいい、みんなで渡れば怖くない。法律を守ることが村八分になってしまう小さな村、日本。

東西冷戦構造が崩れ、「公安調査庁」に廃止の声が上がっていたその真っ最中に起きた事件でした。お蔭で、組織はすっかり生き返りました。言葉は悪いですが、オウム事件は天恵でした。
麻原は刑事事件の被告人ということになっていますが、実際は「国家反逆罪」の首謀者として裁かれたのです。
だから何が何でも死刑にせねばならない。それは国家の意志であり、そのための「見せしめ」です。
司法もマスコミも、その国家意志に屈服していった。
そういう意味では、戦後の歴史の屈折点となる事件だったと思います。
麻原は刑事事件の被告人ということになっていますが、実際は「国家反逆罪」の首謀者として裁かれたのです。
だから何が何でも死刑にせねばならない。それは国家の意志であり、そのための「見せしめ」です。
司法もマスコミも、その国家意志に屈服していった。
そういう意味では、戦後の歴史の屈折点となる事件だったと思います。
ほめ・くさん、破防法適用を阻まれた公安調査庁は団体規制法を“オウムを対象に”制定するのですね。
それを容認ないし後押ししたのが世論の変化、「オウムを排除するためなら何でもあり」でした。
>戦後の歴史の屈折点となる事件だった
そのことを国民のどれだけが意識しているのでしょう。
屈服したメデイアの人も徐々に去り、今や若い人が無邪気に報道しているのではないでしょうか。
それを容認ないし後押ししたのが世論の変化、「オウムを排除するためなら何でもあり」でした。
>戦後の歴史の屈折点となる事件だった
そのことを国民のどれだけが意識しているのでしょう。
屈服したメデイアの人も徐々に去り、今や若い人が無邪気に報道しているのではないでしょうか。
Ciao saheiziさん
ホント、皆さんが言ってるけど、図書館って羨ましいわ―
要するに、庶民はあくまでも白と黒、善悪と線を引きたがる。
それも自分のセンスでね 苦笑
自分と違ったものをただ簡単に排除すれば、それで庶民である自分らの安泰な生活が保持できると思ってるところに大きな間違いがあって、異なるものをもあえて受け入れると言うある種の寛大さ、清濁(どれが清だか濁だかはともかく)そういうキャパのない社会は、所詮幼稚な社会で、その成長は期待できないと思うのです
マラケシュに行ったから、余計そう思います
ホント、皆さんが言ってるけど、図書館って羨ましいわ―
要するに、庶民はあくまでも白と黒、善悪と線を引きたがる。
それも自分のセンスでね 苦笑
自分と違ったものをただ簡単に排除すれば、それで庶民である自分らの安泰な生活が保持できると思ってるところに大きな間違いがあって、異なるものをもあえて受け入れると言うある種の寛大さ、清濁(どれが清だか濁だかはともかく)そういうキャパのない社会は、所詮幼稚な社会で、その成長は期待できないと思うのです
マラケシュに行ったから、余計そう思います
cocomeritaさん、私は福島の子供もオウムの子供も同じく法律で保障された権利は守られるべきであると思うのです。
オウムの教えを受け入れる必要はないけれど。
オウムの教えを受け入れる必要はないけれど。
by saheizi-inokori
| 2011-09-22 11:15
| 今週の1冊、又は2・3冊
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