雷雲を呼ぶ雲助 一朝の植木のお化けは人形町にふさわしい 第37回「人形町 らくだ亭」
2011年 08月 23日
しょっちゅう来ているがあまりよく観てないのだ。
江戸33番札所、大観音も階段を上がってお参りするのは初めて。
さすがに土地柄、人形が飾ってある。
甘酒横丁にはいろんな匂いがする、その中でちょっと異色なのが漆の臭い。
三味線の店、豆腐屋、創業120年とか言う喫茶店、、古い店がイマドキのチエーン店と混在している。
俺が無添加の梅干しを買う「わしや」には目方売りの惣菜、好きなのを自分で詰めているおばあさんがいた。
久しぶりに蛎殻蕎麦、ぷりぷりした大きな牡蠣をふ~ふ~言いながら食っていたら、店のお姉さんが「今日も落語ですか」と水をもってきてくれた。
いつの間に顔を覚えられたのだろう。
前座は朝呂久「権助魚」
悪くない。
初めて聴く二つ目馬るこ「親子酒」
なんであんなに力を入れて酒を呑まなきゃならないのか。
ちっともうまそうじゃない。
イッチョウケンメイやりますの一朝「植木のお化け」
初めて知った音曲噺。
さかき、らん、セキショー、オミナエシ、ユキノシタ、ベンケイソウ、、、いろんな植木のお化けたちが長唄、謡、小唄にのって現れる。
何にも云わないのはクチナシだ。
古典芸能に素養があればもっともっとずっと深く楽しめたとは思うけれど朴念仁でも十分に心を解放出来た。
こういう噺を聴くと得をした気になる。
雲助「お初徳兵衛浮名桟橋」
次に志ん輔がやる「船徳」の元になった人情噺。
今日のテーマが「それぞれの徳兵衛」なる所以だ。
油屋の造型が素晴らしい。
小太りで脂ぎっていて抜け目なく好色、ぺらぺらとよくしゃべる。
4万6千日、お暑い盛りに観音様にお参りするのも弁天様にお参りするのも同じだと昼間から吉原にくり込んだあとは、ギラギラ容赦なく照りつける日のもと、芸者・お初と船頭・徳兵衛が残される。
芸者と船頭の二人だけというのはご法度という油屋のセリフが炎天に呼び寄せたのか黒い雲。
お初の子供の頃の姿がセピア色に蘇る。
突然焼き鏝を当てられたように目の前が真っ白になる。
雷が川面を走ったのだ。
それが二人の恋に点火する。
真昼の吉原では脂ののったアキンド二人の愛のない欲望が煮えて
岸辺の船の中では若い二人の愛欲が燃え上がる。
4万6千日、仏の顔をよそにして。
燃え上がった二人をそのままにカメラを船の外へ、ずっと引いていくと
動きを止めた船は大川のなかであまりにも小さくはないか。
二人の行く手には何が待っているのか。
そんな余韻を感じさせる名演だった。
志ん輔「船徳」
きっちりと真っ向からの大熱演。
徳兵衛の竿を使うときには俺まで血圧が上がりそうだ。
ところどころちょっとしたギャグに力が入りすぎてあちらこちらコブだらけのような感じもあったが、それをいうのは贅沢にすぎるだろう。
ただただ面白がっていればいいのだ。
「お初徳兵衛」の油屋、名前の通りで油ぎってました^^
志ん輔は自分のブログではなんとも言えない感想を書いていますが、あれはあれで良かった。
一朝の珍しい音曲噺にもめぐり合えて、大いに満足でした。
しゃべりすぎ、演じ過ぎの噺家はそれができません。
いや~、ほんとに素晴らしい会でした!
昨晩は、この会場に佐平次さんや幸兵衛さんはいらっしゃるんだぁと思って、何だかドキドキときめいておりました。
らくだ亭は人に知らせたいようなあまりしられたくないような、貴重な会ですね。会費も安いし。
人格権があるように地名権もあっていいです。