写楽の正体は?松井今朝子「東洲しゃらくさし」
2011年 07月 17日
松井今朝子を読むのは初めてだったがとても面白い。
吉村昭、藤沢周平、、若い頃は読まなかった作家を手に取ってみるとズシリと手ごたえがある。
読みもしないで、なんとなく時代小説などを低く見ていたことをもったいないことだったとも思うし、なんでも楽しく読める気分・余裕が出来た隠居になれたことが嬉しい。
彗星のように登場し10カ月という短い期間で消息を絶った、謎の天才・写楽。
彼の正体をめぐって蔦谷重三郎説、北斎説、能役者・斎藤十郎兵衛説、十辺舎一九説、、いろいろあって、それをテーマにした小説や映画も読んだり見たりしたことがある。
この小説では写楽は上方の芝居で大道具の彩色方、つまりは舞台装置に色を塗る職人・彦三がその正体。
上方劇界で、飛ぶ鳥を落とす勢いの狂言作者・並木五兵衛にその天分を見出されて、五兵衛が江戸に進出するに際し、大道具彩色方として連れていかれるはずが、都合で五兵衛に先行して、蔦谷重三郎に会い、絵の才能を見いだされ、あの大首絵の誕生につながることとなった。
並木五兵衛(=五瓶)はもう一人の主人公と言っても良い。
同じく上方から下って、江戸歌舞伎の最大実力者となる瀬川菊之丞との綾には当時の江戸と上方の劇界の裏事情も明かされて興味深い。
蔦谷のプロデュースのもと画風を変える顛末、それが写楽の才能を封じ込めていく成り行きなども説得力を持って描かれる。
一九の前身も重要な役どころで登場する。
京伝、一九、馬琴、北斎、喜多麿、、名前を知っている芸術家たちの青春像も描かれる。
公認の場所ではなかった品川遊郭にまつわる女郎の悲哀も。
この時代のことをよく知っている作家だと思う。
PHP研究所
けさこサン?
昨夜の晩ご飯を朝に食べるのもよくある話、と納得。
二度目。
しかし、ひねりすぎの題名だなぁ、と軽い拒否反応。
三度目。
よくよく見ると、『今朝子の晩ご飯』。
人騒がせなペンネームだ。
彦三説でしょうか? それとも単にフィクションの主人公が彦三?
まさか、斎藤十郎兵衛説を否定する根拠が・・・?