好き嫌いは人さまざま 第517回「落語研究会」
2011年 07月 13日
5代目小さんが自分の持ちネタについて孫の花緑に語った新聞連載があって、その中で「ちりとてちん」について
世辞のうまい金さんが好人物で、後で呼ばれる六さんが知ったかぶりの悪いヤツ、これが噺家や落語ファンの“常識”だが、小さんの意見はまったくの逆。金さんが『悪いヤツ』で、六さんの方が『正直で信用できる人物』だというー想定外の答えに、花緑の頭の中は真っ白になった。先にこの記事を読んでいたから花緑が「ちりとてちん」をどんなふうに話すのか興味津津。
なるほど、金さんが旦那にご馳走をよばれるときの反応、「鯛(灘の生一本、ウナギのかば焼き、白いご飯)というものがあるとは聞いてましたが、これが鯛ですか」の連発やうまいと褒めるところなどは幇間でもそこまではやらないだろうと思うほどの大仰なお世辞でヤラシイ。
でもやっぱり折角ご馳走を薦められているのに、灘の生一本?ウソだよ、水割りだよ、とか、どうせ養殖ウナギだから食べない、などという態度は憎さげで好人物とは思えんかった。
俺の好みからいえば金さんは普通に愛想のよい好人物であった方がいい。
「ちりとてちん」を食べたときの反応が、かつて5代目小さんがやった「強情灸」(「ちりとてちん」はみてないのだ)の百面相をちらっと思い出させた。
花緑は顔だけではなくて全身でもだえて見せるのだが。
普通に笑えた。
マクラで花緑が三原市・佐木島で公演をして「ちりとてちん」をやったら大爆笑だったと言って「今日はそうはいかない?落語研究会だから」みたいなことをぼそっとつけ加えた。
たしかに大爆笑にはならなかった。
俺は花緑が語ったホテルもない、1軒にたくさん冷凍庫をおいて蛸とか猪などを保存して自給自足で暮らす、のどかな佐木島の様子、そこで東京から来た有名な花緑が語る「ちりとてちん」に笑い転げる島の人たちのことが想われて、ちょっと羨ましく感じていた。
あとは鯉昇「蒟蒻問答」が、いつもより脱力感を漂わせておかしかった。
雲助「山崎屋」は前回の「よかちょろ」の続き。
善人で“石橋で転んだら橋の方が痛いというほど“堅いという番頭が実は内緒で妾を囲っているのをちくちくと責める若旦那が、こりゃきっと経営者としても大成するだろうと思わせる風があったりして聴かせた。
しかし、期待しすぎたのかな、いつもの雲助ワールドとはちょっと違ったような気がした。
他はたけ平「紙入れ」
甚語楼「粗忽の釘」
どちらもまあまあ。
今日はこっちの体調がイマイチだったのかもしれない。
次回の予告↑をみて隣のおじさんたちが「来月は好きな噺家が揃って楽しみだ。一朝だけ要らない」と語っているのを聴いた。
一朝がいるといないのとじゃテンで違うのに。
人それぞれ、いろんなことを考えるもんだ。
そこが楽しいヤネ。
でも、それもまた楽しですか。
花緑の話も興味深いです(笑)
落語研究会は残念ながらずっと行けずにいます・・テレビの方はイッチョウケンメイ録画するんですが。7月末は一朝・権太楼で楽しみです。
江戸ッ子の啖呵もいいです。
酢豆腐の方は気障な遊び人が若い衆にからかわれて腐った豆腐を食べさせられます。
そのキザップリが面白い。