市馬健脚、白酒旨みが出て、紀伊国屋は大繁盛 「柳亭市馬・桃月庵白酒ふたり会」
2011年 07月 04日
久しぶりに聴くと、ゆっくりと間をもって、きっちりできるようになりましたね。
市馬「七段目」
歌舞伎ファンに比べて落語ファンの家はいさかいがない。そういう割に決してブオトコとは言えない馬のように堂々たる顔を駆使して歌舞伎の見栄をやってみせる。
そりゃ、あんないい男を見て帰ったらどんな旦那も、、その点噺家の顔を見て帰ってがっかりするような旦那っているはずがない、いたら、そりゃもうあきらめんですな。
親父の小言を歌舞伎のセリフでかわして行くクダリ、始めはなにをやっても笑い転げるゲラさんが気になったが、二階で定吉を相手に七段目をやる頃から俺も一緒に笑いっぱなし。
白酒「船徳」
寄席では同じような噺をしてはいけない。でもこういう会では○○特集っていう手があって、今日は「若旦那特集」です。そう言ってこれ。
隣のMさんが先日末広亭で小三治がやった「船徳」がいかに素晴らしかったかを話してくれた直後だから嬉しい驚き。
若旦那が職業としての船頭の仕事の尊さなどを演説してみせたり、逆切れして蝙蝠傘をもった肥った客に松本ドラゴン大臣みたいに当たり散らして見せたり、その代わり客の二人がキセルの火をつけるところはなかったが、白酒流爆発だ。
「四萬六千日お暑い盛りです」、場面転換の合図ともなるこのセリフ、8代文楽の文化遺産だ。
さしもの白酒もこのセリフだけは欠かさない。
白酒「壺算」
もう抜けがらみたいなものです
昼席でも同じ「船徳」をやったそうで、それでもちっとも痩せない白酒、お若い盛りです。
先に買った小さな壺を引き取ってくれ、その代わりに大きなのを一つ買う。
小さなのが3文、大きなのは6文、ほらそこにまださっき払った3文があるね、それにこの壺を3文で引き取ってくれるんでしょ、だから3たす3は6、じゃこっちは貰っていくよ。
この噺はインチキだと分かっていてどこがインチキとすぐに指摘できないときがある。
道具屋は騙されていることが分かりながら客の息を継がせぬ・冷静さを取り戻す暇を与えぬ喋りに圧倒される。
(一緒に来た相棒に)げらげら笑わないで!ここまで分かりかけてんだから、(後から来た客に返事をする余裕もなく)ああ、うるさいなあ、壺なんて隣で買ってくれ、もっといいのがあるんだから疲れも見せず笑わせ続ける。
市馬「笠碁」
人間国宝・小さんの話、剣道が落語より大事だった、志ん生は将棋、名人たちの趣味の噂、白酒→雲助→馬生のつながりなどをギャグでつないでいたと思ったら「笠碁」。
今日はなんて間がいいんでしょ!
歌舞伎のマネのときは当然だが、笠碁がこんなに目ん玉をあっちやったりこっちやったり百面相で笑わせる噺だとは思わなかった。
このところ市馬にがっかりすることが多かっただけに今日の二席の充実は嬉しかった。
パンフレットに京須偕充が三代目桃月庵白酒と四代目柳亭市馬について
オーソドックスに真正面から古典落語に取り組んで評価と人気を高めたのだから、落語も落語ファンもまだまだ捨てたものではない。(略)と書いている。
有名な名前を継ぎたがるボンクラはいずれ足元へも寄れなくなるだろう。
優れたミタリ目とヨタリ目のフタリ会ー。
今のフタリは別に目が高くなくても並んでも席を取りたいフタリです。
そろそろ行きたくなって来たけれど、なかなかそっちまで行かれ真センヮ、
若旦那の舟に乗ってしまったら、熱中症になっちゃいますね。
なぜ「舟」ではなく「船」なのか。
これは私見ですが、この噺は元々人情噺の「お初徳兵衛浮名桟橋」の発端を初代圓遊が滑稽噺にしたものです。
船頭になった徳兵衛がお初を乗せるのは、屋形船です。そうでないと船中での情事ってぇ分けにはいきません。
船宿から船を漕ぎ出す船頭の徳兵衛なので、「船徳」になったものと推測されます。