善き人びとはシーベルト星人に勝てるのか スティーヴン・キング「アンダー・ザ・ドーム」

二巻で1369頁、読みでがあります。
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ほら、厚いっしょ。
これをネ、もうほとんどイッキ読みでしたよ。

アメリカ・メイン州・靴下の形をした人口2千の小さな町、秋は紅葉の野山に囲まれる観光地ともなる。
ご他聞に洩れず一皮むけばいろんな問題を孕みながらも、多くの人々は折り合いをつけて幸せに暮らしている。
10月21日の土曜日、ってことは06年か17年なのだが、07年の出来事が過去として描かれているし、17年とは思えないから、これは相似形異世界の出来事なのか、突然この町は”ドーム”に覆われて世界から隔絶されてしまう。
無色透明、だから飛行機、鳥、自動車は激突して死ぬ。
ペースメーカーなどを着けて近づくと破裂して死んでしまう。
ドームが落ちてくる瞬間に町境線上にいた人、人の手、動物、木々、飛行機、、すべてがギロチンにかけられたかのように切断される。
やられた人は何が起きたのか分からないままに死んでいく。

軍隊がミサイルを打ちかけても壊れない、空と地の底、何処まで続いているのか見当もつかない。
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表面的には平和だった小さな古い町の底に隠れていた汚辱が立ち上がって、町は変化していく。
隠れていた問題、それは権力を握りたい、権力を握って自らの欲望を満たしたい、犯罪を隠蔽したいという“悪”、俺がいうところのシーベルト星人の存在だ。
騙す、殺す、謀る、脅す、煽る、、。
多くの町民は騙され(危機に臨んで強力なリーダーは頼もしい)、シーベルト星人がでっちあげたストーリーを信じて暴徒と化し若者は親衛隊の腕章をつけ銃をぶら下げる。
いやあ、町民の中にも悪いのは多い。

当然、正しく真っ当な人たちもいる、元米軍大尉(イラクでスパイ殺しの現場にいた)、新聞社の女性社長兼記者、神を信じていることが確信できない女性牧師、ヒッピー医師とその妻、巨乳の女性警官、デパートのオーナー、レストランの女性経営者、天才少年とその仲間、、おお、なんだか脱原発の人たちみたいだ、数は少ない。
目の前に起きる事象の本質を見抜ける人は少ない上に正しいと思えることをやり抜く勇気がある人も少ないから。
シーベルト星人の親玉は正しい男を陥れ牢にいれ人民裁判にかけて公開処刑するつもりだ。

善き者と悪しき者、愛と憎しみ、希望と絶望、生と死が偶然と必然によってめまぐるしく絡みあい勝ったり負けたり。

ドームの正体は?
ガイガーカウンターや手製の防護服も活躍する。
ドームの中の空気が汚れて、なくなっていく!
果たして何人が生き残れるのか。

この小説が書かれたのは2007年から2009年の間だ。
それを知らないで読んでいてこれは3・11に想を得た小説かと思った。
手に汗握るエンタテインメントだ。

白石朗 訳
文藝春秋
Tracked from 掬ってみれば無数の刹那 at 2011-06-22 14:48
タイトル : 刑事司法改革とえん罪の根絶をめざして
昨日はこれに参加していました。 私たちは犯罪とどう向き合うべきか? そして今日は、、、 市民集会 検察の在り方検討会議の提言を受けて -刑事司法改革とえん罪の根絶をめざして-検察の在り方検討会議提言では、「新たな刑事司法制度を構築するため、直ちに、国民の声と関係機関を含む専門家の知見とを反映しつつ十分な検討を行う場を設け、検討を開始するべきである。」とされています。 日弁連は、2011年1月20日、「えん罪原因調査究明委員会の設置を求める意見書」を...... more
Commented by HOOP at 2011-06-22 14:57
3.11にインスパイアされたとすると、
訳が出るのはちょっと早すぎますね。

昨日の死刑に関するプレシンポジウムでは、
ハワイ大学の教授が興味深いことを言っていました。
米国では、有罪無罪の判断と量刑判断とが分離されている。
また、死刑と他の刑罰を法制上全く別物として扱う。
死刑になる可能性のある裁判では、
陪審員といえども、法に定める量刑基準に縛られる。
(ただし、守られているかと言うと必ずしもそうでない)

翻って日本の場合、
そうした法制上の区分は死刑と他の刑罰との間になく、
量刑判断も、法制よりは判例などに依存し、
多くは公務員(主として検察官)の努力によって行われる。
そのため、民意を反映するというようなポピュリズム的な動きも、
いきなり陪審制で極端になったりすることはない代わりに、
検察官がそれを取り入れるというやり方で厳罰化が進む。

こういう風に分析していました。

その検察が正常に機能しない場合には、
とんでもないことになるのは言う間でもありませんが、、、
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-22 18:28
HOOP さん、しかも菅みたいなのがやりたい放題ですから今書かないとね^^。
司法も政治も行政も正常に機能しなければいかなる制度を創ってもダメなのかもしれないですね。
Commented by hanarenge at 2011-06-22 20:41
いやぁ面白そう。
やっぱり、キングですね!
漫画で(いきなりダウンで済みません)手塚治虫が書いた題名も何も忘れちゃんたんですけど、ある日突然村と言うか小さな街が閉鎖される話を思い浮かべました。
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-22 21:36
hanarenge さん、キングは久しぶりに読みましたが面白かったです。
これは「ザ・スタンダード」「IT」に次ぐ長編だそうです。
手塚治虫は鉄腕アトムとかライオンの子供の話くらいしか覚えてないですねえ。
Commented by kaorise at 2011-06-23 01:01
キング、面白いですよねえ^^
続きが読みたくて、もー寝ないで読んじゃうから
眠れなくなっちゃうのよ!!!
連続ドラマを見始めるとつい朝方まで、、ってよくあるけど
、本でそこまで読ませる手腕は大したものですよね。
Commented by poirier_AAA at 2011-06-23 02:26
キング、面白いけど怖いんですよねぇ。この作家を読むと、部屋の隅とか自分の背後とか、はっきり見えない場所がすごく怖くなります。「it」を読んだときは、毎夜悪夢にうなされました。あの怖さはもう勘弁して欲しいけど、でも読んでみたい。こういう作家って困ります。
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 09:05
kaorise さん、ジエットコースターです、まったく。
ときどきにした方がいいかも。
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 09:08
poirier_AAA さん、ディテイルが巧いのですね。だからあり得ないことがリアルに迫ってくる。
落語家が取り入れたらいいのに。
Commented by HOOP at 2011-06-23 11:21
昨夜、美女二人と日比谷の小洒落た洋風居酒屋にて、
「菅をおだてる会の、あの万雷の拍手に、ナイーブな人が引くんだよね」
「そうそう、ナイーブな人たち、って困るわよね」
「おだてる会だってことを理解していないんだから」
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 11:49
HOOP さん、それじゃ私も“ナイーヴ”です。
おだてたって木に登れない猿はいると思います。
木に登れなくて癇癪起こしてその木を切り倒しかねない!
Commented by HOOP at 2011-06-23 12:14
彼もそうかもしれませんが、こちらも藁をもつかむ心境なのです。
いつでも、切ることはできるつもりでいますから。
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 12:44
HOOP さん、被災地救済に必要な法律などがすっかり止まっていても辞めない、辞めさせることもできない、いつでも切れるのでしょうか。それなら直ぐにお願いしたいです。
菅は藁をもつかむ必要はないのですよ。
彼ががんばると応援したい人まで敵に回ってしまいかねない。再生エネルギーを汚い手で触って欲しくないです^^。
Commented by c-khan7 at 2011-06-23 13:20 x
映画になりそうですね。
暑い日に、ヒヤヒヤしそうなストーリー。
やはり、人間が一番、コワいって、、ことですね。
Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 14:15
c-khan7 さん、まさにこの小説の肝はそこにありそうです。
映画もみたいです。
Commented by cocomerita at 2011-06-23 21:29
Ciao saheiziさん
うわわわ、面白そうだな――
あのね、最近私が使うアエロフロートは、機内にビデオがないのよ
だから、こういう本が一冊あると、のめり込めていいなあーーと
時間の断つのを忘れるでしょ?
今度買ってみよう



Commented by saheizi-inokori at 2011-06-23 22:45
cocomerita さん、ローマまでの飛行時間で読み切れるかどうかちょうどいい長さかもしれません。
ドームにぶつからないかと心配しないでね。
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by saheizi-inokori | 2011-06-22 11:44 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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