なぜドイツは脱原発に踏み込んだか

 『なぜドイツは脱原発に踏み込んだか』
借り物ですが、、(赤字は引用者)

 『なぜドイツは脱原発に踏み込んだか』

             2011年5月5日
                 池住義憲

 ドイツ連邦共和国(以下、ドイツ)のメルケル首相は、去る4月15日、国内にある17基の原発を早期に廃止する方針を決めました。福島原発事故の翌日(3月12日)には国内のすべての原発を総点検することをいち早く決め、同14日に、昨年(2010年)打ち出したばかりの「原発稼動延長計画」を凍結するに至りました。原子力エネルギーから脱却してクリーンエネルギーへの転換を早める考えを表明したのです。

 陸上風力・洋上風力、太陽光・太陽熱、水力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーの比重を、2020年までに総発電量の30%以上(現在は18.6%)、2050年までには80%以上にすることを目指すという計画です。そのために必要な法改正を、6月17日までに行なう予定です。

 ドイツ政府は、今から11年前の2000年6月15日、原発全廃に向けて電力会社と合意し、各原発の廃炉に向けた具体的日程を明らかにしました。1998年秋に発足したドイツ社会民主党と緑の党による連合政権下で、当時のシュレーダー首相は全原発の廃炉を主要電力四社と合意し、脱原発への道を明確に描き出しました。そして2002年に、ドイツ国内にあるすべての原発運転を2022年までに停止する脱原発法を制定したのです。

 シュレーダー政権を引き継いだメルケル政権は、昨秋、世界的な”原子力ルネサンス”の流れの中で、シュレーダー前政権の原発全廃方針を転換し、稼動中の17基の原発を平均で12年延長する方針に転換しました。しかし去る3月11日に起きた福島原発事故により、再び「脱原発」へと舵を戻したのです。

■「核廃棄物処理の困難さ」が主要因
 ドイツの原発による発電量は、日本とほぼ同じ30%前後です。そのドイツが、なぜ脱原発政策へ転換することができたのか。その主要因は、「核廃棄物処理の困難さ」です。

 原発は、「着陸する飛行場もなく飛び続ける飛行機」と言われています。原発操業によって、放射能性物質を含む核廃棄物が不可避的に産出されます。現代の科学知識術水準では、これを適切且つ安全に最終処理・加工する技術はありません。安全に最終処分する場所もありません。高レベル放射能廃棄物(『死の灰』)は、百万年という気の遠くなる時間、管理し続けなければならないのです。

 原子力産業は、1953年を起点として原子力の平和利用(Atoms for Peace)という名目で米国主導により始まりました。以後、原発によって産出される放射性廃棄物を処理する方法が無いまま、急成長してきました。原発の数は世界合計で、現在、435基(アメリカ104基、フランス59基、日本54基、ロシア27基、韓国20基、イギリス19基、カナダ18基、ドイツ17基、インド17基、中国11基など)にもなりました。

 いずれの国も使用済み核燃料は累積し、処分するにしても膨大な費用がかかります。なによりも深刻なのは、安全を確保することは技術的に困難であることです。従って当然のことながら最終処分候補地の住民による反対で、候補地を選定することが出来ない状態となっています。

 ドイツは、1973年の石油危機後、シュミット首相率いる社会民主党(SPD)と自由民主党(FDP)の連立政権により、原子力エネルギーの平和利用を推進する政策を採択しました。米国、ソ連、英国などと同様に、原発推進政策を国策として採り入れました。その後、旧東ドイツとの統一をはさんで、緑の党の結成と発展、連立政権・大連立政権などの変化を経て今日に至ります。

 エネルギー政策に大きな変化をもたらしたのは、1998年の社会民主党と緑の党の連合政権誕生です。この時に連邦政府と電力業界の間で原子力合意が締結され、国内の原発の新規建設は禁止されました。そして、既存の原発は通常の運転期間を32年と限定し、段階的に停止することが定められたのです。

 こうした状況に至った背景にはいくつかの要因がありましたが、最大の要因は、原子力政策上鍵となる最終処分場の候補地問題でした。ニーダーザクセン州ゴアレーベンは、1970年代から、政治的な地理上の点から高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地に選ばれていました。しかし現地での強い反対運動に加えて、ゴアレーベンはその後の地質調査で岩塩層であることがわかり、最終処分場には適していない地でした。

 「放射性廃棄物処理に関して未解決の重大な安全性問題がある」ことが明らかになり、これをきっかけにして、反原発運動やその他様々な運動が寄り集まりました。反原子力を掲げる緑の党が姿を現したのはこの頃(1980年)からでした。35歳以下の有権者のほぼ五分の一が緑の党に票を投じたと言われています。

 そして1986年のチェルノブイリ事故後、社会民主党大会で脱原子力の決議が採択され、1989年のベルリン綱領で「われわれは原子力を使用せずに、無公害で確実なエネルギーの供給をできるだけ早く達成したい」と述べて原子力エネルギーへの反対を明確に表明するに至ったのです。

 ドイツにおける「岩塩層への埋設が不可能」という結論は、「プルトニウムなどの高レベル放射性廃棄物の最終処分は人間の知恵では技術的に不可能だ」という判断を生み出しました。そしてシュレーダー政権は、1999年に「再処理禁止・プルトニウム撤退政策」を発表するに至ったのでした。

■日本では・・・
 菅直人首相は、4月18日の参院予算委員会で「(福島原発事故の)検証を経て、安全性を確認すること抜きにして、これまでの計画をそのまま進めていくことにはならない」「先入観を一度すべて白紙に戻して、根本から検証する必要がある」と述べました。また同月25日の参院決算委員会でも、原発の増設を盛り込んだ政府のエネルギー基本計画について「白紙の立場で考える」と述べました。原発事故を検証する第三者委員会を今月(5月)中旬に立ち上げる方針で準備を進めています。

 野党の社民党は、4月20日、脱原発を進めるための行動計画案を発表。地震や津波の被害を受ける危険性が高い原子力施設から順番に停止し、新しい原発の建設計画中止を求めています。2050年までに全電力を、太陽光、風力、地熱などの自然エネルギーで賄うことを目指すとしています。2020年に30%、2050年に100%まで普及させる行程表を示しています。

 同じく野党の日本共産党は、3月31日、原発の「安全神話」から決別し、原発総点検、原発新増設中止、原発依存から自然エネルギーへの転換など、これまでの原子力エネルギー政策の転換を提言としてまとめ、発表しました。その後4月26日には志位和夫委員長が「原発から段階的に撤退してゼロにする工程表を、党として示していきたい」と述べています。

 一方、自民党内では、原発維持に向けた動きを始めました。4月中旬、自民党の甘利明、細田博之、西村廉稔ら原発推進派議員が集まり、原子力を守る政策会議(『エネルギー政策合同会議』)を発足させました。

 1955年の「原子力基本法」制定以降56年間にわたり、自民党政権、自公政権、民主党中心政権が電力会社や重電メーカー、建設業界等と一体になって進めてきた原発政策。その中心となってきた政党・議員の責任は、大きく、重い。

 原発政策を支持し推進してきた政党・議員は、福島原発事故の収拾目途が今だ立っていない状況を、どう考えているのか。単に津波対策用の防波堤を高く築き、非常用電源を丘の上に設置するなどして「改訂版”安全神話”」を作再び作ろうとしているのか。それで問題は解決すると考えているのか。使用済み燃料の最終処理問題をどう考えているのか。ドイツが国内にある17基の原発を早期に廃炉する政策を再び確認したことをどう受け止め、このことから何を学んでいるのか・・・。

 ドイツ生まれの経済思想家アーネスト・F・シューマッハーの次の言葉を、今一度、噛み締めて欲しいと私は思う。

  ”いかに経済がそれで繁栄するからといって、『安全性』確保する方法
  もわからず、何千年・何万年の間、ありとあらゆる生物に測り知れぬ
  危険をもたらすような、毒性の強い物質を大量にためこんでよいという
  ものではない”

東北関東大震災 緊急支援クリック募金
Commented by junko at 2011-05-06 17:37 x
saheiziさん
日本人はね
今まで欧米の人々から黄色い猿と言われてきた
正直言って、いまだにそう思ってる人はいる
日本のね
政府、官僚、企業の上層部にいる人々を見ると、確かにそうだわなーと思わざるを得なくなる
人真似子猿に所詮原子力など、それこそ猿にピストル渡すようなものだと
いや、猿にピストルよりひどいかもしれない
猿はそのうち飽きるだろうが、この人たちは全く飽きることなく人々の命を犠牲に遊び続ける
そう思います
Commented by saheizi-inokori at 2011-05-06 18:36
junko さん、原発のCFに出た芸能人たちが今どんな気持ちだろうと心配(興味半分)する人もいるという状況(それが常識でしょう)に平気で会議を興すのですからね。
どこか髪の毛30本くらい足りないのかもしれません。
HISAKOさんの記事http://hisakobaab.exblog.jp/12522970/
この顔を見てやって下さい。
なんとも自足したにやけ顔ではないですか。
Commented by HOOP at 2011-05-06 19:19
菅首相、浜岡原発全基停止を要請!
今、記者会見中です。
「法律的に指示とか命令とか決められていないので、
要請とさせていただいた」
Commented by saheizi-inokori at 2011-05-06 22:21
HOOP さん、見てました!取りあえず一歩前進ですね。
揺り戻しが心配ですが。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2011-05-06 11:01 | 原発はいらない | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori