鯉昇、ありがとう 元気が出たよ そろそろ自粛から這いだそう

この業界は自粛ということをあまりしないんです。
昭和天皇が亡くなったときに協会で相談して自粛しようとなりました。
その自粛とは、、(間)、「小さな声でやろう」ということでした。
鯉昇がいうと、どっと、笑い。
鯉昇、ありがとう 元気が出たよ そろそろ自粛から這いだそう_e0016828_13573483.jpg
(去年の3月26日近所で)

戦争中にいろんなことを自粛させられたり禁じられたということは知識として知っている。
禁演落語というのがある。
昭和16年、時局がらふさわしくないとして、浅草本性寺にはなし塚を作って封印された、廓や間男噺が53種、「居残り佐平次」をはじめ「品川心中」「明烏」「紙入れ」「子別れ」「権助提灯」「付き馬」「二階ぞめき」、、、今面白がって聴くネタがほとんどと云ってもいいくらい(21年に解除)。
もうひとつは進駐軍の指示により自粛という形で自粛禁演落語27種が指定された。
暴力的、軍国主義的、荒唐無稽に過ぎるなどという理由で選ばれた「景清」「巌流島」「宗論」「寝床」「花見の仇討」「桃太郎」「宿屋の仇討」、など(22年に制定され28年に解除)。
自粛落語はそれだけじゃない。
表現の自由があるはずの今、放送自粛落語というのがあるらしい。

禁演落語のことを権力に負けやがってとか媚びへつらってなんじゃい!という気持ちで考えていた。
昭和天皇のご大喪のときの自粛旋風にも抵抗があった。

今度は、、なんと、俺の体の中から自粛して静かに家にいようとする気持ちが湧いてきた。
阪神大震災の時も感じなかった、この気持ちのよって来る所以を考察するに、俺のエゴイズムにも触れなければならないので、そこは省略する。

世の中の人と一緒になって静かにしているのは、それはそれでそんなに居心地の悪いものじゃなかった。
戦時中、噺家たちが禁演落語をはなし塚に葬ったときの気持ちも分からんでもないと思った。

居心地が良くてもいつまでもぬるま湯に浸かっていると認知症はますます進行する。
いざや、立ち上がれ、今こそ行動の時だ!
鯉昇、ありがとう 元気が出たよ そろそろ自粛から這いだそう_e0016828_13584219.jpg
(これも去年の3月30日)

というわけで、まずは人形町方面へ出陣。
隠居の出陣だ、「~通好み~鯉昇ひとり会」へ。
満員の客を大笑いさせた「千早ふる」
モンゴル出身の関取・立田川は千早太夫、神代太夫に振られて故郷に戻り傾きかけた実家の豆腐屋を再建する。
パオは見事立ち直る。
東北も立ち直る(はずだ)。

休まずに「持参金」
友達がある時払いの催促なしで貸した10円を催促に来る。
どうしても明日までに必要になったと。
返すあてなどないので頭を抱えていると大家が嫁を貰わぬかとやってくる。
デブでブスで(その具体的描写が凄まじい)、おしゃべりで、、その上に“ただ一つの傷”は8カ月のアカンボが腹にある。
断ろうとすると、持参金が10円だという。
それなら話は違う、今夜直ぐ結婚しよう。
大家は嫁は連れてきたが10円は忘れてきた、明日持ってくるという。
翌朝。友達が10円取りにやってくる。
なぜ急に10円欲しいのか、訊いてみたら、嫁のお腹の子は友達の子。
厄介払いに10円つけてやればどこかのバカが喜んで嫁に貰うだろうと大家が知恵をつけたのだと。
10円はいったいどうなる?
「ああ、金は天下のまわりモノ」がサゲ。
そうさ、東北にも金はまわって行くはずさ。

この噺の途中でグラグラときた。
かなり大きな揺れに場内ざわつくのに鯉昇少しも騒がず噺を続け
この家は揺れるなあ。
あの嫁ならきっと重しになってくれるだろう。

鯉昇、ありがとう 元気が出たよ そろそろ自粛から這いだそう_e0016828_1483461.jpg
(おととし、済州島、3月30日)

最後は「お神酒徳利」
去年の正月に鯉昇で聴いためでたい噺
パチパチパチ、俺のソロバン占いでも、パチパチパチ、ほらこの通り、東北はめでたく復興すると出た。

東北関東大震災 緊急支援クリック募金
Commented by kaneniwa at 2011-03-31 17:41
廃炉作業しか新たな雇用がないとしたら
悲しすぎますね。
すぐに復興政策をたてなければいけません。

BYマーヒー
Commented by 小言幸兵衛 at 2011-03-31 18:44 x
いやぁ、たっぷりの鯉昇ですね!
『お神酒徳利』は、神奈川県民ホールで聞いたことがありますけど、円生に負けない(?)本寸法だったかと思います。柳家の型ではなく、大阪まで行ったのではないでしょうか。
たまには、息抜きも必要ですね。
Commented by sweetmitsuki at 2011-03-31 19:06
開演中の余震、鯉昇師匠には想定の範囲内なのでしょう。
もっと最悪の事態にも備えていたに違いありません。
いやはや、お見事です。
Commented by tona at 2011-03-31 20:10 x
>この家は揺れるなあ。
あの嫁ならきっと重しになってくれるだろう。

笑点でも笑いましたが、久しぶりに大笑いです。
さすがですね。

済州島の3月終わりは菜の花なのですね。素晴らしい。

Commented by みい at 2011-03-31 22:48 x
サクラと菜の花、きれいですね~
桜の季節も、もうすぐですね。
少しは明るい気分にしてくれるでしょう。
一日でも早く東北にも日常が戻るといいですね。
saheiziさんの占い当たりますよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:12
kaneniwa さん、私もそう思うのですが、一体誰がどのようにして?と思うとやや絶望的な気持ちに駆られます。
こういうときに独裁者って現れるのでしょうね(いれば)。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:13
小言幸兵衛さん、大阪から伊勢参りをして東海道中言い立てです。
もっともこのところちょっと先を急いだか(早くしまいたかったようです)出来はイマイチでしたが^^。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:14
sweetmitsuki さん、ちょうど長屋の座敷にいたところでしたからね。
相当揺れましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:15
tona さん、二年前のことなのにはるか昔のような気がします。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:16
みい さん、来年の桜を落ち着いて見ることが出来れば上出来ですね。
本当にお気の毒です。
Commented by kaorise at 2011-04-01 00:28
ことしは花が遅いですね、、寒いからでしょうか。
でも冬に植えたプランターのパンジーは花盛りです。
花が元気に咲いては、すぐしぼむのをみると、いのちの儚さをおもってしまいます。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 00:43
kaorise さん、それでもさっき帰るときにみたらだいぶ咲き染めてきました。今日は温かかったですよね。
Commented by 創塁パパ at 2011-04-01 11:32 x
持参金もやりましたね。鯉昇は上方ネタもよくかけます。
私も、関西で雀松・市馬二人会を聴いてきましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2011-04-01 14:24
創塁パパ さん、鯉昇、よく勉強してますね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2011-03-31 14:04 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31