人生の幸せの時

今日も好い天気。
布団を干して早めに洗濯してお日さま一杯浴びせてやろう。
ヨイコラショと机や椅子も動かして埃を取ってやれば、ほら、部屋も好い空気を吸って生き生きとしてくる。
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学生時代の寮は一部屋5人も入って殆ど陽が射さない。
隅々までの掃除なんて年に一度の部屋替えの時くらい、饐えた臭いが立ち込めていた。
従弟が受験の宿にと下見に来たけど恐れをなして断ってきた。
洗濯やに出したシーツを引いて周りを片づけておいたのになあ。
あの頃は毎年一度は10度前後の高熱を出してダウンする習わしだったが、ある年あまりにも長いこと熱が引かないので心配した友人が近くに住んでいる伯母に連絡したものだ。
伯母がやってきてしばし無言だったのは病気を憐れんだのではなく部屋の汚さに言葉を失ったのだ。

木の床の部屋にめいめいの居住スペースはベッド一台、それを椅子にして机があって壁際に棚があって布団一組と着替えをひと箱置いてある、それだけ。
そんな暮らしでも本人に悲壮感などこれっぽちもなくむしろ汚いことに誇りを持っていた。
根拠のない誇り、埃だらけの誇り。
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あの頃も今日のような好い天気の日には思い切って布団をかついで屋上に登った(ごくたまに)。
4階だったか3階だったか、5階ということはないと思うけど、屋上に物干しもあって洗濯物を干す(ときどき盗まれた)ついでに換気塔の屋根に布団を置いてその上に寝転がって本など読む。
富士山も良く見えて好い気持ち、なにをしたいということもないノンポリグータラ学生だったけど、なんでも出来そうな気もしていた。
日光をたっぷり吸いこんだ布団に洗濯したてのホーフをかけて寝るとき、あの何ともいえない光の匂いに、ああ、人生の幸せってこれかもしれないなあなどと思った、その程度の“なんでも出来そう”だったのだけれど。
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散歩のコースの一つにある鰹節やさんの店先のガラス窓に張ってあった。
この家のお嬢さんが学校の研究課題か何かで作ったのをお父さん(だと思う、これは、きっと)が張りだしたんじゃないかな。
お父さんの人生の幸せの時だね。
Tracked from 掬ってみれば無数の刹那 at 2010-11-28 14:11
タイトル : 残る言葉は重みがあるのだな
オオタスセリさんのブログ「私の観察日記」での 今日のエントリー11/26 言葉を読みました。 高校生時代の記憶、男子が言っていた言葉を思い出し、 ラーメン店主の人柄とともに、店主が男子にどんな言葉を言ったのか、 それをスセリさん自身がどう考えたかについて書いてあったのですが、、、 うん、うん、わかる、わかる、、、 特に、最後の一行を読んで、 なんだか胸の内が暖かくなったような気がしました。 人生の幸せの時 デカい女posted with ama...... more
Commented by c-khan7 at 2010-11-28 12:25
鰹節削り、昔、やった事があります。
鰹節にも、削る方向があって、綺麗に削るテクニックもあるんですよね。削りたてを茹でた法蓮草にのっけて食べた事を思い出しました。今年の夏の大掃除の時に、使わなくなった削り器を処分してしまいました。鰹節を削る事はもうないです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 12:33
私も引っ越しの時にどこかにやってしまいました。
この店の前を通るとあの「かっかっ」という削る音が思い出されます。
湿ってるとうまく削れないので火にあてて乾かして削りました。
糸底でも削れることは削れるそうですがやったことはないです。
Commented by takoome at 2010-11-28 13:50 x
サワディ〜カ〜
ひなたぼっこだったり散歩だったり、
あまりに普通のことでわからなかった時代もありましたが、
最近はしみじみ・・・・
Commented by HOOP at 2010-11-28 14:12
実家ではいつも私の仕事でした。
カチカチのやつはみんな粉になってしまって、
うまく薄くけずれなかったのを憶えています。
Commented by cocomerita at 2010-11-28 15:44
Ciao saheiziさん
ご存じの通り...
イタリアにもどってキーキーしてたので、
この記事が心地よく ほんのり心に入ってきました

どうもありがとう
私が帰るたびに、父が干してくれた布団のお陽さまの匂いも、一緒に思い出しました 笑
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 17:58
takoome さん、先ごろ亡くなった佐野洋子さん(「百万匹の猫」)に「普通がいちばん」というようなエッセイ集があったような気がします。
彼女もあまり普通じゃないんですが^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 18:00
HOOP さん、小さくなると手を削りそうでカバーを付けて持ちやすくしたり、それでも駄目でしたね。かけらになったのを口の中に放り込んでしゃぶっていたことも思い出します。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 18:01
cocomerita さん、ローマじゃかけ布団を干すなんてないんでしょうね^^。
Commented by みい at 2010-11-28 19:02 x
天気のいい日は、わたしも布団干してます。
あのお日様の匂いが好きなんです。気持ちいいですよね。
ルナが潜り込んでくるから、パンパンしていつも干してます^^。
ルナも気持ちいいワンて言ってます^^。
Commented by mimizu-1001 at 2010-11-28 20:46
忌野清志郎の「トランジスタラジオ」が聞こえてきました。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 21:40
mimizu-さん、トランジスタラジオを買ったのは社会人になってからでした。独身寮の屋上でラジオを聞いたことはありますよ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-28 21:42
みい さん、サンチの匂いも日向臭くなりました。
Commented by cocomerita at 2010-11-28 23:00
saheiziさん
うちはラッキーにもテラスがあるので、干します
ただしマットレスまではなかなか...苦笑
Commented by sweetmitsuki at 2010-11-29 06:01
子供さんの作った掲示板、それを作るよう指導した学校の教育方針、それを誇らしげに店先のガラス窓に張る商店街の店主、それを暖かく見守る地域の目、すべてが微笑ましいです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-29 09:45
cocomerita さん、マットレスは腰を痛めますよ。上掛けを取っ払って風通しを良くしてればなんとか^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-29 09:48
sweetmitsuki さん、記事の内容がまたいいですね。
後記に「かつお節の専門店はめずらしいと思いました」なんて子供なりに誇らしげです。
Commented by kaorise at 2010-11-29 16:08
文系キャンパスの裏を散歩したことがあって、いまだにふるーい建物がほんの少し残ってました。
学生さんたちがあちこちで演劇の稽古をしたり、おしゃべりしたり、いろいろ楽しそう。
きっと昔のsaheiさんもそのなかの一人だったんだろうなあ、、
いつもみゅうと散歩にいくたびに、いつか私達がこの世を去って来れなくなっても毎年若者がここに集うのだなあなんてちょいと感傷的になります。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-29 18:35
kaorise さん、たしかに大学のキャンパスはほろ苦いノスタルジーを誘います。若い学生たちが溌剌としているのを見ると何故か胸がちょっと痛みます。
Commented by otayori-otayori at 2010-12-01 12:11
鰹節屋さんの、研究発表のもの、いいですね。
お父さんだけでなく、見る人も幸せにしてくれそう^^

寮、、、、私とsaheiziさんは10年あまり違うと思うのですが、、、私の頃は、こぎれいでしたよ。
寮の頃の友人とは、今もつながりがあります。
Commented by saheizi-inokori at 2010-12-01 12:29
otayori-otayori さん、あの寮は特別に汚い寮でした。当時でも耐えきれない学生がいたのですから^^。
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by saheizi-inokori | 2010-11-28 11:50 | よしなしごと | Trackback(1) | Comments(20)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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