やっぱり本物の佐平次には叶わねえ! 志ん輔・扇遊の会

土曜日の鈴本の様子、やっぱり間を置くと書くのが億劫になるなあ。
どの番組も良かったから、全部書かなくちゃいけないように思うのがいけないのかもしれない。
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中で最も良かったのは志ん輔「居残り佐平次」だ。
目をこすりながら坐って「暗いとこからでてくると眩しい」と一体どこにいたんじゃい、なんかいつもより脱力菅じゃない脱力感の漂う入り方。
神保町にある落語カフエの噂から「居残り佐平次」のサゲの解説。
「サゲの解説からやる落語なんて白木屋とこれくらいのものだ」、そのサゲってのが「おこわにかける」、騙す、美人局(つつもたせ)のことだというと今度は美人局の説明も必要になってしまうんだね。
なぜ美人局を「おこわにかける」というのか円生に訊いたら「おーこわ!」からきてると、嘘だよそりゃ、ところがそれが本当らしい。
女が「おーこわっ!」悲鳴を上げるのが合図で強面のひもが乱入する段取りってわけ。
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(世田谷「大吉」、たいちゃんは中華風生ガキ初体験で大感激)

前に書いたが志ん生(大師匠)の長女の思い出、ナメクジや銭湯ばかりじゃなくてご飯を炊いたり曳舟のコロッケも出てくる懐かしい苦労話、その原因は家庭を省みることもなく遊んだ親父だったこと、その遊ぶってのは、吉原があって他に板橋、新宿、千住、品川の四宿があって、板橋は昼間キャデイーをやってまっ黒に日焼けした人が夜出てくるというそんな風情で、なかでも品川は吉原に負けるもんかと立派な店が多かった。
このあたりで俺はさっきの話が利いて円生の「四宿の屁」というバレ噺を思い浮かべる。
品川の女郎は音をさせずに布団をパタパタさせて空気を入れ替えるのだ。
客が見咎めると「窓の外の帆掛け舟のマネをしてるのさ」、客「その船は肥え舟じゃないかィ」。

長い枕で笑わせてネタに入って息切れがするどころかどんどんノリまくる。
佐平次が金を払わないと宣言してからの若い衆との問答
金がねえだとォ?バカなこというんじゃないよ!

バカなことじゃない、ほんとに(金は)ないんだよ。

冗談じゃないよ!

冗談じゃないよ。
大きな声ェ出して金ができるもんなら俺がとっくに大声出してるよ。
女郎のカスミさんが来ないので焦れている勝っつあんの座敷に闖入してからのやりとりはさらに抱腹もの。
ときに力があまってスベッてしまうこともある志ん輔の百面相と好い間のセリフが噛み合った。

一時間近くやって仲入り後の「高田馬場」もみっちりやったから正楽は10分で切り上げてもトリの扇遊が上がった時はすでに9時近かった。
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この日のことを志ん輔は自分のブログに時間を使ったことを反省しつつもこう書いている。
楽しい?いや、ちょっと違う。そう、きっとそれは芸人を意識できた喜びなのか。それとも意識が技術と一致したものか。
「人は人我は我」相対評価の愚かさはフリーランスな仕事の人間には当たり前なことだ。常に心がけなければならないのは自分に対する冷静な絶対評価だ。
こんなことを鼻息荒くも呟いてみた。
鼻息荒くなるだけの価値のある高座だったと思う。
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(はあちゃんと向かい合うようにして乗ったブランコから見た空)

扇遊は「厩火事」と「鼠穴」
「鼠穴」が志ん輔の熱演に引きずられるような好演だった。

それにしても佐平次という名前が身について志ん輔が口に出すたびに俺が呼ばれているのかと思ったぜ。
Commented by HOOP at 2010-11-23 12:54
敵わねえ

土曜日の晩、B787機体設計チームと三次会。
勘定を払ったところで、
「ありがとうございます!ゴチになります!」

あはは! やられちまいました。

後輩の笑顔には敵いません。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-23 13:08
HOOP さん、楽しいお強ですかねえ。
Commented by 創塁パパ at 2010-11-23 14:04 x
志ん輔の「居残り」聴いてみたいですね。力が有り余る
志ん輔が、程良くなっている感じが目に浮かびます。
彼の「ブログ」も楽しいですね。
Commented by HOOP at 2010-11-23 18:21
え、お経ですか?

お酒も、その瞬間も、どちらも楽しかったです(笑)
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-23 20:49
HOOP さん、おこわです。
おこわにかけられた?^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-23 20:50
創塁パパ さん、本当に楽しいブログ、教えてくれた幸兵衛さんに感謝です。
Commented by kaorise at 2010-11-24 00:00
神保町の落語カフェって古書センターのビルにあるカフェかなあ、、
そういえば神保町の古書まつり、、今年はもう終わったのかなあ?なんて今日考えていたところでした。
Commented by fukuyoka at 2010-11-24 00:03 x
ハーちゃんお誕生日おめでとう。背中にぐっと成長した男の子を感じます。ヨータは”大人になったので髭が生えたの”と云って鼻の下を見せてくれました。ホントこの頃の日々成長はメチャメチャ可愛いですね!
Commented by HOOP at 2010-11-24 00:52
ああ、すみませんでした。

おこわだとは今でも思っていません。
とても気持ちのよい笑顔を見せられてしまいました。

これがうちの高校(中学校)の伝統かもしれません。

もっとも、自殺して夏目漱石を鬱にしたような先輩もいますが。
Commented by c-khan7 at 2010-11-24 10:03
鼠穴、地味ながら力強い噺だと思います。
夢は五臟の疲れ、、なんて申しますが。。
私は良く、夢を見ます。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-24 10:10
kaorise さん、私も行ったことがないのですよ。
毎日のように落語をやっているんだそうです。
そこに集う人たちが実に全国あちこちから来ていてその言葉がいろいろなんだと志ん輔が言ってました。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-24 10:25
c-khan7 さん、今も今朝見たいた夢のことを書こうと思ったのに(この返信で)いざとなると忘れています。
ここまで出かかっているというか、まことに妙な気持ちですよ。
鼠穴と天狗裁き、夢の酒、落語を作った人たちも夢を見る人たちでしたね。
しかもリアルに覚えている^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-24 10:34
fukuyoka さん、ありがとう。
もう片付いたのでしょうか。
ヨータ君が手伝いに来て力が湧いたのではないですか。
可愛い笑顔の力で。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-24 10:36
HOOP さん、このサゲはちょっと変なんのです。
談志は変えてやっているそうです。
Commented by HOOP at 2010-11-24 17:55
なるほど、辞書にも「お恐にかける」で「だます」という意味が書いてありますが、実際に使うところは見たことがありません。始まりということになると、皆目分からないかもしれませんね。美人局がということであれば、瓦版などに犯行状況が詳しく書かれて流行語にでもなったのかもしれませんね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-24 23:36
HOOP さん、「おこわにかけられた!」「だから旦那の頭はゴマ塩だ」というのがサゲです^^。
Commented by HOOP at 2010-11-25 10:01
昨夜はその「ごましお」が欲しかった、、、
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-25 13:24
HOOP さん、白いご飯にゴマ塩だけで立派な晩飯になります^^。
Commented by HOOP at 2010-11-25 18:08
子どもの頃、お祭りのおにぎりがごま塩だったのです。
いつか食べるようになりたいと思っていたものですが、
とうとうその日はやって来ませんでした。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-25 22:46
HOOP さん、今じゃ駄目?
Commented by junko at 2010-11-25 23:16 x
CIao saheiziさん
うわ、おいしそうな生ガキ
今回食べそこなったものの一つでわたしゃくやしい,,,

はあちゃん可愛いねえ
そしてはあちゃんと一緒にブランコから見た空も美しい
saheiziさんの幸せが、たくさん伝わってきたよ
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-25 23:21
junko さん、イタリアには生ガキってないのかな。
昨日は牡蠣蕎麦を食べましたよ^^。
日本の空もいいものでしょう?
Commented by HOOP at 2010-11-25 23:38
もちろん、今でも美味いのですが、
子供神輿を担いだあとで
あの握り飯を食べたかったのです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-11-26 09:03
HOOP さん、わかるなあ。でも今も童心に帰って!
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by saheizi-inokori | 2010-11-23 12:02 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(24)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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