まねき猫の枕草子に乾杯! シャボン玉政権を落語で祝う

寄席に出る落語家の団体は二つあって喜多八は「落語協会」、もう一つが「落語芸術協会」、通称芸協、鯉昇はこっちだ。
寄席の番組(出演者)は毎月10日毎に変わるが、別の団体に所属する噺家が同じ席に出ることはない。
俺は意識してそうしているわけではないが落語協会の出る寄席に行くことが多い。
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(八雲・「わさ」、ぴーたん豆腐)

まず鯉橋が「肥甕」をやったがマクラで「今日は私と招き猫さんとお囃子まで芸協なんです。私は師匠の鯉昇と喜多八師匠が仲が良いのでこんなに立派な席に出られて嬉しい」と挨拶した。
「肥甕」というのは二人合わせて50銭、子供でも恥ずかしいくらいな金しかない凸凹が兄貴の新築祝いに何かをもって行こうってんで肥甕という“掘り出し物”を水甕として、水を張って担ぎこむクサイ噺だ。
喜んだ兄貴に一杯飲んでけと云われたはいいけれど、冷や奴が出て来て、うまいうまいと食ったとたんに相棒が「奴が浮いてる、その水は何の水でしょう?」早く言えってんだよ!あわてて「豆腐は断ってます」、菜っ葉のお浸しも水にさらすし、、焼きノリでオマンマなら水は使わないから頂きますと、はふはふ焚きたてのオマンマを食う。
えっつ?焚きたて?ってことは姉さん、このオマンマもさっきの甕の水を?
ばっちい噺だが受ける噺で俺も嫌いじゃない。
昨日の鯉橋はオマンマを食いながら「あれ、新聞紙がでてきた」とやった。
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(ホタテとウニ入り揚げ餃子、熱いのを一口で、バターがじゅっと)

ついで喜多八が「新聞紙!そこまでは出して欲しくない、私としては」と笑いながらコメントしたが同感だ。
もっともここまでの噺、ウオッシュレット世代の坊ちゃん嬢ちゃんにはワケワカかもしれん。
喜多八は先月の圓朝まつりの「キタナヅカ」の次第がYOUTUBEに出ている噺で笑わせて、今日は芸協から教わった噺といって「旅行日記」
病気で死んだ鶏やら豚を出されてそれとも知らずに旨いうまいと食うアホな男の噺。
なんどか聴いているが今回はついついそのまんま東の顔が浮かんできた。
図々しくもとぼけている田舎の旅館の親爺が可笑しくてたまらない。
終わってちょっと引っこんで直ぐ出てきて軽く廓の噺をしますと「ぞめき」
毎晩や、という綽名でよばれるほど毎晩吉原に冷やかしに行く若旦那、業を煮やした父親から二階に蟄居を命じられて、悶々と猫を相手に吉原を妄想する。
一人で女郎にもてるところから(一人でやってるから気が合うのは当たり前と自分に突っ込み入れたり)、喧嘩しておばさんが仲裁するところなど何役もやって「ああ、行きた~い」。
俺も行きたくなるじゃないか。
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(三元豚入りしゅうまい、野菜炒め)

休憩後、江戸家まねき猫
たっぷりと肥って丸顔、見るからに幸せを呼ぶ招き猫。
本人紹介、先代の猫八の娘、でも後妻の子なので今の猫八とは似てません、似てない兄妹の標本です。
やったのが「枕草子」の音入り、立体物語

 春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎは少し明りて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる。
と云って、春の眠たさで朝寝坊をして雌鶏に起こされた雄鶏が時をつくる様を音入りでやる。
鶏のぴょこぴくした動きやら羽をばさばさするところなど座ったまま丸顔も動員して実に楽しい。

 夏は、夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。
蛍は鳴かないので、清流の流れの音、おまけに、ぶ~ん、蚊の鳴く音。

 秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音(ね)など、はた言ふべきにあらず
ああ~ああ~!大きな素っ頓狂な烏の鳴き声、遠くに細くさびしげな雁の鳴く音、再び、ああ~ああ~、烏の鳴く音もよく聴くとさびしげだ。
そして一呼吸おいて、スイッチョスイッチョ、りりりりり~、ころころころ、ぎい~ぎ~、松虫、鈴虫、蟋蟀(コオロギ)、虫たちの競演。

冬は、つとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりて、わろし。
商売だから一生懸命でしたが、はじめは意味も分からない文章を覚えるのは大変でした、と云って音も色もない世界をどう表現するのかと思ったら
暖を求めて寄ってきた猫と犬の様。
人?のよいのんびりした犬とお澄ましやで気難しい猫が話し合うけれど決裂する。
大きくて真ん丸な優しい顔とふっくらとした上半身が猫になり犬になり。

初めて見た人だが魂消たね。
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(トリの唐揚げ)
最後に喜多八があがって、かつて志ん朝とまねき猫とで地方公演をしたときに彼女の舞台の袖で、(ここで「内緒ですよ、ここだけの噺」とささやいて)、志ん朝師匠が「兄貴とトレードしたいね」といいました、と。
兄貴の猫八は落語協会だ。
喜多八の三つ目の噺は「井戸の茶碗」
正直者の屑やと潔癖な二人の侍の噺。
大笑い、胸がすっとした。
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(ネギチャーハン)
帰り道、ふと菅政権って「上げ底政権・シャボン玉政権」だな、と思った。
メデイアによって作られた得体のしれない“民意”の風で辛うじて浮かんでいる政権、いつしぼんでしまうやら。
かぜかぜ吹くなシャボン玉とばそ。
壊れて消えて、、にならないようにね。

<銀座の噺小屋>喜多八膝栗毛 秋乃風
博品館劇場
Commented by takoome at 2010-09-15 10:55
サワディ~カ~
ほのぼの・・・・、いいなぁ、
Commented by saheizi-inokori at 2010-09-15 11:23
takoome さん、ほのぼのほのぼの、気持ちがあったかくなる。
Commented by antsuan at 2010-09-15 12:11
新聞紙、使ってましたねぇー。(苦笑)

シャボン玉というよりも、枯れ葉政権と云いたいですね。
Commented by kaorise at 2010-09-15 20:25
おいしいごはんがいっぱい!フルコースだ〜
みてるだけで満腹になりました。
saheiさんの日記はお料理写真が多いですよね。
今週いちばん美味しく感じた料理はコレ!っていう記事、
いつか書いてくださいな。
Commented by saheizi-inokori at 2010-09-15 23:03
antsuan 、枯葉よりは若い人たちじゃないですか。
ふわふわと浮いてる若者たちです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-09-15 23:05
kaorise さん、前はそういうのも書いていたのですが、だんだん挿絵にしています。
書きたいことが多いのですね。
Commented by c-khan7 at 2010-09-16 06:48
菅さん、あれほどサポーター票がとれるとは、、
びっくりでした。
Commented by saheizi-inokori at 2010-09-16 09:06
c-khan7 さん、実際の投票数はもう少し近かったようですが、それにしても、ですね。
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by saheizi-inokori | 2010-09-15 10:49 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori