後に尾を引く旨さの秘密 小説も料理も同じだ 吉村昭「桜田門外ノ変」
2010年 08月 27日
三年間解散をしないなんて武士が刀を棄てるようなことをいう総理とそれをもち上げるアホ面の連中などをみているとついつい一刻も早く井伊大老を倒すことが日本を救うことだと信じて自分の命を棄てて行ったサムライたちのことが思われる。
命までくれと言ってるんじゃない、も少しシャンとせんかい!
吉村作品に備わっている”力”は凄い。
マーケテイング志向で筆先ちょこちょこ書いたような今流行りの小説が逆立ちしても追いつかない力がある。
それは作家の研ぎ澄まされた洞察力とそれを表現する筆力の賜物だがもう一つ徹底した調査の裏付けがあることが他の作家にはない力を与えている。
関鉄之介が逃亡中、吹き出物や倦怠感などに悩まされるのを性病に冒されていたとする説もあった。
吉村は鉄之介の日記に記されている医者の療法、処方された薬を専門家に検討してもらって、蜜尿病(糖尿病)であることを突き止める。
鉄之介を主人公とした私は、安堵をおぼえた。作家が主人公に抱いた愛情、事実に対する畏敬、そして巧まざるユーモアが滲む、これは作家のあとがきだ。
鉄之介が最後に捕まるが「水戸藩史料」では関川村の高瀬温泉らしい記述があり高瀬温泉に碑まで建てられている。
しかし東大の史料編纂所に鉄之介の息子から出た史料があってそれには「湯澤と申し候処にて召捕ニ相成」とある。
吉村は現地に赴く。
雲母温泉と高瀬温泉は、川にかかった木橋を渡って右方向にあり、かなり賑やかな温泉地であるが、湯沢温泉は左方向のひなびた地で二軒の小さな宿屋しかない。鉄之介が捕えられたのは、渓流の上手にある田屋旅館であった。旅館は建て替えられていたが、当時の面影は十分で、潜伏するにふさわしい地だ、と思った。小説の最後、鉄之介逮捕の場面、切迫する危機・緊張感をひなびた温泉宿の湯の煙の中に臨場感たっぷりに描き出す、簡潔ながらあますところのない描写は見事だ。
そういう細部の事実を積み上げて作者の想像力でそうであっただろう情景を描き出す。
それは登場人物の内心に対する洞察力があって初めて人間のいる情景として成立する。
この小説を書くのに7.8年の調査をしたという。
そうして素材に潜んでいる魅力を十分に引き出してそれを殺さないように味付けをする。
料理に似ている。
店構え、器、制服、ネーミング、見栄えにこだわり、とっつきやすい味付け、化学調味料も遠慮なく使って素材のうまみを平気で殺す料理。
それでも販促がうまいとメデイアに乗ってもてはやされる。
ほんとにうまい料理ではないから直ぐに飽きられる。
俺の拙い経験でも、自分で食べてもいないのに取材するテレビが殆ど、訊くと他のメデイアで見たから来たという。
そういう業界がつまることろ自分で自分の首を絞めている。
出版界よ、本離れを嘆く前にもっとじっくり第二第三の吉村を探し育てるべきではないか。
ますます「読まねば!」。
第二第三の吉村。
うーん、文章もストーリー構成も上手なヒトはいますけど、生きた時代も含め
今の作家とは素養が違うので無理っぽいですよね(笑)。
出版社(編集者)もネットでできあいを探すのが主流で、育てるなんて到底(笑)。
だいたい優れた作家を育てる力のある編集者が今、いるのだろうか。
よほどの大家にならなければ、資料を集め調査に年月を費やす余裕がないだろうと思います。
便利で平和で、でもけっこうせちがらくて薄っぺらな時代なんだと思わずにはいられない。
昨日は私の過疎ブログにお越しいただき、そしてコメントまで残していただきまして感激です。
ありがとうございました。
そういえば、いつかchakaさんが描いた可愛いワンちゃんの飼い主さんがsaheiziさんとのことでちょこっとお邪魔させて頂きました。改めまして・・・何だか私は恥ずかしくなってきました。
あまりにも私が能天気なくだらないコトをやっている気分に・・トホ。
saheiziさんを見習いまして、氷の季節が過ぎた秋ごろより
少し知的活動な感じを目指したいと思います~。
私のゆるゆるの脳がかな~り刺激されました。
感謝。
だから忍耐強く世界を構築した人の、厚みのある表現、それを理解できる人は少ないです。
多分我慢ができないんですよね、、隠された部分を読み取るのには時間もかかるし、努力も必要、そんなの面倒だから、私のレベルにわかりやすくあわせてよ!ってなるんでしょう。
残念なことですが、、。
過疎ブログですか、涼しげで好いですね。氷も山盛りだし^^。
日本はさー―なんでも柳の下にドジョウが三匹も四匹も十匹もいると思ってるから、どんなことも面白くなくなる
リスクを冒してまで、自分の勘に欠ける、あの緊迫感がないんだよね
いい加減な、安全なとこばかり狙ってるから 澱む
確かに政治も一緒
日本の雑誌なんておかしくて読んでらんない
スーパーの安売りチラシを見てたほうが、私はまだうきうきする ははは
私は、喧嘩するにも、まあ命はかけないけど、それに近くつい必死になっちゃうけどね――
まあ、これも性分なんだね
安全パイを狙う人は、一生そうで
安全パイを忌み嫌う人は、一生そういう人生
...ところで このお寿司屋さんおいしいんですか?
内容を思い出すこともできなくなっています。
(旧制中学で同級だった方とは交際がありますが)
若い時に価値が分からないのは仕方がないとはいうものの、
もったいないことをしたものです。
「逃亡」はまだです。探してみます。ありがとう。
この店はマグロで有名です。
私にはちょっと財布が許さないのでランチの定食を頂きました。
旨かった。感じもいい店です。
夜のお任せが1万円くらいですから貯金して行けばとも思いました。
もっとも私はお任せはちょっとつらいのです。好きな安いものを食べたい。
あたかも生きている方のように私淑することができます。
それとも、『高熱隧道』『関東大震災』『羆嵐』など、後に尾を引く旨い作品を読み返そうかなぁ。他に一連の「海軍もの」もあるし・・・。
読み易くて、読んで損をしない定番のような作品を次々と。
清張に匹敵しそうな生産力ですね。
すし屋って難しいよね
あんまりすし屋に威張られても、おいしくいただけない
いるでしょ?
妙に威張ってるおやじ
学大にいたのよ
まだいると思うけど ははは
でもほんとはカウンターで旬のものを親爺に訊きながら食べるのが値打ちなんだけどなあ。
この店は有名店の割に親方も職人もいい感じでした。
単に薬を飲ませたというのときちんと薬の名を明らかにするのではリアリテイが違います。