思うとおりにはならないのが人生の妙 ピーター・キャメロン「最終目的地」
2010年 06月 09日
カンザスの大学院生のオマーは自殺した作家・ユルス・グントの伝記を書いて奨学金をもらい教授としての人生を送ろうと考えてグントの遺族に公認を貰おうとする。
グントはユダヤの迫害をのがれてウルグアイに移り住んだ男の長男。
ウルグアイの人里離れた田舎・オチョス・リオには妻と愛人とその子の三人が大きな屋敷に、その近くの製粉所を改築した家に弟・アダムとそのゲイのパートナーの青年・ピートが結界を形作るようにして暮らしている。
遺族の三人は伝記を書くことの承認を与えない。
オマーは地の果てにたどりつく思いでオチョス・リオを訪れて彼らを説得しようとする。
浮世離れしたオチョス・リオの浮世離れした彼らの日々は充足しているかのように見える。
でもじっと目を凝らし耳をすませば、、どんなに動かないように見える世界も、静かに静かにひびが生じつつあるのだ。
年老いた皮肉屋のアダムは若いピートのこれからの人生が心配だ。
でもピートに言われてしまう。
しあわせなんて問題じゃないってふりをするところ、、しあわせなんて、どういうわけか、あなたを超えたところに、あるいは、うしろにあるってふりをするところ。もうそれは通り過ぎてしまったというところが好きになれないと。
それは安易すぎるし、自分勝手だし、意地悪だ、と。
ぼくはどうなんですか。ぼくではしあわせになれないんですか、ときどきでも?ユルスの妻・キャロラインは絵描きだったが自分の天分に見切りをつけて模倣画を描く毎日。
美しい愛人・アーデンは幼い娘を育て家事と畑仕事、充たされた生活?
なんといっても若い、ほんとうの知性に恵まれ、世界の不思議に目を見張るようなみずみずしい心を持っている。
”だれも聞いていないのに実演してみせる客室乗務員がかわいそうだから”と(緊急時のことが心から心配でもあって)、いつも真剣に説明を聞くような男、無視している観客のことを俳優たちがどう思うかと心配になるから演劇を見るのが好きじゃないというような男、オマーは「すみません」が口癖だ。
そのオマーが遠慮がちに結界に登場したことが触媒になったかのように彼らの心を乱す。
美しい結界の湖底に静かに沈んだいたことどもが再び静かに浮き上がってくる。
ユルスの死について語り合わなかったこと、自分の本当の気持ちについて考えないままに過ぎてきたことが今頃重みをもって迫ってくる。
オマー自身にもその重みが反射する。
変わっていく、成長していく、目覚めるオマー、ハンサムなオマー。
最終目的地、終の住処、そう思い定めてそのように人生が終わることにはならない。
新しい望みが湧いてくる。
ちょっと手を伸ばすことで違う流れに乗ることもできるのだ。
会話中心で流れるような文章。
流れるユーモア、喜劇でもあるんだな。
一気読み、一日かからなかった。
読んでいる間じゅう温かな気持ちに浸っていた。
サンチをなでていたからかな。
岩本正恵 訳
新潮クレスト・ブックス
やはり男の子ですね。相変わらず可愛い!!!
サンチくんのように。素直に生きた方が楽ちんだ。
なんとなくわかりますこのギャップ。
何かでふさいでいたり痛がっているとちかずいて舐めるのです。
サンチ君も気持ちよさそう~気持ちは伝わって行きます。
なでなでもわかるみたいで、目を細くします。
ふさいでいると、こちらに来てピタッと身体を寄せて横にすわります。
日頃は「放っといて!」という調子の亀なのですが。
こっちがビックリしてしまって、悩みを忘れてしまう、、
おかしなものですね。