ためになるかも 吉原入門 圓歌「坊主の遊び」(国立名人会)

昭和33年3月31日、吉原の火は消えた。売春防止法の施行。
その翌日、真打になりました。落語家なんておもしろくもない、なんならこっちイ上がってみろっテンだ。
もうイヤんなっちゃった。
「乙な女だね」っていうと「甲な女ってどんなんですか」ってやがる。
言葉が通じなくなってるんだから。
今日は、そう云っちゃなんだけど今では私しかやらない噺をやります。
志ん生と円生がやってサゲが違う、志ん朝が親父のサゲでやってた。
つるつる頭の圓歌はそう切り出す。
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江戸時代は髪の形で身分が判った。
坊主頭は「隠居」「僧侶」「医者」、“遊び”には行けないタテマエだ(品川だけはOKだったけど)。
いつの世にもタテマエの裏はある。
坊主頭の旦那が床屋と吉原に行く。
見返りの松、大門、江戸町、京町、仲之町、江戸と京の間を行くから花魁道中ってんだ。
えっ、らっしゃいまし、お手軽様に、、いかがさまで、
妓夫が声をかける。
じゃ、やっかいになるか。
へえ、お二人様、お上がりだよ!
大きな声で叫ぶのは近所に自慢しようというわけじゃない。
「ご内所」にいる女将さんに知らせるのだ。

広い階段(はしご)、トントントン上がってくってと引き付けへ通される。
引き付けたって目え回すところじゃない、はじめて自分の買う敵娼(おんな)に会う部屋だ。
お茶とお菓子が出てくる。
こんなところで菓子を食う奴ァいないから安政の頃の菓子だ。
そこイおばさんてのが出てくる。
おばさんたって身寄り頼りじゃない、赤の他人なんですが、このおばさんを遣り手(やりて)てんで、やりててえから何かくれるのかと思うと、貰いたがってしょうがねえおばさんなんで、、直ぐにお床入りってのも面白くない?じゃあ、、注文を聞いて別の部屋に通される。
金屏風の前に座って、ここで初めて大きな杯で酒が注がれる。
芸者が3人、子どもが3人、花魁も来て、踊りを子どもに踊らせる、浅い川なら裾をあげればいいけれど深い川だと帯といて親にも見せなかったところを見せなきゃならないから、子どもは恥ずかしがって直ぐに降ろしちゃう、、。

まるで吉原案内、懇切丁寧です。

床屋は飲むと荒れる悪い酒、今日も荒れまくって「もう帰れ」「帰らなくてってよ」。
旦那は一人残って飲み直し、、夜も更けた「お引けにしようか」てんで別の部屋に、布団が敷いてある。
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「廻し」、一晩に複数の客を取る。
上方にはなかったそうだが江戸にはあった、需給関係による?
旦那の敵娼、いっかなきやしない。
深夜になってようやく来たかと思うと悪い客に無理強いされたかかなり酔っぱらっている。
もう、眠りたい、ワタシャ年寄りと坊さんが嫌いだからそばに寄らないで、、このスケベ、、
ひどいもんで一人で横になったかと思うとグア~グア~高いびき。

旦那、今日はなんだって酒癖の悪いのに出っくわす、ぼやきながら、懐に手をやると、昼間床屋がいいものをみつけたからと届けに来た剃刀がある。
花魁の寝顔を見ている内にいたずら心が湧いてきて、げじげじ眉毛を形よく整えてやろうなんてやってるうちにきれいにすっかり剃っちゃって、えらく長い顔ンなっちゃった、もみあげも一つ、頭も、、なんて呆れた旦那もあったもので花魁の頭をつるつるに剃りあげてしまった。
剃りあげてしまってから、さすがにこりゃやりすぎたって、花魁の寝ている内にそそくさと帰る。
キサラギさん、起きとくれ~お客さん帰っちゃったよ!
起こされて寝ぼけ眼で頭に手をやって
帰ったあ?あらいやだ、ほら、ここにまだちゃんといるよ
珍しい噺を、さすが大ベテラン、堪能させてくれた。
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他に左橋「長屋の花見」
喜多八「代書屋」
、いや笑った笑った!
喜多八、絶好調!
文楽「猫久」猫も出てこなきゃ、血相変えておっとり刀で飛び出していった久さんもそれっきり出てこないし、一体どうなったのかわからないという噺。
とぼけていていいね。
扇遊「人形買い」
うめ吉「俗曲」美貌と美声に場内陶然。

どれもこれも文句なし。
Commented by cocomerita at 2010-04-27 19:29
Ciao saheiziさん
うちのおじいちゃんは吉原かどうかわからないけど、芸者遊びに行ってお金がなくなるまで何日も居続け、おばあちゃんが足りないお金を持って迎えに行ったことが何べんもあるのだと母に聞いたことがあります。
だから私にとってこういう吉原の世界って、悲惨な女郎の方たちの苦しみというよりもこの落語の世界の匂いがあるんです。
Commented by sweetmitsuki at 2010-04-27 20:14
この間、取引先との二次会で、図々しくもキャバクラなる店に付いて行って来ました。
思ってたよりイカガワシイ場所でなくて、店の女の人とフツーにガールズトークして来たんですけど。
あそこって、店内でのHはNGで、客はいかにして女の子を店外へ連れ出すか、女の子は客をいかにしてじらすか、その辺の駆け引きが醍醐味だそうで、落語での吉原もそんな感じだったのだはないかと、勝手に想像してしまいました。
Commented by HOOP at 2010-04-27 21:46
まだいるよ(笑)
旦那もよほど床屋上手とみえますな。
でも、床屋じゃないんでしょ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-27 22:03
cocomerita さん、私の父は給料をもらうとその晩飲んでしまうので、母と二人で父の行きそうな店を回って歩いたことがあります。
私が10歳にもならない頃です。
わずかな給料なのにねえ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-27 22:05
sweetmitsuki さん、キャバクラも吉原も未体験ゾーンです。
若い頃キャバレーに行ったことがありますが、あそこはダンスをする至極健全な場所でした。
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-27 22:08
HOOP さん、ありえない噺ですよね。
「お客はまだここにいるけれど、私はどこに行ったんだろう」というシュールなサゲもあるらしいです。
「百人坊主」では熊さんが仲間から寝ている内につるつるにされてしまいあますね。
Commented by c-khan7 at 2010-04-28 03:08
寝ている人のまぶたに、目玉を書くとか。。
そんな悪さも、、、楽しいものです。
「私はどこに行ったのだろ」というサゲも面白いですね。
Commented by maru33340 at 2010-04-28 07:22
なんだかんだ言いながら圓歌はやはり客席を巻き込む力が凄いですね。聞く前は「圓歌かー」と思いながら、最後はいつも爆笑してます。
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-28 08:51
わっ!c-khan7さん、悪いんだあ!
きっと「犬の目」の犬、それとも「心眼」の梅喜になった夢を見るかも。
「私は、、」は「粗忽長屋」に 似てますね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-28 08:54
maru33340 さん、私は圓歌は正月などしか見る機会がないのです。そのときは天皇御前落語の話など漫談ばかりでしたので本格的な、しかも珍重すべきネタは初めてかもしれません。
よかったですよ。
丁寧に、しかも笑いの急所は外さず。
Commented by kaorise at 2010-04-28 14:32
むかしも今も水商売の裏側は大変だと思います。
女性が消耗する仕事であることには変わりないですね、、
わたしは水商売ではないけれど営業として変ちくりんな男達をあしらって仕事をしなければならない事が多かったから、、これが酒の席となると大変だな。と感じます。
だからこそ、こういう軽妙なお話が作られるのでしょうね。
Commented by 旭のキューです。 at 2010-04-29 14:20 x
面白い噺でした。自分の頭が坊主になるなんて・・・
Commented by saheizi-inokori at 2010-04-29 18:22
旭のキューです。さん、山のあなあなの歌奴です。
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by saheizi-inokori | 2010-04-27 11:40 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(13)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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