「プロジェクトX」の内側が明かされる 今井彰「ガラスの巨塔」
2010年 03月 26日
NHKの「プロジェクトX」という番組、2・3度観たことがある。
いい番組だと思った。
組織の中にあっても志をもって頑張った人たちはここに登場する人たちの姿に我が身を重ねたのではないか。
栄光をつかんだ人よりも失意の人の方が。
民放では作れない番組だ。
たとえばパナソニックがスポンサーでソニーの偉業を顕彰できるか。
それに製作費だって天下のNHKだから存分に使えたのだろう。
と、思ってこの“小説”を読んだら、どうもそうではなさそうだ。
NHK(小説では「全日本テレビ協会」になっている)内部では良い番組を作るよりも社内政治にたけた者が力をもち、この有名番組についてもNHKの管理部門は当初は人手を割かず、現場の人たちは不眠不休の苦労をしている。
驚異的なヒット番組になっても人員の増配置要求はすげなく一蹴される。
なんしろ1万人を超す社員のうち記者やディレクターなどの現場は3000人、事務管理部門が7000人を超えるという。
自由な表現活動を保障された放送会社というより、統制が張り巡らされた官僚機構だと著者は書く。
著者はNHKでしがないローカル局廻りの末に東京本部でも「ディレクターの墓場」と呼ばれる三流部署につく。
失意の日々にあった著者(小説では西)は湾岸戦争のときにイラクで捕虜になった米軍パイロット、その家族、イラクで彼らを捕虜にしたベドウィンなどに対するインタビューした「タイス少佐の証言~湾岸戦争45日間の記録~」で文化庁芸術作品賞を受賞後、さまざまな賞を取る番組を作り続け、2000年に「プロジェクトX」を立ち上げる。
そして番組がNHKの看板番組になり著者は各方面から講演依頼が相次ぐ。
当時の海老沢会長に認められ役員一歩手前の身分に引き上げられる。
栄光の日々も長くは続かない。
NHK内部の一連のスキャンダルに端を発した聴取料不払いのうねりなどがエビジョンイルとも言われた会長のワンマン経営を糾弾し海老沢は退陣に追い込まれる。
時こそ至れり!海老沢に冷や飯を食わされていた幹部たちが返り咲き引き上げられる。
著者に対する嫉妬に身を焦がしていた連中が陰湿にたくらみを凝らし著者を追い詰める。
泣きっ面に蜂、番組でもやらせ疑惑が発生しNHK憎しの朝日新聞(小説では朝毎新聞)を先頭とするマスメデイアの好餌となる。
著者自身も”豪邸”新築資金をめぐっての悪質な中傷報道に加え万引き疑惑も持ちあがる。
刀折れ矢尽き、番組は終了し、著者はNHKを辞める。
「この小説を書くために、NHKを辞めました」どこまでが真実でどこからかがフイクションか。
著者のNHK官僚たちに対する憎しみ・復讐の思い・自己弁護が筆遣いの公正さを欠いた面が皆無とはいえないかもしれない。
だが俺は相当部分が事実であっただろうと思う。
黒原なる腹黒・おべっか使いの上司が、そのものずばりでいるわけではなかろうが、多くの官僚幹部をろくろに入れてかき回し、そのエッセンスを一人の人間に作り直してみたら黒原、船古、日川、、小説に登場する魑魅魍魎ともいうべき幹部たちは“実在”するだろう。
質の高い番組をつくることに何らの価値を見出さない。それよりも日々の自己保身に最大の価値を置く。
NHKに限らず現代日本の大企業、官庁、政治家集団などには珍しくない官僚的幹部像ではないか。
それにしても「プロジェクトX」などの番組作成の内側の描写は面白い。
「プロジェクトX」を制作するチームが「プロジェクトx」だ。
俺はずいぶん前に今井と寿司やのカウンターで隣り合ったような気がする。
寿司屋の近くのホテルに缶詰になってイスラエルのドキュメンタリー番組を作っているんだと、なん日も食事らしい食事をとってないとやつれた顔をして言った。
寿司屋の親方の紹介で少し話をしたのだ。
イスラエルの学生に懲役忌避の動きがあることを知らせるんだ、NHKでもそういう番組を作れるんですよ、と笑った顔は生き生きとしていた。
鬼プロデューサーという感じはしなかった。
もしかしたら記憶違いかもしれないが。
幻冬舎、突っ走るね、この本屋。
官僚役員にはできないことをやった面もあるのでしょう。
後番組の茂木健一郎氏の司会のプロフェッショナル仕事の流儀もまた面白いのですが、こちらは司会者ブログもあるなどするので、後ろで策略をめぐらす?ことはできにくいのでは?
アマゾンでも買えないのですか。
プロデューサーがどういう人かは知りませんが。
この本は読んでませんが、そうですね~たぶん真実が書かれているのだとわたしも思います・・・・。
どこの会社も大きくなればなるほど、その技量や人柄ではなく、立ち回りのうまい、むしろ政治家色の強い人が上がっていく。
私のいた某航空会社もまさにそうでしたよ
そういう会社は最終的にその質がおちていくのは、むしろ必然
あの派閥って奴もいつも馬鹿馬鹿しいなあ~と思ってました。
いかにも男性が考えそうなことです。
(ごめんね、男性蔑視ではないんだけど、テイピカル男の行動ってのがいくつかあって、戦争もその一つ、派閥もそうだと思っているのです。)
ああ、お刺身にソラマメか
お邪魔して一杯やりたいなあ
「あいつだけは許せない」という言葉が定番で、誰もが使うんですって。
私もたまに大会社の男性とお仕事することがあるのだけど、ギラギラ油っぽくて害虫みたいだと、フマキラーかけて逃げたりします。
草食系といわれる若者にも秘めたる嫉妬心はあるのでしょうね^^。
菜の花のからし和え、ふきの焚いたんと^^。
その下にディレクターが何人かいるのですね。
私があったのもそちらかもしれません。
「仕事の流儀」は小三治をやった時にひどい出来だったのを覚えています。