オバマを動かせ 堤未果「ルポ 貧困大国アメリカⅡ」
2010年 02月 27日
かつてクリントン大統領がヒラリーを旗降りにして導入しようとしたけれど医療保険会社や製薬会社の横やりでつぶされた。
オバマが当選したのは彼の「国民の声を聴く」という公約に期待した人が多かったからだ。
改革にあたっては日本やカナダ、イギリスでも採用されている「単一支払い皆保険制度」の導入を望む全米看護師組合や医療従事者が多い。
現在、アメリカでは民間の保険会社が患者と医師の間に入ってあたかも病院の株主であるかのように経営方針のみならず治療方針にまで口をだす。
保険料は収入の多い人ほど安くなるという逆累進性だ。
医療現場を荒廃させ、医療難民や破産者を生み続ける利益と効率を最優先する市場原理主義がアメリカの医療を支配している。
それに対して保険会社を通さずに直接国や公的機関に保険料を支払い少ない自己負担で診療を受けられるようにするのが「単一支払い皆保険制度」の狙いだ。
ところがオバマが「国民の声を聴く」ために開かれた識者や関係者の「医療改革サミット」には「単一支払い皆保険制度」の推進者はよばれていなかった(その後、推進派の抗議で一人選ばれたが)。
その事件はメデイアでは報道されず、そもそも選択肢としての「単一支払い皆保険制度」の存在自体ほとんど報道されていない。
冒頭に書いた難航している改革案も「単一支払い皆保険制度」は含まれていない。
それは医療保険会社が巨額の政治献金をオバマに拠出していることもあって彼らの圧力には抗しきれないのだという。
医療の荒廃は保険会社と製薬会社の資本の論理から医師を解放する必要があるのだけど。
本書はオバマ登場後、アメリカ社会の貧困化は加速しているという。
大学は出たけれど職が見つからず学資ローンの支払いに追われて、なんのために進学したのか分からない若者たち。
ここも民間の融資会社がやりたい放題、ちょっとでも支払いが滞ると雪だるま式に借金が増えて行く。学資ローンは消費者保護の対象にもならない。
GMに端的に見られるように老後の生活設計が壊れた老人たち。
刑務所の囚人たちをアウトソーシングの発注先にする企業。
発展途上国よりも安い労賃で英語も話せる上にストもやらず必死に働く囚人たち。
刑務所内ではもっとも恵まれた労働なので外されたくない。
部屋代、食費、医療費、トイレットペーパー代まで囚人からとりたてる。
刑務所にいる間に借金が増えて出所しても返せない。
働く場所がない。
刑務所に逆戻り、スリーストライク法、三度有罪判決を受けると自動的に終身刑になるのだ。
民営化された旧国営事業のうち、いまもっともトレンデイな投資先ー順調に増加する有罪判決と逮捕率が確実な利益をもたらしてくれます。急成長するこのマーケットに今すぐ投資を!SF小説ではない。
現実にある大手投資会社のパンフレットだ。
オバマを当選させただけで世の中は変わらない。
オバマを動かせ党派に寄り掛かって見守っていてはいけない。
政治資金の出どころに目を向けよ。
子どもたちのために、病める者たちのために、命の危機にさらされる者たちのために、若者たちのために、、、志を同じくする者たちが声をあげて行くこと
オバマを動かせラルフ・ネーダーが筆者に言った言葉
国は一、二度の政権交代では変わらない。国民の判断で、その洗礼を繰り返し受けることで初めて、政治も社会も成熟してゆくのです。本当の絶望は、国民が声をあげなくなった時にやってくる。なんだか日本の話になってきた。
私は今、マイケルムーアの本を読んでいます。
全く同じことが書いてある。
所詮、大企業、ロビーつながりの買われた,飼われた政治家には究極の改革などできないのでしょうね。
ケネデイが、あれだけ好き放題にできたのは、自分の家の財産で政治資金を賄っていたから、企業に対する引け目が少なかったからだと、
確かにどうしようもない政治家見てると、もう声を発するのも嫌になるけどね、
それでも発しつづけることが、今この時代を生きている私たちに与えられた義務、未来の子供たちへの遺産のような気がします。
その声が、根っことなって成長しつづけるものがあることを祈りながら、、苦笑
その市場原理主義を導入した国がある。
張本人はまだ自信満々のようだけど、道半ばで政権交代したし、医師たちの育ちが違ったりして.....
この「堤レポート」、アメリカではあまり知られていないってほんとうですか。日本でもこれから「焚書」かもしれませんが?
読んでいて目の前に保険会社の社長がいたら殴ってしまうかもと思いました。
何百億ものボーナスをもらってまだ貪欲に!