土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」

小林先生の本を初めて読んだけれどロマンチストだなあ。
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_15505997.jpg

この本で知った縄文人のこといろいろ。

1.世界の土器つくりレースの一番手だった。
2.使い勝手の面から見たら”容器放れ”ともいうべき縄文土器は装飾性とは無関係に縄文人の世界観を反映している。
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_16124866.jpg

3.土器を煮炊きに使うことにより、大陸における農業を基盤とする新石器社会の連中に勝るとも劣らない食料事情をもたらした。
4.縄文人はそれまでの遊動生活をやめて定住生活に移行することを決意した。
5.その結果一日のうち精神生活に振り向ける時間が大幅に増した。
6.縄文人は定住空間であるムラの周りに食料と資材補給のためにハラを必要としたが、彼らのハラ開発は生態学的な調和を崩すことなく、あくまで共存共栄の趣旨に沿うようなもおであった。
この点がヨーロッパの農地拡大・自然征服という姿勢とは違っている。
(1万5千年前に始まり、1万年以上を超える縄文の歴史を通じて培われた日本人の自然観は健在なのか)
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_168635.jpg

7.縄文人のイエ・竪穴住居空間は炉と祭壇を備えた聖性空間でもあった。
炉には火を焚いていたがそこで煮炊きはしなかった。
8・炉を囲んで座る習慣が会話・団欒を生み、共同幻想としての物語・神話を形成していった。
9.縄文人はイヌに対して殆ど人間と対等の情愛を注いでいた。骨折して歩行もままならぬイヌを飼育し死ぬと墓穴を掘り埋葬していた(弥生人にはその習慣はない)。
現代人がペットとして可愛がるのとは違って互いに生死を共にする狩猟のパートナーとしての深い絆である。
10.縄文人は自分のハラからは確保できない資源を離れた集団から交易に寄り手に入れていた。
その結果日本列島全域に縄文世界観が張りめぐらされていった。
11・磨製石斧や黒曜石などは特産地において交易を前提に大量に採集され加工されていた。
ヒスイは糸魚川の山中一か所だけに産出されて硬い石に穴をあける技術は画期的なものだった。
12.縄文人の交易は見返りに何かを得るのではなく、
モノを与えて心を掴むこと
気っぷの良さを一方的に押し付けるものだった。
13.そして腹の足しにならないヒスイに価値を認めさせ有難く貰うようにするためにはコトバが駆使されたであろう。縄文日本語はヒスイの価値というような観念的な価値を語ることが出来た。
14.三内丸山にあったような巨大な建造物は実用的価値ではなく記念物であった。
15.それらは500年から1500年、50世代を通じて工事が続けられた。
記念物の本領は未完成にこそある。いや、未完成ということすら埒外に置いて、ただひたすら造営を継続する行為が重要だった。未完成のいちいちは、それぞれが完成した未完成なのである。
16.縄文人は、山を仰ぎ山に登る。
山の霊力と交感したのだ。
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_1694779.jpg

17.狩猟漁労採集を基盤とする世界各地の文化では縄文文化に比肩しうるのはバンクーバーのトーテムポールを立てた人々の文化のみである。
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_1557326.jpg
(おまえは狩猟なんかできないなあ)

それにしてもオリンピックの選手の地元や会社で一か所に集まって折りたたみ椅子に整然と座って声援を送っている。
リーダーに合わせて拍手なんかしちゃって。
これって日本独特の文化じゃないかなあ。
だとすれば淵源は縄文時代なのか。
土偶展、終わっちゃうぞ 小林静雄「縄文の思考」_e0016828_14443557.jpg
(国宝・土偶展、21日まで、行くなら9時半開館に合わせて。11時半に出てきたら20分待ちの行列でした)
Tracked from ローカルニュースの旅 at 2010-09-27 23:08
タイトル : 貴重な縄文土偶280点展示
白河市の県文化財センター白河館「まほろん」で25日から、県内外の土偶を紹介する展示会「ふくしま里帰り展・ふくしまの土偶」が開かれている。時間は午前9時30分から午後5時まで。休館日は10月11日を除く毎週月曜日と祝日の翌日。11月28日まで。... more
Commented by HOOP at 2010-02-20 14:57
イヌとは現世に生きる神で人と犬の両者、
オオカミは大神で神聖なる者、
もう20年以上も、そんなことを考えています。

バンクーバー五輪のシンボルはネイティブたちが道標にしたもの。
滅びた先住民INUKに対する畏敬の象徴ではないかと言う人も、、、
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-20 15:13
HOOP さん、縄文とオリンピックの地がつながっているようですね^^。
Commented by junko at 2010-02-20 15:46 x
うわあ、土偶展面白そ、、行きたいわあ、、
大地から生まれる土と密接に暮らす。というところから、彼らの宇宙観みたいなものを感じます。

エジプトの人は猫をあがめた。っていうんだけど
犬は縄文人にとって狼(大神)なんですね
その違いって何なんだろう、、とふと考えた
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-20 18:11
junko さん、この本ではイヌは縄文人のパートナーだと書いてあります。
猫はいたのかなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-20 18:15
junko さん、今調べたらいたようです。
猫の骨が遺跡からみつかっている。
どういう役割・存在だったかもう少し調べましょう。
Commented by きとら at 2010-02-20 23:32 x
>未完成のいちいちは、それぞれが完成した未完成なのである。  
 まるで小林秀雄門下のようなレトリックで考古学者らしくありませんね。勇み足的発言も沢山あるのでは?
Commented by sweetmitsuki at 2010-02-21 05:49
縄文人は集落の周りにドングリなどの木の実を植え、それが大きく育つと大切な糧になっただけでなく、猪などの獲物を誘き寄せる餌にもなったそうで、ありのままの自然以上に自然の恵みをもたらす森を作っていたのだとか。
縄文人は山に登る時、女性がそばに居ないと寂しいので、土で出来た女性を持ち歩いたのが土偶の始まりだとか。
縄文人が何を考えていたのか、遺跡から色々な事が想像されますね。
Commented by 74mimii at 2010-02-21 06:17
自分がますます小さく見えてきます。
Commented by c-khan7 at 2010-02-21 08:05
縄文人はファーストネイションなんでしょうか??
弥生人は朝鮮半島からの渡来人だとか、、、
確かに、縄文人の精神性はネイティブアメリカンに通じるものがありますね。やっぱり、自然神信仰。。
Commented at 2010-02-21 08:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 08:35
きとら さん、考古学者らしい発言というのが浅学の私にはよくわからないのですが、50世代もの間モニュメント?を作り続けることの意味としては面白い解釈だと思いました。
同学の人に対する厳しい批判もところどころにありましたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 08:38
sweetmitsuki さん、1万年もの間日本列島に暮らしてつい最近までその辺を歩いていた縄文人が急に親しい存在に覚えました。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 08:44
74mimii さん、↑にも書いたように1万年の縄文時代、それに先立つ旧石器時代、さらにそれ以前の人類以前の時代、、考えると人生は一瞬ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 09:06
74mimii さん、日本人の起源、いまだに定説はないみたいですね。
昨日だったかのテレビでは石垣島の遺跡を分析してオーストラリアからやってきた人たちとの連続性があるという講演のことが報じられていました。
日本という概念自体が700年くらいに初めて出来上がったのですから、ハイブリッドであることは間違いないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 09:08
鍵コメさん、ありがとう!
でも誕生日は明日です。22222、2が五つ並ぶんですよ^^。
Commented by convenientF at 2010-02-21 09:49
>たしか、小学校6年生の時の私のクラスでは、四人に一人が今日誕生日を迎えました。

昭和11年11月11日生まれです。

(http://fictions.exblog.jp/9635455/)
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 10:24
convenientF さん、なんでも一番!4人に一人が一番!
二番がいいですよ、何事も^^。
Commented by HOOP at 2010-02-21 12:12
栃木県立博物館の企画展も、今、「縄文の祈り」をやっています。
小さい土偶の破片がたくさんありました。
Commented by mmiizzz at 2010-02-21 13:09
私は夕方行ったら40分待ちでした。。。
ホームページに3時半までは混みますって書いてあったのに。
終了間近で暖かくなりましたからねえ。
でも、待っても混んでも見て良かったです!
Commented by kaorise at 2010-02-21 14:10
北九州が稲作のはじまりの土地とかどこかで読んだ気がするけど、あれ本当かしら、、
でも犬と山と稲作と女って九州っぽいなあって思いました。
うちの両親は犬と一緒に山にいっちゃあ、木の実とか、野いちごとか
とってきて喜んで食べてました。
食器にも奇妙なこだわりがあって、貧乏なわりには、いろんな焼き物を持ってるの、、
父は若い時は山登りも好きでいつも犬と一緒。
寂しがりやなんで、犬か子供かお母ちゃんがいないとだめなの。
犬は愛玩犬ではなくて番犬兼家族みたいな感じでした。
もしかして、、原始的な家族だったのかな、、、
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 14:46
HOOP さん、栃木、前はホイホイと行けたのに今はちょっと遠く感じるのです。情けないなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 14:48
mmiizzz さん、40分!
私は早かったから待たずに入れました。
じっと動かない人がいるとイライラしましたが自分の番になると動きたくなくなったりして^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-21 14:50
kaorise さんは間違いなく縄文直系!
あの芸術センスもそのまんま。
Commented at 2010-02-21 16:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 74mimii at 2010-02-22 07:35
日本人は「ハイブリッド」なのですねぇ~
勉強不足のわたしです・・・
Commented by saheizi-inokori at 2010-02-22 10:01
74mimii さん、わたしもその都度ググったりして調べています。ブログのお陰で勉強しています。
鳥と花の名前はいつまでたっても覚えられないけれど^^。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2010-02-20 14:47 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(26)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori