楽しめた 初めての小朝独演会
2010年 02月 19日
この人の独演会は初めてだ。
平均年齢と女性の比率がとても高い。
田舎の老人クラブの慰安会みたい(そんなのあるのか知らんが)。
開口一番は可愛いギャル、ぽっぽちゃん、“小朝の三番弟子”ですって。
「初天神」、普通の噺家がやる金坊は小憎らしいのだが、ぽっぽちゃんがやるとほんとにカワユクてねだられなくてもどんどん飴玉でも団子でも買ってやりたくなっちゃう。
それは良いけれどおとっつあんまでカワユクなるのはどうしたものか。
いや、なかなか上手なんだけど。
会場はすでに盛り上がってる。
小朝が出て、海老蔵ネタなどで笑わせて「夢八」。
「仕事をする気はあるんだけど、なぜか直ぐに眠くなって夢を見てしまう」からぶらぶらしている八つあんがアルバイトに「ツリの番」を頼まれた。
ツリはツリでも首っ吊り、検死が済むまで吊るしたまま夜明かしの番をするっての、人が悪いからちゃんと教えない。
うす暗い部屋で眠くならないように棒で床を叩きながら差し入れの弁当を食う。
「そちらにいらっしゃるのはどなたで?ずいぶん背が高い方だ」、だんだん目の前の物体の正体に気づいていくところ、握り飯の食い方、茣蓙が落ちて首っ吊りが現れたところを手ぬぐいで自分の首を絞めてやって見せるところ、化け猫が首っ吊りに口をきかせて八つあんに「高い山から谷底みれば」と歌わせ「ぎっちょんちょん」と合いの手をいれるところ、、、さすがにうまいものだ。
ヘタにやると気味の悪い噺なのに爆笑だ。
そのまま高座で結婚披露宴のあり方についてお勧め来賓スピーチの事例などをやってみせると拍手が湧く。
やっぱり慰安会ムードだ。
ついで「天狗裁き」。
うたた寝をしながら笑ったり怒ったりしている亭主を起こして何の夢を見ていたか?と訊くと、夢なんか見ちゃいねえ、こんなに貧乏所帯を支えてるのもおマイサンのためなのに水臭い、ってんで喧嘩になる。
隣の男が仲裁に入っておさめたのは良いが、亭主と二人になると、俺にだけは夢の中身を教えろ、それで喧嘩になると、今度は大家がおさめるが、大家も俺にだけは教えろ、誰に訊かれても見てない夢のことはしゃべれねえっ!そんな奴は置いとけない。長屋を出ていけ!そんな馬鹿な話があるものかってんでお奉行様に。
お奉行は訴状を読んで呆れて大家を叱り飛ばす。
そのあと、ところでその夢の話、わしにだけは話してみよ、話せないものは話せない、怒ったお奉行は男を縛り上げて松の木につるす。
それを救ったのが鞍馬山の天狗
女房が聞きたがり、隣家の男が聞きたがり、大家が聞きたがり、奉行が聞きたがったという夢の話、バカらしい、この天狗はそんあものを聞きたいとも思わぬぞ。しゃべらない男に怒った天狗は鋭い爪で
思わぬが、もしソチがしゃべりたいと申すなら聞いてやらんでもない。
どうだ?わしが聞いても良いと言っておるのだぞ
イテテ!男が悲鳴をあげると
おマイサンおマイサン、どうしたんだい、どんな夢を見たんだい?カミサンが覗き込んでいた。
こういうのってあるよなあ。
自分にだけは、ってのが聞きいられないと全人格的に裏切られたような気がして我慢できなくなる。
この噺もヘタがやると繰り返しがウザくてつまらなくなる。
女房、隣の友人、大家、、役者が変わるたびにギャグを用意してキャラクターもはっきりと替えて噺を盛り上げていく。
仲入りの後は「文七元結」。
この前「泣ける落語」について書いた。
この噺もそうだった。
あのお久が吉原の女郎屋・佐野鎚に自ら身を売りに行くところではなくて、文七が掏られたと思った50両が出てきて、べっ甲やの主と文七がだるま長屋に行ったところ、娘の無事が分かって屏風の陰に隠れていた女房がお尻丸出しで飛び出してくる、その大笑いの大団円で、泣けた。
田舎の老人クラブの慰安会らしく芝居のような落語だった。
でも堪能した3時間だった。
日本は寒いでしょう^^。
人に言えない夢、最近、見ました。
背中たち割られて鉛ぶちこまれたって脇行ってしゃべらないから^^。