短編好き、この指とまれ ローレンス・ブロック「やさしい小さな手」
2010年 02月 15日
短編集「おかしなことを聞くね」も読んだような気がする。
酔いどれ探偵マッド・スカダーが禁酒の誓いを護り続けるための苦闘。
理屈抜きにストレートを流し込みたい場面でジュースを飲んで、そのことでかえって酒のうまさ・魔力をひりひりと感じさせたものだ。
ニューヨークの下町でセロニアス・モンクを曲名など意識せずに聴いて夜明けを迎える。
隣にいるのは”身も心も”のエレイン、高級コールガールの頃から付き合って今は結婚している、ゴージャスな女だ。
人生に起きることならなんでも話していい。
あなたの話はいつでも聞きたいって、簡潔な言葉を聴くだけでその話の核心を理解してくれる。
しゃべっている俺の心中の核心を。
この短編集の最後の「夜と音楽と」。
ブロックの世界を象徴する夜の描写だ。
多彩な物語で興奮した頭を沈めてくれる。
冒頭の「ほぼパーフェクト」、立ち上がり危ぶまれたピッチャーがいつの間にか築くゼロの山、親友のキャッチャーが語る試合の進行は今まで読んだ野球小説のどれよりワクワクする。
完全試合が出来そうなときの迷信・マナー、味方はもとより敵方もそのことに触れてはいけない。
それを犯したのは誰か?
そ奴はどうなったか?
最初から”パーフェクト”に捉まった俺。
14の短編の中から表題に選ばれた「やさしい小さな手」。
表紙の写真の少女の「小さな手」のことだろうか?
もちろん違う。
さて、その「やさしい小さな手」は何をするのか?
当たったらエライ。
中には小説を読んだ後も何のことかわからないって人もいるかも。
いや、わかっても分からないふりをする“セレブ“もいらっしゃるかも。
「情欲について話せば」。
司祭、警察官、軍人、医者が順番に語り合う自分が見聞きした“情欲”の実例。
ポルノ?
そうかもしれない。
だとすれば俺はポルノが好きだってこと(わかってる、って?)。
やられた!最後の数行で感じる逆転。
短編の醍醐味。
省略された説明の中で焦点を当てられる細部の描写の妙。
ウン、それが人ってもの、人生ってものか。
あり得ない展開なのにそう感じてしまう。
落語の世界に通じる(なんでも落語、バカみたいだな)。
俺はこういう短編が好きな人が好きだ。
現代短編の名手たち ⑦
訳・田口俊樹・他
ハヤカワ文庫
まあ、そっち方面ですがもっとすごいんですよ。
節制ということが出来なくなってます。ブレーキ故障。
もてもての隠居なんて、落語には登場しませんよ!
佐平次さんの場合は自由気ままな第2の人生を、「隠居」という隠れ蓑を着て愉しんでいるとしか・・・。
でもそれは、長い間のお勤めの代償、人生のご褒美ですものね!
それにしても、毎回紹介してくださるこのたくさんの本達、全部買ってらっしゃるのですか?!(@_@;)
本は買ったものです。
読み終わって社員に寄贈するときのコメントが「ホンの戯言」というメールでした。
今は貰ってくれる人を探しています。
いつも佐平次さんの本の紹介を読んで、読みたいな~と思うけど、とてもとても佐平次さんのペースでは私には買えませんもの・・・。
私が読んだ後は、車椅子の友達がたくさん居る障がい者施設に寄贈しますから・・・。
お礼は竹ちくわくらいしか送れませんけど・・・(^_^;)/~